「スキル獲得の脳科学的アプローチ」⑧言語化の実例もしくはシロブタのリベンジ
はじめに
さてここまででスキル獲得に言語化が重要でその言語化の方法について書きました。
今回はついにスキル習得と定着について書きます。
ただ今回は僕の実話としてですが・・・
このnoteの最後にこれまでの記事のリンクを貼っておきますので、まだお読みでない方はそこからぜひ読んでいただくと、全てがつながりわかりやすくなると思いますのでよろしくお願いいたします!
それでは今日の本題です。
スキルの獲得=技を身につける
私は50年前10歳の時に空手を始めました。
当時の武道の世界は「スポーツ科学」などとは対極にあるかなり古い世界。
ただ「柔よく剛を制す」と言い、今よりも「フィジカルを鍛える」よりも「技で勝つこと」が重要視されていました。
ただそんな世界に運動音痴の肥満児「シロブタ」君が紛れ込んだしまったのだから大変!
「技」なんて全然習得できない。
そこで僕が取った方法は?
1000回蹴れ!!
とにかく当時は
「100回蹴れ」
「100回蹴るやつより強くなりたいなら200回蹴れ」
という世界。
僕もそうしていましたが、やはり人より反復すると多少上手くなる。
でも周りには同じように反復しても進歩しない人がいることに気づいたのです。
その違いは何か??
反復が無駄になる人、ならない人
そこで僕は同じくらいに空手を始めた「反復しても上手くならない子」がどんな風に反復しているのか観察したり、何気なく聞いてみたりしました。
その時に帰ってきた答えで疑問が解決しました。
「ああ、疲れたぁ!早く終われ!とそれしか考えてない」
そうかぁ!なるほどなぁ!
その子にとって100回は単なる反復回数だったんです。
そうだとしたらそれを200回にしようが1000回にしようが上手くなるはずがない。
いや、きっと逆に下手になる。
下手になりながら嫌になる。
嫌になるから続かない。
続かなければ永遠にスキルの獲得はできない。
その予想通り、シロブタが順調に白帯から緑、茶と帯に色がつく頃にはもうとっくにやめていました。
僕の練習方法
とにかく当時からしつこい性格で、その上考えながら何かをするのが好きだった僕。
100回蹴れと言われたら道場で100回蹴るだけでなく家でも100回蹴っていました。
とにかく家では道場より時間をかける。
大きな姿見を廊下の端に置き、その鏡を見ながら動きの修正をし、注意点ややりたいけれど今はできていない動きをノートに書き出して、そのポイントを一つ一つクリアしながら反復します。
もちろん不器用なシロブタなので家での100回ですぐできるようにならない。
だから「爪先立ちで蹴る」と決めたら、とにかく「爪先立ち」に集中!
まず壁に手をついてバレリーナのように爪先立ちを繰り返し、爪先でも拇指球のみに乗った方が安定する感覚を掴む。
そうしたら拇指球に乗ることだけを反復。
これを何日か繰り返すと最初は皮がむけて痛かった拇指球全体がタコのように熱く硬くなりさらに爪先立ちがしやすくなり、その足で蹴るので蹴りも上手くなり・・・
こんな風に「道場では教えてくれない細かいポイントを実際に動きながら言語化し、不器用なのでスキルをできる範囲のみに限定してその部分だけ取り出して反復し、そこからできるスキルを少しずつ足して確実に身につける。
この作業を繰り返したのです。
この時、小学校5年ですからね。
でもそれまでシロブタと呼ばれ、運動音痴で外遊びもせず、だから友達もまともにいなくて、引きこもって本ばかり読んでいるオタク体質がこの時最大限に生かされたのです。
とにかく時間をかけ、考えて分析し、言語化してその言語の中にある理想型に近づける。
失敗した時は自分にダメ出しをして、何が失敗したかを考え、いろいろやるとわからなくなるのでスキルを限定する。
もうお分かりだと思います。
これこそがまさに「スキル獲得」の初期段階。
1.やるべきスキルそのものを分析し言語化する
2.習得すべきスキルを重要度や習得の簡単さから優先順位を決める
3.練習には反復が大切。だが数だけこなしてクオリティを考えないなら時間の無駄
とにかく反復しながら「これでいいのか?」と考え微調整をする
4.反復する際は言語化したスキルのチェック項目を潰していくように小さいゴールを設け、それを乗り越えて達成感を得る
5.ある程度習得したら今度は何も考えずに理想の動きができるようにさらに反復
周りの子供でここまでやっている子はいなかったので、どんどんスキルを身につけます。
そしてそれと共にトレーニングと食事を変えて肉体改造にも取り組みました。
毎日少しずつランニングや腹筋・腕立て!
とにかくデブなので痩せなきゃとキャベツばかり食べていた時期もありました。
さらに格闘技の研究も。
当時テレビで流行っていた「キックボクシング」は毎週欠かさず見て、空手にないローキックやパンチの連打、タイ人の首相撲からのヒザ蹴りなどを見よう見まねで練習。
その他ボクシングや柔道などもテレビに齧り付いて技の研究をしていました。
そしてその技を道場で他の「習い事」で来ている子供たちに試すのだから最悪です。
とにかく道着を掴んでヒザ蹴り連打はするし、脚は蹴るし、肘打ちも入れるし、もうやりたい放題。
その度に「空手の先生」に「お前のは空手じゃない!」と怒られていましたが反省するふりだけして心の中では舌を出していました。
そんな小学校時代を終えて中学に入り、さらに技と体を鍛えることに夢中のなり、すでに初段になっていた少年をもう「シロブタ」と呼ぶ人は誰もいませんでした。
ちょっと想像と違っていたのは
「痩せて空手が強くなれば(女子も含めて)みんなの人気者になれる!」
と思っていたのに、相変わらず友達はいないしモテなかったここと。
「おかしいなぁ???」
いやいや、こんな子、人気者にもモテモテにもなるわけないでしょ!
ということには気づかない13歳の少年は読書した本の中で決定的な文章に出会ってしまうのです。
これこそ僕のその後の人生を決定づけた文章であり、ここまでの2年間の自分の努力とそれによってもたらされた変化の根拠そのものだったのです。
その文章については次のnoteに書きます。
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