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インバウンドガイドツアー運営現場での6ヶ月の試行錯誤 〜PDCAとマーケティング〜

こんにちは、たにぐちです。今日は外国人向けガイドツアーの運営現場についてお話しします。

この半年で予約人数を最大化するプロジェクトを任され、商品企画、価格・在庫設定、ガイド人材の育成などに奔走しました。

その仕組み化のプロセスを「マーケティング」とちょっとキレイに呼び、ドタバタの試行錯誤を「PDCA」として、今回の記事にまとめました。

インバウンド業界ではこんな仕事もあるんだなと事例としてご紹介できればと。

自己紹介

私は関西で観光系ベンチャー企業に勤めています。現在の会社には1年ほどで、前職を含めると5年ほどインバウンド業界にいます。

ツアーの商品企画を中心に、ツアーガイド、ガイド採用、観光メディアの運営、公募案件のプロジェクト運営などをやってきました。

今はそれらの経験をベースに、マネージャー(非定型業務なんでもやる人)を任されています。

会社はコロナ前から観光体験の提供する事業者が利用するサイトの運営してきました。また、自社でも大阪を中心にガイドツアーを催行してきました。


概要:半年でケタ違いの予約数を目指す

今年、京都や奈良など関西圏全域へツアーを拡充するプロジェクトが立ち上がりました。その事業開発を私が任された形です。

言い換えると、OTA、オンライン旅行サイトを活用し、ツアー予約数の最大化を命じられました。(具体的には言えないのですが)半年で数十倍の規模にせよもいうもの。ゾスの世界ですね。

予約数を増加させるためには、自社ツアーのブラッシュアップ、ツアー数の拡充が必要。
そして、予約数増加に応じたガイドの採用やツアー運営体制の構築も求められる。

それらの業務の計画から実行に関わるもろもろを担当しました。(経営層への進捗説明、チームメンバーとの業務分担、経営層とメンバーの折衝など)

前職で4年くらいツアー企画の経験はあったのですがツアー運営全体は雰囲気を知ってるくらいで、ゼロからのことも多かったです。

ということで、それまでの「経験と勘」をもとに、仮説と検証を繰り返す日々がはじまったのです。夜遅くまでツアー作ったり、土日のツアー管理したり。

さて、ここからは6ヶ月間の取り組みをPDCAの順で紹介します。最後に今後の展望をお伝えします。

Plan(1ヶ月目)

一言でいえば、ツアー運営を円滑するためにやるべきタスクを洗い出しつつ、その月の予約数も目指した時期でした。

まず最初に手をつけたことはツアーづくりです。当然ですが商品がなければ販売にはつながりません。

どの商品が売れるかがわからない状態だったので、とにかく早く、たくさん、商品を掲載して検証しようという戦略でした。

ただ、思いのほか早く、商品が売れてしまってガイドの確保と運営体制の確立も急ぐ必要がありました。

商品企画:初期計画策定と最優先ツアーのOTAサイトへの掲載

企画会議を開き、メンバーが知恵を出し合って、商品案に対して優先度をつけた計画をつくりました。企画者ごとに行き先は分担。

京都の寺社仏閣めぐり、大阪のフードツアーやバーホッピングなど、既に人気観光体験として知られるものが中心となりました。

個人的に工夫した点としては、移動距離はあるものの他社の参入が少ない姫路のツアー、混雑が激しい大阪城で人が少ない朝の時間帯のツアーなど、差別化を意識したものも加えました。

ガイドの確保:採用計画と研修設計

ツアー予約数に応じて案内するガイドが必要です。ガイドは社内にもいますが、フリーランスの方にご協力いただくことが多いです。

ガイドツアー運営では、予約数と対応可能なガイドの人材の調整、需給バランスをうまく取るのが鍵となります。

また、ガイドには通訳案内士のようなプロガイドの方もいれば、ガイド未経験の方もいます。そういう人たち向けに資料を作ったり、研修で案内のポイントを知っていただくのも大切な仕事です。

この段階ではツアー催行するエリアごとに確保すべきガイド数の概算、研修対象となるツアーの選定と研修内容の設計などを行いました。

ツアー運営:販促と体制の確立

それまで自社では体験サイトの運営がメインの事業でした。観光体験施設との仲介、チケット販売、観光情報に関する問い合わせ対応などが業務の中心。ガイドツアーはサブ的な位置付け。

そのため、ツアー当日のトラブル対応やガイドからのツアーに関する質疑応答などはかなり属人的で、標準化されてない部分がありました。

大きいところでは予約から催行までの作業手順の整備。細かいところではメッセージの定型文の作成やクレームへの対処基準を設定など。

各担当者にヒアリングしながら、ルール化できる部分、都度判断すべきものを仕分けて、資料に落とし込む必要がありました。


Do(2〜3ヶ月目)

Planの段階では、取り組むべきことのリストができました。Doの時期には予約数増加に繋がる作業を見極めながら、効率的に実行することを心がけました。

優先度と実行

初月で目標予約数を達成できたこともあり、社内のモチベーションも上がり、上層部からもメンバーからもアイデアがどんどん出てくる。

思いついたアイデアはすぐに実行したいものです。ですが、実行して成果が出るまでにさらに新しいアイデアが出てきがち。

そういうのもあって、この時期の私は「それって今やる必要ありますか?」と待ったをかけがちでした。

理由としては全体のToDoリストと見比べたときに、それを今やるべきか、と俯瞰的に見る必要があったからです。

全部やりたい。すぐやりたい。やるにはリソースが足りない。じゃあどうするか。
一部を切り出せないか、あるいは短期間だけやれないか。もしやらないなら、いつくらいならやれそうか。

そんなことを考えてました。まとめると判断軸としてはこんな感じでした。

  1. 30分以内でできるならすぐやる

  2. 30分以上かかる場合は今日やろうとしていることより優先度が高いか検討

  3. 優先度が高い場合、15分程度で作業設計をする。1日でできるのか等作業時間を見積もって、他のToDoの作業順を入れ替える

  4. 優先度が高くない場合は、どのタイミングでやるべきかを決めて、ToDoリストに入れる

有効な施策を掘り起こす

時間とともに状況が変化して、Planの時期で作った計画の通りには、商品企画もガイド採用も概算数ほどいきませんでした。

が、一番重要な目標である予約数は順調に推移したのはよかったです。Doの時期はToDoリストを消化しながら、どの施策が予約数に貢献するかを検証していました。

例えば、商品企画に関しては、競争が激しい大阪の道頓堀や新世界のツアーはそれほど伸びませんでしたが、ほかに市内でそれほど他社が出してないツアーが良い感じでした。

なので、そのツアーに特化し、研修も手厚くして対応可能なガイドさんも増やし、予約期限も短くするなどリソースを集中。

それによって、さらに予約数も増えるという好循環がうまれました。

ちなみに、うまくいかなかった施策、一定期間であきらめたものも、たくさんあります。

Check(3〜4ヶ月目)

Checkの段階ではそれまでの施策を振り返り、新しい打ち手を考える「分析」の時期でした。一方で予約数が増加し、サービスの規模拡大によって様々問題が生じて、それらの対応にも追われました。

販売分析

Doの段階ではとにかくたくさんツアーを作りました。Checkの時期で販売状況のデータをみて、上記の好事例からラーニングをもとに改善に取り組みました。

売上ランキング、予約率、View数、予約者の国籍、ガイドの依頼状況などの情報から商品ごとに仮説を立てて、強化策を考えました。ざっくりといえば以下の3パターンです。

  1. よく売れている商品は値上げやオプションを追加することで、収益改善と更なる予約増を狙う

  2. ある程度見込みのある商品は他社商品と比較して、訴求ポイントを見直すなど部分的な見直して予約率を改善

  3. 売れていない商品は廃番にするか、ツアータイトル、価格を中心に抜本的に変更

上記をもとに、一つひとつの商品を分類して、次のActionのフェーズで地道に見直していきました。

課題解決

予約数が伸びるにつれて、ガイドが不足気味になったり、ツアー運営の業務負荷がかなり高まったりしました。

チーム全体の方針、個人のリソース配分を調整して対応しました。特にツアー企画が新規よりも手直しの時期にだったので優先度を下げました。  

ガイド採用については求人サイトの活用、通訳案内士のみなさんへのDMなどで応募いただいた方々と、英語での質疑応答も含めて面談。

ツアー運営については業務フローを見直しや、商品企画のメンバーに運営業務を兼務してもらうことで、運営全体の仕事量を増やしました。

結果から文章に起こせばかなり単純ですが、プロセスとしては難しさもありました。

具体的には、今すぐ問題ではないが将来致命的になりそうな課題への対処の必要性を求めること、今の業務が好きで専念したいメンバーに別の業務もするのを納得いただくことなど、コミュニケーションの持って行き方は気をつけました。

Action:4〜6ヶ月目

PDCと業務を回していく中で、計画と実行のズレ、実行からの経験値をもとに計画を見直したという感覚でした。修正した戦略をもとに、Actionを遂行したのがこの時期です。

訪日旅行者の秋のピークシーズンが到来し、予約数は倍々ペースの時期もあり順調に伸びてきていました。

OTAの市場状況への最適化

優位性のあるツアーの見直しによる販売強化とニッチだが将来性のある商品の開発を行いました。

比較的優位にあったツアーを商品情報を、割引、直前までの予約受付などで予約数を伸ばしました。

当社で優位なのは、既に人気の観光地よりもやや競争の少ないエリアで、それらを複数展開して需要を幅広く獲得している印象です。後発の会社だからこその工夫とも言えるかもです。

また、外国人の知名度はそれほど高くないものの、人気の場所と同様あるいはそれ以上の体験価値が提供できそうなニッチな場所にも注力しています。

繁忙期のガイド不足

10月くらいになると、案内していただけるガイドさんが足りなくなりました。他社のツアーで既に予定が入っていたりなどの要因がありますね。

人によっては他社への勤めるので、数週間先まで決まっていたツアーをすべててキャンセルさせてほしいという話もありました。
繁忙期で予約が増えるのは嬉しいですが、もっと年間を通じて安定的な予約を取りたいなという気持ちにもなりましたね。

来年以降に向けて

いろんな日本の魅力見てほしい

以上がこの半年で取り組んだ内容でした。

効率的に予約数を伸ばすために人気観光地への誘客を優先してきました。
オーバーツーリズムの問題もありますし、ゲストの満足度とガイドのしやすさを考えると、中長期的には訪日客にとってニッチなエリアでの需要を高めて、幅広くツアーで予約を増やしていきたいですね。

例えば、関西空港周辺の大阪の泉州地域、明日香村、法隆寺、吉野など歴史深い地域のある奈良の中南部、私の地元の和歌山県北部などに個人的には力を入れたい気持ちがあります。

日本人でもガイドツアーのニーズが高まっている

余談になりますが、当社のツアーは基本的には訪日外国人をターゲットにしています。しかし、週数件程度であるものの日本在住の方からの予約があります。

京都御所、姫路城、神戸の街歩きなどに複数回予約が入りました。まだ共通点など一般化できるほどではありませんが、前職から含めて5年以上ガイドツアーに携わっていて、確実に数は増えているなと感じています。

日本人が日本の魅力に気づく機会として、他世代、普段関わらない人と交流できる手段としてガイドツアーは素晴らしいので、可能性が広がるといいなと密かに思っています。

最後に


会社組織であるため効率化、資本主義的な振る舞いは避けられてない部分はあります。
ただ、忘れてはならないこと、大切にしたいことは、その土地の人に地域を紹介してほしいゲストと、その地域を案内したいガイドの出会いを繋ぐこと。そして、お互いに楽しい時間を、幸せな時間をつくることに貢献できるサービスであること。

高いレビューがつけば、そのような機会が作れているはずです。今は関西が中心ですが、来年には日本全国のいろんなところに広げていきたいなと考えています。

読んでいただいてありがとうございました。

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