最も犠牲者が少ない電力は「原子力発電」?
個人的には、
という考えで原子力発電も残すべきと思っていますが、スティーブン・ピンカーの『21世紀の啓蒙(上)』によると、
内閣官房の資料では、下表の通り、圧倒的に原子力発電が安全、というか、他の主要なエネルギーは、30年間で石炭約2万人、石油約2万人、天然ガス約2千人、水力約3万人と、多大な犠牲の上に成り立っているという事実に驚嘆します。
具体的にはどんな事故かというと、これも内閣官房の資料で、石炭は炭坑事故が多いし、石油は輸送中の事故が多く、ガスはパイプライン。水力も過去に中国やインドで多くの犠牲者が出てしまっている。
つまり、データに基づいてファクトを精査すると、人類がこれまでに利用してきたエネルギー形態の中で最も安全な形態は、なんと「原子力発電」なんです。
最近麻生首相の発言で話題になった「福島原発事故では一人も死んでいない」
記事中では、
とのように原発事故での死者数は、いませんが、作業中の事故による死者は2名。亡くなった方にはご冥福をお祈りしますが、データ的にはたった2名です。
もちろん、福島原発事故では万人単位で避難者で出ていたり、住めなくなってしまったり、風評被害があったりと、死者数だけでない問題も大きいのですが、こと死者数だけに限っていえば、他の電源との比較では圧倒的に原子力発電が、安全なのです。
同じくピンカーの『人はどこまで合理的か』によれば、飛行機による移動は自動車による移動よりも1,000倍安全(1人あたり1マイルあたり)という事実と同様、どうしても原子力発電事故の衝撃が大きいがために私たちは原子力を忌避したくなってしまいますが、データに基けば、原子力発電は決して危険な電力ではないということです。
行動経済学では、飛行機移動や原子力発電を忌避する心理のことを、利用可能性ヒューリスティックといって、どうしても私たちは衝撃の大きさの方に目が行きがちになってしまって、事実とは異なった方を優先させてしまうという錯誤をしてしまうのです。
*写真:大曽根俊輔「パンダ」
(2022年2月松本PARCO de 美術館にて撮影)