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トレーニングの全体バランス
デッサン教室で立方体の描写に取り組んでいる時のことです。どうも全体のバランスが悪く何か問題があるのは分かっていますが、どうすればいいのか悩んでいる時でした。先生が私の席に座り、絵と対象を観察して「少し右の面が大きいですかね。右端の直線が長いのかもしれません」
そう言われ頭をよぎったのは「右端の縦線を短くするだけ」
これだけやれば全て解決すると思い、早速線を短くしてみると新たな問題が発生します。
当たり前のことですが、縦線を短くすると右面の上と下の線の角度が同時に変わってしまうということです。
そうなると右面だけでなく、上の面まで影響を及ぼし、さっきよりもバランスが悪くなってしまいました。
するとまた先生から「一気に線の長さを変えすぎないで、少しづつ調整しましょう。以前に話した消失点のことも考えながらやるといいですよ」
縦線の長さを変えることの一点張りになり、以前に説明を受けていた、消失点の考慮を忘れていました。そのため他の面のバランスがより悪くなってしまったのです。
最初の方に習った消失点の考慮もすっかり忘れていました。
初心者が迷った時に犯す典型的なミス、XをやればYという結果を得られるという単純思考でした。一見立方体のような単純なものでも、形を構成する要素が他にもあるため何か一つをやり他を無視すると全体のバランスを崩してしまいます。
ランニングの指導でも新しい負荷をかけ始める時は少しずつ取り入れるように(例えばしばらく休んでいた人がスピードを上げた練習を取り入れる時には量を減らす、ペースを抑えるなど)一気にやりすぎないことに気をつけていますが、デッサンではこのミスを犯してしまいました。
実際にこの練習が効果的と聞けば闇雲に取り入れる人が少なくありません。しかしこれは私のデッサンでの誤りと同じように、XをやればYという結果を得られるといった他との関係性を無視したやり方だと思います。
短期的にいいように見えたとしても、のちに大きく全体のバランスを崩す原因になりかねません。
絵では加えた修正のフィードバックがすぐに形となって見えるため気づいて修正するのは容易ですが、ランニングの練習は成果に気づくまで(良くも悪くも)、時間がかかりはっきりと分かりにくいところが厄介です。
また宣伝のような形で伝えられるトレーニングについては個人的な配慮が欠けているため、上記のような過ちに繋がりやすいです。
正確には立方体はすべての面が等しいのですが、私が対象を見る角度からは左の面が一番大きく、次に右、そして上の面となります。先生が適切なアドバイスをくださったのも、一度私の角度に座って、同じ視点に合わせてくれたからです。
当たり前のことだと思えますが、相手の視点に立って考えることは思ったより難しく、どうしても自分の視点から「ああした方がいい、こうした方がいい」と言ってしまいます。
もし先生が対象を私の右隣から見ていた場合は見え方も異なり(右の面が大きく見え、左が小さくなるため)、正しく問題を見つけることはできません。
まずは正しく状況をみること。そして問題を理解してから遠近法や消失点などの原則、技術をうまく利用すること。修正するときは一気にではなく、他との関係性も考慮しながら少しずつ修正すること。
デッサンのレッスンで学んだことは、ランニングの練習にも応用できることかなと感じました。
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