神奈川大学との共同研究 〜24年の「情報アクセシビリティ社会モデル事業」へ〜
4Heartsでプロボノを始めて1年以上経つのに、4Heartsがどんな活動を経て今に至るのか、分かってるような、分かってないような、ボンヤリした感じだったので、那須さん、津金さんに取材しました。
今回は2021年に行われた神奈川大学との共同研究についてです。
聞いていくと、これから始まる社会モデル事業にちゃんと繋がっていることがわかりました。(当たり前だけど。)
神奈川大学とはどうやって繋がった?
大学と繋がったのは2021年3月ごろ、とのこと。
当時4Heartsは・・・
2020年5月に法人化
「みみとこころのポータルサイト」を開設
「みみここカフェ」で哲学対話を開催
といった時期で、
「もっと活動を広げていきたい」
「大学と繋がれるといいな」
漠然とそう思っていたそうです。
そんな時、4Heartsが利用していたコワーキングスペースと同じフロアにオフィスを構えるNPOの方に、その想いをチラッと話したところ、
「大学、紹介できるよ」
と言われ、その方の紹介で神奈川大学の高野倉研究室と繋がることができたそうです。
そのコワーキングスペースは、人と人のつながりから新しいものが生まれることを狙いとしていたそうなので、まさにその狙い通りになったということですね。
一緒に何ができるだろうか?
高野倉研究室は工学部経営工学科の人間工学研究室。
体験価値を創造するUXデザインの実践、高齢者や障がい者など多様なユーザに配慮したシステムデザイン、ユーザビリティを高めるインタフェイスデザインなどに取り組んでいます。
研究室ではちょうどその頃、神奈川県からの依頼で「ともに生きる社会かながわ憲章」の普及啓発プロジェクトをやることになっていました。
以前に県が開催したフォーラムに、障がい支援のスマホアプリを出展したことから、県から声が掛かったそうです。
一緒に何ができそうか打ち合わせをする中で、大学側から、
「『ともに生きる社会かながわ憲章』の普及啓発プロジェクト、
4Heartsさんも一緒にどうですか?」
という話が出て、協働(共同研究)できることになったそうです。
なんという絶妙なタイミング!
4月から新3年生がゼミに入って普及啓発プロジェクトに取り組み始める、
そのスタートから一緒に取り組めるなんて!
テーマ決めから実証実験へ
大学3年次はフィールドワークやビジネスコンペなどに参加しながら主体的に学ぶ時期。
しかし、
「学生はまだ聴覚障がいについて理解が不足している」
そう感じた研究室の先生の問題意識から、
まずはデザイン思考の「観察」をするべく、学生たちは街へ出たのだそうです。
ドラッグストア、スーパー、カフェ、ファストフード店などに出向いて、
「もし自分が聴覚障がい者だったら」
という設定で感じたことを「共感マップ」に落としこみます。
例えば↓こんな感じ。(想像だけでよくここまで書けるもんだ。)
4Heartsは並行して、研究のフィールドを提供してくれる会社を探したそうです。
ここでもNPOつながりで、とあるスーパーが協力してくれることになりました。
学生の「観察」と体験から、実証実験の目的は
「聴覚障がいの疑似体験を通じて、聴覚障がい者が普段抱えている問題を把握し、改善案を考える。」
に決定!
いよいよ6月。
耳栓とヘッドホンとホワイトノイズで聞こえない状況を作り、
聴覚障がい者がスーパーで買い物するときの困りごとをリサーチし、店内、レジ、サービスカウンターでの支援ツールの作成に取り組みました。
支援ツール:店内マップ、ポイントカード作成時のマニュアル、
筆談をスムーズにするための想定問答カード、など
収穫 〜実証実験で分かったこと〜
スーパーでの聴覚障がい疑似体験では、こんな場面があったそうです。
ヘッドホンを着けて聞こえない状態になっただけで、健聴者の学生がものすごく不安そうな表情に。
購入するよう指示されていた商品を見つけられず、よく似た別の商品を購入してしまった。
後でその時の気持ちを聞くと「店員さんに迷惑をかけたくないと思ってしまい、『違う商品だけど、もうこれでいいや』と諦めの気持ちになってしまった」と。
ヘッドホンを着けた時の不安な気持ち、
私も「こころで聴く図書館」のイベントで体感したことがあります。
(https://congrant.com/.../slowcommunication/8405/reports/3235)
足音が聞こえないので、後ろから来る人の気配に気付けなかったり、
会話が行われていることは口の動きでわかる(見えている)ものの、
何を話しているのか、何が起きているのかは全くわからず、
今ここにいるのだけれど、周りと繋がってるような、孤立しているような・・・。
普段無意識のうちにたくさんの情報を耳から得ていて、その情報がないとこんなモヤモヤした気持ちになるんだな、と。
4Heartsではこの共同研究で3つの収穫があったそうです。
ヘッドホンを使った聞こえない体験はすごく有効だと分かった。
ツールがあるだけではダメ。人々の意識が変わる必要があると感じた。
健聴者の学生がヘッドホンをつけただけで不安になり、人に迷惑をかけたくないという感情が生まれ、欲しいものをあきらめた。それは、そもそも社会の風潮や教育がベースにあるからではないか。だから、街が変わる必要がある、という回答に至った。
情報アクセシビリティ社会モデル事業へ
人々の意識が変わる必要がある。
街が変わる必要がある。
そこから、
「もっと広い範囲で実証実験を行って、意識調査をしよう。」
「サイレントマジョリティ化した人々のインサイト(本音や動機)を明らかにしよう」
「商店街など日常生活に密接した場所のデータを収集して、社会実装のモデルを探求し、各地域での導入支援につなげよう」
こうして24年の「情報アクセシビリティ社会モデル事業」に続いていくんですね。
そこで人々がどんなことを感じるのか、神奈川大学の学生が目的の商品を諦めてしまった根本にはどんな意識があるのか、だんだん本質に迫っていく感じがして、めちゃくちゃ楽しみです!
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