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米国の対中政策転換に伴う今後の展望
米国の対中国への政策転換は、自由主義社会体制の秩序を逸脱する中国を自由主義社会から再び仲間外れにすることが目的で、当然の政策変更。
【これまでの世界経済圏の流れ】
米国はソ連崩壊に伴い、共産主義国に自由主義社会のルールを適用して米国市場を開放しました。もっと遡れば米国は第2次世界大戦で痛手を被った西欧各国や日本などにも市場開放し、米国市場を活用させることで経済発展を支援しました。
米国自身にとっても市場開放することによって経済圏が拡大すれば、自らの経済成長にもつながるからであって彼らの国益につながるからこそボランティア的政策を採用していたのです。
第2次世界大戦前は、帝国主義による「植民地の拡大」、ブロック経済による「従属国家の増大」によって、資源確保含め自国の経済圏を拡大することで経済発展する手法が主体でした。
一方で第2次世界大戦後の経済発展とは、米国が西欧や日本など自由主義社会に属する国家に豊かな米国市場を開放することで成り立っていたのです。
しかし日本の場合は、経済発展しすぎて貿易摩擦を起こしプラザ合意による超円高誘導によって米国市場から手痛い目に遭ってしまいました。
そして米国は旧ソ連崩壊以降、中国にWTO加盟を認めるなど、共産主義国家も自由主義市場に取り込んで経済発展すれば、いずれ政治体制も民主化に向かってう進むだろうと判断したのです。
以下参考。
【中国とベトナムの違い】
ところが、中国とベトナムを例にすれば、双方とも民主化に進まず、旧ソ連諸国と東欧諸国のみがソ連崩壊と同時期に民主化したのみ。完全に米国の目論見は失敗したのです。
とはいえ、ベトナムのように自由主義社会の秩序を守っていれば何ら軋轢は生まれず、共産党体制を維持しつつ、自由主義社会の旨みを享受することができたのです。
ところが習近平政権は、中国共産党(以下、中共)政権内の権力闘争のためか、コロナ禍による経済低迷から目線を外に向けさせるためか不明ですが、香港一国二制度の事実上の廃止や多方面に領土に関する現状変更行動を進めています。
習近平政権も賢い政権ですからこうなってしまうのは間違いなく想定したはずですが、それ以上に国内事情のプレッシャーが強いということなのかも知れません。
【ルールを守らない国=中国の排除】
とはいえ、自由主義社会のルールを守らない以上、残念ながらいったん中国に開いた自由主義経済圏への扉は、再び閉じる必要があるのです。
加えて中国の国家体制は中共による指導によって成り立つ国なので、全ての民間企業に共産党員が「指導」という名のもとに配置され、全ての企業情報は中共に提供する必要があります。つまり中国企業を使えば中共に情報がダダ漏れになるのは間違いない。
したがって、安全保障案件や国家の重要インフラ(5Gなど)については、中国企業を除外するのは当然です。
【今後の展望】
中国は今後も経済成長し、IT化も進んで発展していくでしょうが、一方で政治を牛耳る中共の体質は、どこまで行っても「権力闘争に打ち勝つことが目的」で、これは毛沢東時代から変わっていないと思います。
したがって権力闘争が今のように経済発展とリンクしてうまく回っていれば何ら問題は起きませんが、この10年で必ず起きる生産年齢人口減少加速化と日本を超える少子高齢化による経済低迷が長期化した場合、最悪のシナリオは中共内の権力闘争が再燃して国家が混乱してしまうこと。
一方で最善のシナリオは経済低迷長期化に危機感を感じて現状変更行動を停止し、自由主義体制に歩み寄って再び認められること。しかし一度信用を失った状態からの取り組みですから、よほどの歩み寄り(若干の民主化の推進や少数民族自治権拡大など)がないと難しいのではと思います。
第三の道は、自由主義社会から仲間外れにされたまま、依然巨大な国内市場と一部発展途上国(カンボジアや一部アフリカ諸国など)だけで低迷した経済を回していくことですが、これも可能性としては大いにあります。そうなったときはまた新たな安全保障上の問題が起きるかも知れません。
以下書籍も参考
*写真:2008年上海の有名生煎包店(まだあるのでしょうか?)