読書感想文(伊沢拓司『クイズ思考の解体』装丁~解説(P.480~P.463))
以下、読むのと同時進行で殴り書きしたメモ。(2021/10/20)
・厚い…。家の中にある本でいうと、『パタン・ランゲージ』とタメを張っている。というか、わずかに勝っている。
・楽しみにしてただけに、どうくるか。フッフッフ。
◇ ◇ ◇
〇外身
・本を裏返すと、裏表紙、、ではなく帯に「3 史上初 クイズを科学する」とあるのがみえた。
・……既視感。科学する。
・かつて、"文化"包丁や、"スマート"◯◯のように、「科学する」とか「科学的」という言葉が流行した時代があった。しかし、科学を本質的に捉えている言動や言論は少なく、そこらにあふれるのはコミュニケーションの玩具としての科学。ファッション科学ばかり。
・科学の皮をかぶったエッセイ。今で言うと「いかがでしたかブログ」のような、お話の数々。真に科学的な文章といえば、尊敬するジャッキー大西さんの大西科学のところにある雑文ぐらいしか知らない。
・令和の現在でも平成の当時でもクイズ界の最先端コミュニティサイト、mixi。一昔前、そこでも「クイズを科学する」というmixiコミュニティが立ち上がり、科学というワードが流行した。(「STUを科学する」とか「クズニャンポーズを科学する」など多数の派生コミュニティがあった記憶。)
・当時、確か金沢大学だったかでスポーツ科学を学んでいるオスオスマン氏が立ち上げたコミニティだった。今も元気だろうか。。
・なんで、やたらと大学生はクイズを卒論にしたがるんだろ?古川さんのように、クイズ推薦で立命館大学に入学し、クイズに対する豊富な経験と理解力をもって卒論にするならば、それなりの新規性も出せそうなものだが、知識も研究力も足りない者が卒論としてどうなるのだろうか?と常々思う。
・新規性の近道は掛け算。自らの得意なこと、あるいは籍を置く場所での専門性を極め、武器とし、それをもって新しい領域をかけあわせる。これこそ、面白いと思うのだ。
◇ ◇ ◇
・さて、ぐだめきが長くなったが始めよう。
・カバーを外す。
・銀色シルバーに黒、そして中の方は赤に銀のしおりヒモ。
・くぅ~、いいね。これだよ、男の子は。
・この黒いマークに暗い銀色。ウルトラマンではないか、色は違うがエレキングを彷彿とさせる。しびれる。
〇奥付け
・ブックデザインは「文平銀座」さんとな。調べると寄藤文平(よりふじ・ぶんぺい)さんが設立した会社らしい。最近よく見るな。
・というか、京極堂の『地獄の楽しみ方』の装丁やってるとこやん。素敵。
・あの本は厚くないけど。
・けど、このマーク何のマークだろうねぃ?
・QとA、よくみるとひらがなの「あ」も混じっている。山の頂点にも見えてくるな。なぜやまマロリーみたいなクイズの象徴的な意味があるのかしら?
・検証・校閲は、田中健一さんか。その道の第一人者やな。なら、少なくともクイズの間違いはないだろうな。
・…と思いつつ、私は知っている。既にクイズ問題でミスが出ていることを。ツイッターで流れて来たからな!!
・なので、「検証・校閲 ▶ 田中健一」の文字をみたときに、えぇ、、、大変だったんだね、きっと、、、と、少し残念な感じになった。
・「クイズ思考の解体 2021年10月30日 第一刷発行」
・これ、豆知識なんだけど、雑誌の奥付に書かれる発行日は、業界ルールでちょっと先までの範囲で自由につけてよいことになっているそうだ。これは、なるたけ長く本屋に置いてもらうためだとか何とか。雑学本で見た記憶がある。真実はわからない。
・本屋でも、今度行ったら探してみよう。¥4,950(税込)は、なかなか売れないのではないか?
〇REFERENCES
・479ページ~476ページは、参考文献リストである。
・書籍については、『話の泉第2版』や、『クイズ年鑑』、新井たかし本や小山鎮男本と、まあまぁよく見つけるものよというラインナップ。中身を見るにも一苦労するレア本の数々。とはいえ、クイズジャパンが、先に色々と引用しているから、又引きという形なら別に手元になくともよいのかもしれない。
・昔々の細やかなクイズ史には興味はないので、そうかそうかと眺める。
・長門本、RUQS全書、赤本ときて、急に複雑系とか入ってきた。なんと、井庭先生が急にこんにちわだ。
・蓮實重彦の『ゲーム 駆け引きの世界』とか、池上高志・松田裕之の『ゲーム理論のフロンティア:その思想と展望をひらく』など学術っぽいのが並ぶ。認知科学や計算機科学、ゲーム理論等は無論クイズの分析に有用であり、そのフレームを当てはめることで、いろいろとうれしい知見が得られるのだが、ちゃんと扱えているのかなぁ、という不安と期待が混じる。
・あとは、社会学っぽい名前の文献が並ぶ。『クイズ文化の社会学』(2013)や『クイズ化するテレビ』などなど。
・社会学か、、今では、井庭先生が書かれたルーマンの本で書かれていた、"ルーマンが自身の理論を「発見のための方法」と考えていたというエピソード"を知って、あぁ、そう使えば、わりきればよいのかという見方ができたので少しは理解を示せるようになったが、学生だった当時に『クイズ文化の社会学』を初めて見た時は、「何?この恣意的でどうとでもいえる原理主義的なものは??これでイギリス旅行にいけるんだ。いいなぁ~。」「そもそも、何でクイズをTV番組とか大衆文化の文脈でばかり捉えるのさ。専門だからそうなんだろうけど、まるでゲームを物語論の文脈でしか認知されてこなかった歴史から生まれたルドロジーと同じ立場にクイズはあるんじゃないか。もっと、クイズそれ自体の研究をする者はいないのか!!」とクイズ研究会の部室のノートにそんな思いで書きなぐってたのが懐かしい。若いな。
・クイズサークルなるほど『♯NOP~なるほどオープン~』公式記録集!?!?どういうことだってばよ。。
・『首里の馬』だ。クイズ論と噂されてたな。芥川賞受賞作なんだけど。
・見返してみれば、プレミアついて手に入らない太古のクイズ本とカルチュラル・スタディーズ、あとなるほどオープン公式記録集以外は、読んだか目を通したことがあるか、見かけたことがある本だな。ということは、きっとちゃんとした内容なのだろう。
◇ ◇ ◇
・雑誌、新聞、論文は多いなぁ。ここらへんを、ちゃんと調べられるのが、体力あるなあとは思う。アクセスできる環境があれば、習慣の一環なんだろうけど。
・旬刊クイズだ。すげえ。
・現代思想4(7)1976年7月。こんな昔からあるんだ。へぇ。
・マネジメント38(7)日本能率協会、はらたいらの『カン練教室』。こんなところからも引っ張ってくるのか。すげえな。これみてみたいぞ。
・論文「90年代における『オープン大会』の誕生」って、そんなのあるのか、、、と思ったら、あれじゃん。クイズジャパンにも載っていたやつだ。良い仕事ぜよ。
・論文はこれと合わせて2つしかないね。しかも、もう1つは「マクルーハン理論から見る」という、おそらくメディア論のやつだろう。
・どれだけ、この界隈に論文がないかというお話ですよ。えぇ。
◇ ◇ ◇
・あとはQUIZJAPANのほかは、朝日出版系のお話ですね。アエラとか朝日新聞とか。ここは、今回、朝日新聞出版から出したことの強みですね。
・Web記事もリストにあって、伊沢氏本人のインタビューも多数。まぁ、そうなるわなと思う。広告塔が1人しかいないんだもん。
・参考文献だけで、これだけ面白い。雑誌や新聞記事系はカバーしていない範囲だったので、新しい知識として触れるのが楽しみである。Web記事も、たぶん一回みた気がするけど、もう一回見返してみよう。
〇GLOSSARY
・お次は、クイズ用語集。P.475~P472の4ページ。
・数えると48wordある。おそらく網羅的なものではなく、本文中に解説が必要な単語だけがPick Upされているのだろう。
・「学生系」の解説の最後が、「当時の学生によって作られたトレンドであることがこの名前の由来か。」とある。"か"、ナイスバランス感覚。
・眺めてみると、「押し勝つ」「企画」「記録集」「限定」「点ける」「問い読み」「例会」なんかは身に沁みつきすぎてしまって、あぁ、専門用語なんだな、、と気付かされた。
〇解説~目的としてのクイズ~
・取締役の徳久さんだ。わあい。
・いきなり警告された。
・そうです。私は解説から読み始める方です。
・――ごめんなさい。今、お尻からよんでるナウです。ちなみに、、解説はP.470~P.463の全8ページです。文字が大きめなので、とても読みやすいです。
・――重ねて申し訳ねえ。序章あるんだ、、、今初めて知りました、すんません。
・とはいえ、「後ろから読むな」という警告ではなく、これから読んでいくなら、頭から読むと挫折しますよという注意喚起の警告であった。よかった。お尻から先に読んでいく族でよかった。
・「マジックからロジック」。昔から言ってる気もするが、おそらく今回の合言葉のひとつだ。マジックは一瞬、そのロジックはたくさん。的なことば選びは実に的確。(まだ本文よんでないけど)
・そう。第一人者による研究なのよ。これは。そう、内輪では活発な議論を交わしながらも外部に向けて何も残してこなかったんよ。その荷をひきうける志にマジ感謝。
・そうね。徳久さんも何か書こうかなぁ~って言ってたもんね、落ち込むわな。たしかに流れ的に、クイズ史まとめて、技術も言語化するならその立ち位置にいるよなぁ~ってのはある。
・だけど、現状の立ち位置でも十分に役割はあるのだろう。次はきっと、徳久さんの番ならいいなぁ。しれっと、ある時、とQひささんが出してみたらカッコイイ。あるいは、不定期の連載でもいいや。mixi日記でもよいし。(よくはない。)
・2章は早押しの分類なのかあ。早押しクイズの”問題文”の分析ではないのかな?早押しクイズの”思考”の分析なのかも。ふむ。細やかなのね。古川さんの虎の巻は長門本から現代にアップデートさせた本でとてもよかった。今回、これよりも深く細かくするのかも、楽しみぜよ。
・3章は「誤答」とな。面白そうなタイトルだ。「リスク」のお話か。クイズプレイヤーがボドゲ好きなのも、それよね。
・あと「面雀(おもじゃん)」みたいなバカパーティーゲームが好きなのも、世間が一般に抱くステレオタイプの「勉強だけできる物知り」のイメージと実際と違うとこよねと思う。(あと、ダイナマイトナースみたいな不謹慎ネタも好きよね。余談だけど。)
・なんか、”自分で一回やってみる”と、景色が変わることあるよなぁと思う。サッカーや野球中継は、みてもあんまり楽しくないけど、バスケはずっとみてられる。世間的にはその逆なんだろうけど、たぶん、自分で体を動かした経験があるから、プレイヤーに何が見えていて、どう考えているか?を想像できるから楽しめるのだろう。
・クイズも、この本をきっかけに「見巧者」が増えてくれればと同感である。
・んで来ました!作問!これですよ!これこそが、今まで理論化されてこなかった部分。
・「作問者のホスピタリティ」か、ほぅ。キー概念となりそうだな。
・あれ、いや?具体の作問技術の話は、今回ないのか?どうだろう。
◇ ◇ ◇
・5章、複雑系とな。ほう。どう絡めるんだ?作問側?それとも競技側?
・なるほど、あえて完結させなかったのね。そのために複雑系を使うと。予想だけど。
・そうである。これはゴールではない。始まりなのだ。特に”多くの”プレーヤーという点に禿同である。ひとりではいくら理論が完成しきっていても、理解して、気が付いてもらわねばならないし、現実に動く者、思想が宿る者がいないと実現しない。
・最後の(もちろん自分も、その一翼を担うつもりでいます。)が頼もしい。
・発信能力を自分で備えたクイズ王。クイズ王の「人格の回復」。これは、現在進行形の、時代に沿った変化なのだなと思う。クイズ愛。愛。
・クイズが手段ではなく目的の人。趣味とは手段の目的化である、とは何の言葉だったか。たしか、『書きたいことを書けばよい』に載ってた言葉だった記憶。好きだからこそ、気付けるし、好きだからこそ、進めるし、好きだからこそ、悩み、そして楽しい。
・この本を読み始めるにあたって、実にふさわしい序章であった。...いや、巻末の解説であったな、これは。。
・クイズについて、考え・議論はこれから始まる。
・(中身をよんでないからおそらくの話だが、)クイズの研究は、世間的には、まだ基礎理論すら見つけ出されていないし、領域も整理されていない荒野だ。コンパスもマップもない状態だ。しかし、知的に魅力的な原石が眠る宝の荒野である。
・伊沢拓司により、この分厚い鈍器を旗印に掲げ、出発の合図、号令は掛けられた。
・いつでも、動くのは人。
・何をやるのか、ではなく、誰がやるのか、なのだから。(終)
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