佐内正史の写真集「生きている」を読んだ感想と考察。相同性と対照性。生と死。そして、はざま。
どうもgucchon(@gucchon07)といいます。
本日は佐内正史先生の写真集「生きている」を読みましたので、感じたままに感想と考察を述べたいと思います。
佐内正史先生といえば、大塚製薬のポカリや、最近だと「宮本から君へ」というドラマにも関わっている、有名な写真家です。
うちはテレビいらない派で、去年にメルカリで売ってしまっているので、ドラマはみておらず、佐内氏のインスタ(@sanaimasafumi)をフォローしているくらいです笑
以下、ネタバレとなります。
解釈できておらず、ネタバレにならない気がするので、半ネタバレということで笑。
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本写真集の、マクロ的な表現と、ミクロ的な表現をあわせた伝えかた、対照性、相同性という観点、非常に参考になりました。
印象的だったのは、
・本当に何の変哲も無いような身近な場所から、被写体を切り抜いている点
・最初と最後のページ、左右のページの中で、記号(線や形や色調)やテーマの相同性、または対照性がみられる点
・「生」と「死」、そして「その間、はざま」という意味を、個々の写真、および写真集全体をつかって表現している点
です。
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写真集の撮影場所
平凡な住宅地がメインの撮影場所となっています。都市型ではないストリートスナップですね。
水やりをしている人、住宅地の建物、ドア、電線、標識、原っぱ、植木、ホース、空、植物、地面の模様、ドラム、車、飛行機、自転車。。
ほぼすべて、身近な被写体であり、佐内氏のセンサーが興味深いです。
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記号やテーマの類似性と対照性
線と形と色など構図的な点や、「生」と「死」というテーマでの相同性と対照性があげられます。
写真集の一枚目から順に考察していきます。
・最初の一枚目は、自動車の後ろ姿。車種はスカイライン。
→最後の一枚との相同性と対照性が本当にみごとでした。すごいとしか言いようがないです。詳しくは最後の一枚で私の考えを述べます。
・左:自宅の庭で水やりをする女性、右:住宅街のモノクロ写真
→左斜めに伸びるラインの角度が同じです。意図的には、左は爆発するような「生」、右はあえてモノクロにすることでの無機質さで「ほのかな生」あるいは「死」を連想。
・左:敢えてオレンジ色にふれている空と二羽の鳥、右:オレンジ色の屋根をした住居
→色が同じです。「二羽」いるのは、前ページの「庭」にかけた遊びゴコロ?
・一枚で、「止まれ」の記号標識
→一枚だけではありますが、赤と青という対照的な色が印象的。赤=生命、青=死という意味か。
・左:草原と横に走る2本のライン、右:T字路
→二本のラインの角度が左右の写真で全く同じです
・左:草っ原の中にある瓦屋根の家、右:麦わら帽子をかぶったおじさん
→屋根と帽子での「上向きの三角形」で相同性がとれています。
・左:黄色の花と右側にうっすら入り込んでいる黒い線、右:駐車場とマンション
→黄色い色み、黒い線と車の入り込みかたで統一感を持たせている気がします。
・左:空と雲と、写真右下にうっすら影、右:コンクリ壁と小さい隙間のような窓と、写真右下に車
→覆っているもの(空とコンクリ)、その間(雲と窓)、右下の黒い感じ(影と車)で合わせています
・左:隙間から飛び出している巻かれた青いホース、右:植木スペースからもっさりはみ出している植物
→「隙間からはみ出している感じ」が同じ。
・左:真横にのびたクジャクの緑色の尻尾、右:横に伸びたガードレールの裏側
→緑色かつ横のラインで相同性がとれている
・左:赤い、わしゃわしゃしたパターンを持つ花々、右:青いラメ入りのドラム
→花々の細かいbusyさと、ドラムの小さく光っているラメ模様の細かさで同じ。また、植物の赤色とモノ(ドラム)の青色で対照的な色使いであるので、「生」と「死」の対照か。
・左:たてに伸びる木目、右:緑色のドアとステンレスのドアノブ
→縦のラインで統一感。これも木とモノの対照なので、「生」と「死」か。ただし、ドアノブからは、その奥にいる「ヒト」を感じさせる。
・青空と雲の写真一枚
→この考察は難しいです。。最初と最後のページが「空」を表現しているので、ちょうど中間の位置に、何も生命や機械がうつっていない「ただの空」を持ってきたのか。。
・左:スクーターの座席、右:モノクロで葉っぱのない木
→スクーターの座席のシワが、木の枝の形と似ている。また、右上を向くような構図も同じ
・左:淡いトーンの海と空とわずかな夕焼け、右:壁際に並んだ色違いの二台のスクーター
→この考察も難しいです。。なんとなくスクーターの柄の中に赤色があるので、部分的な赤みで統一感をだしていると考えます。
・左:草むらに突っ込んで駐車している車、右:1. 建物の間に隠れる車、2. 見切れた車と道路
→3枚の写真、いずれも「白黒の車」と「そばにある緑」が同じなんですよね。
「緑=生」、「車=非生命体」なのかなと。
・左:T字路がうつる住宅街、右:緑のある団地
→これも考察が難しいです。。住宅街と団地という対比でしょうか。あとは、これまでと違って、構図のラインが左右で対照的になってます。左の写真は右上に、右の写真は左上にのびています。
・左:1. 四角いブロックが埋め込まれた軒先、2. シートをかぶった車、右:シートをかぶった車と模様のある段差
→模様とシートをかぶった車がいずれも同一です。この組み合わせも構図のラインが対照的になっています。
・左:荷台にシートがかけてあるトラック、右:荷台にシートがかかっているトラック
→どちらも荷台のシートで相同性があります。トラックの向きは対照的。
・左:1. 木の枝のみ、2. 上半分がわずかな木の幹、下半分はブロック塀、右:上は葉っぱで下は道路の白線
→左の2枚を組み合わせて、右の1枚と同じ構図にしています。
・左:陽が差し込む窓、右:モノクロで横向きの羊
→これも考察が難しいです。横向きの構図がいっしょ?というか、これまではモノクロは「死」を連想させていたので、羊を死なせようとしていませんか?
・左:路上でこちら側を振り返っている白い猫、右:ステンレス製のくねっとした手すりと奥に見える森。
→白いものが左側にくねっと曲がった感じが同じです。おもしろいアイディア。
・左:青い水面、右:住宅街に沈むオレンジの夕日or登る朝日
→The 対照!って感じですね。
・一枚でだけ、住宅のブロック塀と植木、そして影
→この写真は最も考察がむずかしいうちの一つです。木とブロック塀との対照でしょうか。誰か教えてください。。
・左:オレンジ色の光に照らされた葉っぱのない木の枝、右:大部分を占める黒い車と吉野家の看板
→オレンジ色の色彩で統一をとっています。葉っぱのない枝と無機質な車も合わせているのでしょうか?
・左:テーブルの上の灰皿、右:電信柱と貼っているマーク。
→これはよく見ると、共通して、真円から放射線状に数本の直線がのびている点が同じですね。
・左:スニーカーを履いた人間のひざ下、右:瓦屋根と電信柱
→スニーカーを履く足の開き方と、瓦屋根の角度が同じです。またひざ下と電信柱の直線も合わせています。
・一枚で、サッカーゴールの置いてある大きなグラウンド
→考察が難しいです。空とグラウンドの水たまりでボーダーの構図にして、「はざま」感を出している?
・一枚で、窓辺の観葉植物
→The 生きている、って感じでしょうか。写真集のタイトルになる一枚。
・左:幾何学的な模様の入った地面、右:ある程度不規則に駐輪してある自転車
→規則性と不規則性の対照だと感じました。ただし、どちらも無機的な「モノ」としては同じです。
・最後は、一枚で、空に飛行機。
→最初の一枚目との対比と類似性が秀逸ですね。最初の一枚目は、「地面、車、車種は"スカイ"ライン」で、最後の一枚は、「空、飛行機」ですからね。
「地面」と「空」の対比。
しかし、「機械という非生命体」としては同一。
しかも、車種が「スカイ」ラインであることで、「空」で相同性をとるという。
発想が尋常じゃないですよ笑。すごいとしか言いようがない。
あっぱれです!!すごすぎ。
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「生」と「死」、そして「はざま」というテーマ
今まではミクロ的に見てきましたが、次はマクロ的にみてみます。
これらの写真から何を表現しているかをかんがえると、「生」、「死」、「はざま」がテーマと推察しました、
たとえば、先にも書きましたが、はじめの一枚目は車の後ろ姿、そしてラストの空を飛んでいる飛行機(どちらも鉄のかたまり)。
最初と最後の写真のテーマは、「空」と「機械」=「鉄のかたまり」=「生でない」=「死」を持ってきていると考察しました。
そして、その間に「生」を感じさせる写真が多く入っているんですよね。
もちろん、左右で対照的に描いてもいますが。
すなわち、最初と最後の写真ではさまれた「はざま=間」。
本作のタイトルである「生きている」というタイトルではありますが、相対的に「非生命=死」、そしてその間である「はざま」も表現しているのであろうと考えます。
うん、もうちょっと読み込んで、もっと考えてから、言語化にチャレンジしてみます笑
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最後に
ここまで、ものすごい長文&乱文になってて、すみません。
本写真集の、マクロ的な表現と、ミクロ的な表現をあわせた伝えかた、対照性、相同性という観点、非常に参考になりました。
著者らの意図を理解できるように、今後もいろいろな写真集を読んでインプットしつつ、守破離ということで、写真をとる時にも活かしていきます。教養をふかめねば。。
佐内正史先生は、新刊「銀河」が発売するので、ご興味のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか
本日もご覧いただき、ありがとうございました!
長かった!