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危機と人類 ジャレド・ダイアモンド著 上巻 書評
年末年始に、地理学者であり進化生物学者のダイアモンド氏が近代史に焦点を当て、近未来の人類への示唆を汲み取ろうとした本作を通読しました。
上巻は紹介する7つの国家のうち、フィンランド 、日本、チリ、インドネシアを紹介。
フィンランドは1年半前に観光旅行。滞在日数はたった2日間だけでしたが、ヨーロッパとロシアが融合したような、かといって独自の雰囲気を持つ興味深い国だなと思ってました。
私なりにフィンランドの歴史も勉強したつもりでしたが、本書でも取り上げられている通り「フィンランド化」というある意味、フィンランドをネガティブに捉えた言葉もありますが、ダイアモンド氏は「フィンランドにしかない危機から脱却するための賢い選択だった」とポジティブに捉えているのは本当に同感します。
今のフィンランド人がロシア人に対してどのような心情を持っているのか、旦那が現地人の日本人ガイドに聞いてみましたが、本書で書かれているほど「意識はしていない」と言ってました。
そもそもフィンランド自体、一つの地域としてロシア(特にアレクサンドル2世の時代)がフィンランドの地域を文明化させたこともあるので、ロシアに対してはポジティヴ・ネガティヴ双方の感情が入り混じったものなのかもしれません。
*フィンランド化政策の一環なのか、フィンランドの発展に貢献したとしてロシアのアレクサンドル2世の銅像がヘルシンキの超一等地に立てられている。
それでもクリミアの事例をみるとロシアの脅威は終わっていないように感じますが、これは下巻でダイアモンド氏がウクライナもフィンランド化政策を採用していればもっと上手に対処できたのではと提言しています。
日本に関しては、アメリカ人とは思えないほど、的確に客観的に日本近代史を捉えているなという印象。多数の国の文化の歴史や文化を経験した人ならでは、で実にコンパクトに分析しています。
実はこれは池田信夫氏が見事に分析していますが日本人の特徴とも言える良くも悪くも信念よりも「空気」を重視する志向が、地理的要因から発しているという点は「銃・病原菌・鉄」の考え方(地理が人類の文明文化を決定する大きな要因)とほぼ同じ結論なので、この辺りにフォーカスしてくれたらもっと面白い内容になったのではと思います。
インドネシアに関しては「多様性の中の統一」という国是がどのような経緯を経て生まれてきたのか、そして理想と現実を見事に簡潔に解説してくれています。これだけの民族と言語と島にインドネシア・アイデンティティを醸成させたのは奇跡というしかない。そんな特異な国がインドネシアです。
チリも非常に興味深い。社会主義独裁と右派独裁を双方経験した国。つまりスターリンとヒトラーを両方経験し、今は民主主義が機能した新興国という立ち位置。
サッカーの世界でも、現在はヴィダル、サンチェス、過去にはサモラーノやサラスなど、個性的な選手目白押しですが、なんと言ってもロハス事件。GKのロハス選手がワールドカップに出場するために自ら剃刀を持って怪我を装い、ブラジルとの試合を無効試合にして出場を果たそうとしたのです。
そんな選手を生み出した国がチリ。現地に行ってなんとしてもチリのサッカーを見てみたいものです。