見出し画像

みそ汁の具

たゆ家実家の味噌汁には、必ずじゃがいもが入っていた
それは母方の祖母の教えか、父方の祖母の日課か、たまごが先か鶏が先かくらいのレベルの話

母方の祖母曰く「じゃがいもは畑の肉」であり、味噌とじゃがいもさえあればみそ汁になるということ。味噌を食べていれば大抵の病は防ぐことができ、じゃがいもを食べていれば腹持ちがいい、それは貧しい自分からの教訓のようなものかもしれません
そして父方の祖母に関しては、ただの嫌がらせか、それしか能がなかったとしか言いようがない

母の母は祖父にとって3度目のお嫁さんで、なんと初恋だったらしい
祖父の最初の結婚式を見て「めんこい婿さまだ」と見染めたのが7歳の時だったという。その年の差は実に14歳。一回り以上も違いながら縁あってそのめんこい婿さまのもとへ嫁いだという引きの強さよ。そして子どももまた、祖母にしかできなかったというのだから運命としか言いようがない。まぁ、狭い部落じゃあるあるなんだろうけれど
とにかく昔のお姑さまはキツイとしか聞かない。だからなんでもやらされたし、嫁ぐ前から女の子は家の手伝いも字を覚えるよりも先にやらされたことだろう。なにが言いたいのかというと、料理が上手だったということ

変わって父の母は、こちらもまた2度目のお嫁さんだったのだが、本人曰く「だまされた」といっておりました。それが頷けるのは農家生まれにもかかわらずお嬢さん育ちで家事一切がな~んにもできないひとだったということ。総領娘でかわいがられ、なにもせずにのんのんと暮らしていたということなのでしょう
でもね、皮剥きだけは得意だったんだろうなぁ。とにかく彼女の皮むきは見事な薄皮だったよ。よって毎日毎夜1年365日、16時っていうと台所でじゃがいもを剥いていた。みそ汁用のお鍋に小さくカットされたそれらは、お水に浸かってコンロの上にセットされていたのだ。だから我が家の味噌汁は、シジミだろうがなめこだろうが、豚汁だろうがすいとんだろうが、必ずじゃがいも入りだったのだ

だからといってそれをわたしが受け継いでいるか、といったらそうでもない
特に関東圏にお嫁に来てからは、当たり前のように家にじゃがいもがあるわけじゃなかったからね。実家にいたころは畑をやっていたので常にあったじゃがいもだが、ここでは買わなきゃ手に入らなかった
そしてあまりみそ汁を作ることがなくなったということもある
なんだろ? 面倒くさかったのかな。毎日は作らなかった
soupに力を入れていたからかな?

こちらに嫁いできたころ、会社の後輩たちとよくお料理教室まがいなことをしていたのですが、いちばん聞かれたのが「みそ汁の具」を何にしたらいいのか解らないということでした
それで、ちょっとした料理ブックなんかを作ってプレゼントしていたのですが、そのノートの最後のページは「みそ汁の具」でした

基本、わたしは3品以上と思っていましたので、下記のように記しました

*なめこ、とうふ、ねぎ
*大根、人参、油揚げ
*ほうれん草、えのき、溶き卵
*はくさい、ごぼう、しいたけ、
*玉ねぎ、えりんぎ、じゃがいも

これはほんの一部ですが、だいたい10~15品程度書いていたように思います。今もそれが彼女たちの手元にあるかは解りませんが

これを組み合わせたり、バラしたりしてうまいことやってくれと教えたのです。当時「具沢山味噌汁」なんてものも流行ってましたから、なめこに椎茸やしめじを足したり、大根にさつまいもやごぼうを足したり、玉ねぎに人参やえのきを足したりして5種類にして「食べるみそ汁」を作ることもありました

具沢山味噌汁または食べるみそ汁は、食欲がない時なんかにも重宝します

そのうち薬膳の勉強をしたりしたので、そこにショウガやあおさ、梅干しやごま油なんかが加わって滋養にいいものを作るようにもなりました

なんで忘れていたんだろう?
soupに力を入れ過ぎていたのかな

また、具沢山味噌汁を始めようかな
お弁当にもみそ汁が増えたことだし、これからの季節体調も気になるからね

これは余談ですが、わたしが最初に嫁いだおうちの味噌汁は味もそっけもないものでした。農家にもかかわらずみそ汁の具はひとつかふたつ、そしてなにより出汁の入らないみそ汁だったのです
なめこ汁はなめこと味噌だけ、その他白菜と味噌、レタスと味噌なんて日もありましたが、とにかく出汁を使わない。出汁は添加物であり「体を不調にするもの」という認識からだったのですが、だったら煮干しや昆布、鰹節なんかを使ってきちんと出汁を取ればよかったのにと常々思っており、また種類の少ないみそ汁に疑問もありました。みそ汁自体を「薬」か「お茶」のように飲んでいたようなきらいがあります
真意は解りませんでしたが、わたしはひたすらに出汁の入ったみそ汁を作り続けておりました。買い物その他を任されていたわけではないのでとりあえず鰹節で

それぞれの家庭にそれぞれの味があり、味噌汁もそのひとつと言えましょう
こちらに嫁いでびっくりしたのは、旦那さま実家は大変にしょっぱい味噌汁でした。加えて具材も面白くかまぼこやなると、ちくわなんかが入っていることもあり、調味料に至っては出汁だけでなく味噌と醤油で整えるという、本当にいろんなみそ汁があるんだなぁと味噌汁の幅の広さにびっくりしたものです
わたしも豚汁なんかを作る時は醤油を使うこともありましたが、醤油のみではもはやみそ汁ではないのでは?と

そんな中、おそらくわたしの作る「もやしの味噌汁」や「きゅうりの味噌汁」などは旦那さまには驚きの一品だったと言えるでしょう。そうしてだんだんに薄味にも慣らされていったわけです



いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです