快適空間
彼の写真が送られてきたとき、
それはずるいだろ
って、うっかり本音を漏らしてしまった・・・・
それはずるいだろ
と。
いつものならそこから「なんで~」とか「じゃぁこっちは~」とか、だるくてゆる~い会話のやり取りがなされていくのだが、その日はそれきりなんの反応もなくやり過ごした。・・・・はずだった
意外と早くに帰宅した娘は帰るなり「お母さん、ちょっと買い物行こう」とわたしを誘い出した。時間は夕方5時を回る頃だったろうか、わけも解らず連れ出され、なんとなく車に乗せられて目的地を目指す
もう想像がつくと思うが、着いた先はペットショップだった。「6時までだから急いで」なんて言いながら車をおろされ、わたしが「見せられても飼えないよ」と言っても「まぁまぁ」となぜかマウントを取られながら店内へ案内される
店内に入り、鳥かごみたいな形だけど猫タワーが設置されているゲージを過ぎると、中央にジュエリーショップのように並べられたケースが4つあり、その中のひとつに「家族会議中」と書かれた紙が貼られていた。そしてそれが目的だったようで「じゃーん」と、得意げに紹介されたのが白くて丸い毛玉…むーちょだった
すぐさま店員が寄ってきて「抱っこしてみますか~」と笑顔でケースを開ける。「家族会議って…」書いてあるよと言おうとすると、どうやらそれは「お取り置き」のサインらしく、ついさっきまでそこにいた旦那さまと娘が「ちょっと待っててください!」と言いおいて店を出たとのことだった
つまり「家族会議中」なのはたゆ家ということだ
「なんでわたし、連れてこられた?」
まだ名前のない白い毛玉を抱っこしながら、わけが解らないわたしに、娘は「お母さんが『いいよ』って言ったら、うちの子」「みてよ、この目!」「この目と目が合っちゃったら飼うしかないでしょ『連れて帰って』って言ってるよ」・・・・とまくしたてる
それはずるいだろ
・・・・の、ひとことに一縷の望みを託してここまで連れて来た旦那さまと娘。どうやらこれまでと違うわたしの返事に「脈あり」と思ったふたりは、早急に対面させて決断させようと思ったらしいのだ
実はこの時、タッチの差で、別なお客様のお宅に連れていかれようとしていた。そこをタッチの差で引き留めた旦那さまと娘の「ちょっと待っててください」のひとことで、この子はわたしと出会うことになった・・・・
「わたしは、とにかく散歩がイヤなの!」と言った。そしたら店員さん、さらなる笑顔で「小型犬ですし、室内犬は家の中を跳ねまわるだけでも充分に運動になりますよ」と、魔法の言葉を発した。当然わたしの心は揺らいだ。とにかく、
散歩をしなくてもいいなんて⤴⤴
そんな犬がいるなんて・・・・!!
え、うっそマジでっぇxxそんなのありなわけ? 許されるの、歩かないくていい犬がいる? 散歩抜きで犬飼えるのぉぉぉ…なんだもっと早く教えてよ!
(とにかくここがネックだった…自分も運動しないのに散歩とか…心の声)
そうしてわたしはしぶしぶ…あくまでもしぶしぶの態度で心の声を飲み込み「この子に関してわたしは一切のお金を出しません」と旦那さまに向かって言いますと「いいよ」とあっさりと答えた。保険、予防接種その他の通院、おもちゃにお洋服、なにがあってもわたしは「一切タッチ致しません」といい放ち、とりあえず自分の財布は守った上で、しぶしぶ…あくまでもしぶしぶ(2度言う)OKを出した
かくして1週間後、わたしは膝の上に毛玉をのせて帰ることとなる。だって見ちゃったらほしくなるじゃん(。-`ω-){嫌いじゃないんだもん
そんなわけでこのかわいいやつは、我が家の家族になったのでした!