「情動伝染」相手と同じ行動が共感を生む
私の敬愛する動物学者フランス・ドゥ・ヴァールの最新刊(2020年10月出版)通読中。動物も人間も同じ情動=エモーションを持っているという本書の中で「情動伝染」という興味深い知見がありました。
情動伝染とは、私が感じている今の情動は、周りの人にも同じ情動を喚起してしまうという現象。これは動物の世界も同じ。
生物学的には、この現象は、およそ25年前に発見されたミラーニューロンの引き起こす現象として解明済み。
ミラーニューロンは人間はもちろん哺乳動物にもセットされているので、猿の赤ちゃんがお母さんの真似をする、お母さんが真似をされて喜ぶ、などの行動も引き起こします。
例えば、
お気に入りの相手とのデートに誘うことに成功したら、相手の動きを残らず真似てみましょう。
とある実験で相手がグラスに手を取ったら自分もグラスを手に取る。相手がテーブルに肘をついたら、肘をついてみる。逆に全く相手の行動とは違う態度で振る舞う。すると真似する方の相手をはるかに好むことをデートの相手が報告したという結果に。
人は行動を真似されることによってミラーニューロンが活性化され、真似した相手により好意を持つようになる傾向にあります。
逆もまた然り。
周りにマイナスイオンをやたら発している同僚がいると、周りの人は一気にストレスを感じてしまう。情動は伝染するので、ネガティブな形でミラーニューロンが活性化されてしまうのです。
上記記事によれば、ストレスを感じている人を見ただけで自身のストレスホルモンが分泌されてしまうらしい。なのでマイナスイオンが充満した職場にはできるだけいない方がいい。在宅勤務か取引先への外出か、あるいは会議か。。。
私も勤務時代に、(私含め)部下をやたらめったら怒る厳しい上司の下で働いていた時、ストレス耐性の弱い(と人事から言われたらしい)後輩が異動してきて、この人だけは怒らないよう上司も気をつけていたのですが、そして上司は、実際彼女には一度も怒らなかったのですが、彼女だけがメンタルやられてしまうという結果に。
これも「彼女のミラーニューロンが活性化したのに違いない」と今ではわかります。
以上、情動伝染を知っておくと日常生活の中でいろいろ役に立ちそうです。
*写真:伊豆 湯ヶ島(2021年撮影)