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経済的付加価値の本質とは

最近、第一生命経済研究所所属のエコノミスト長濱利廣さんの講義を某大学で聴講しています。

彼の著作を読んで、非常に共感したし興味深かったので、ご本人に直接会って自分が疑問に思っていることを質問したかったからです。

実際の講義内容は「データに基づいてより正確に経済の状況を判断しましょう」というような趣旨の講義で、聴講していても実にわかりやすく、質問すると即時回答してくれる実に頭脳明晰な先生です。

静岡県伊東市(2023年6月撮影。以下同様)

▪️(経済的)付加価値とは?

そして長濱先生のお知恵も伺いつつ、最近思うのが「(経済的)付加価値とは一体なんぞや」ということです。

付加価値とは私たちにって「必要な」あらゆる「モノコト」です。「必要」に加えて「欲しい」も付加価値に加えていいかもしれません。

付加価値は、原始的には「食べるもの」「着るもの」「住む場所」になります。

自分を振り返って考えてみれば、私たちはこの1ヶ月間、何にお金を使ったでしょう。この「何に」が私達にとっての「付加価値」です。

*食費、スマホ通信代、家賃、電車賃、ガソリン代、飲み会代、プレゼント代、ジム会費、学費

などなどです。

▪️個人の付加価値

例えばロビンソン・クルーソーのように無人島に漂着してしまった場合をイメージします。

私たちは生きていくために必要なものを働いて生産し、そのまま自分で消費すれば、労働によって生み出された付加価値は「すべて自分で消費した」ということになります。

一方で、生産して自分が使い切れない付加価値、繰り返し使える付加価値は、資産として蓄えられます。

それはお米などの穀物であったり、服であったり、住居であったり、釣り道具であったり農具であったり。

そして視点を変えれば、より効率的に付加価値を生み出すアイデア=コト(農法・猟法など)も、一度考えだせば、何度でも使えるので、資産といえます。今風にいうと知的財産です。

→働く(労働)
→使う(消費)
→余ったものは蓄える=在庫(資産)
→繰り返し使えるものも蓄える=インフラ(資産)
→繰り返し使えるアイデアも蓄える=知的財産(資産)

ここで気づくのが、付加価値は何によって生み出されるのかというと、

付加価値は「労働」と「資産」から生み出される

ということです。

労働して付加価値を生み出すこともできれば、これまでため込んだ在庫をそのまま使うこともできるし、既存のインフラやこれまでに発明したアイデアを活用して付加価値を生み出すこともできます。

例えば私の場合は無職ですから、労働によって付加価値が生まれることはありません。これまで蓄えた資産から生み出される付加価値を使って生きています。

資産を目減りさせてただ消費しているわけではなく、資産から生み出される付加価値(=利息+配当金+資産売却益)を活用して生きているわけです。

ちなみにフランスの経済学者トマ・ピケティの著作『21世紀の資本』は、労働+資産から生み出される付加価値増加率(経済成長率)よりも資産だけによって生み出される付加価値増加率(資本収益率)の方が高い、という説を発見したことでベストセラーとなりました。

つまり労働よりも資産から生み出される付加価値の方が効率がいいのです。以下図式が有名です。

    R(資本収益率)>G(経済成長率)

なので、いかに資産をつくって増やしていくか、つまり不労所得が、働くことよりも重要だということです。

神奈川県小田原市:江の浦測候所

▪️日本の付加価値

現代世界は、近代国家の集合体です。一つの国家ごとに経済主体が存在しています。そして国家内の経済主体は、個人(家計)と法人と政府の三つに分けられます。

世界=国家+国家+・・・・・・
国家=個人+法人+政府

世界の付加価値は、国家の付加価値の合計
国家の付加価値は、個人と法人と政府の合計

付加価値が増えると経済は成長します。

IMFの計算では、今年の世界の経済成長率は、2.8%と予測されていますから「今年生み出される付加価値は昨年より2.8%多いだろう」ということになります。

これらは毎年生み出される付加価値で、労働から生み出された付加価値もあれば、資産から生み出された付加価値もあります(内訳は?)。

日本の場合、労働と資産によって生み出される1年間の付加価値、つまりGDPは585兆円です(2022年名目)。

資産に関しては、金融資産は4000兆円規模。

個人:+1600兆円(=資産2000兆円ー負債 400兆円)
法人: △500兆円 (=資産1300兆円ー負債1800兆円)
政府: △700兆円 (=資産 700兆円ー負債1400兆円)
計 : 400兆円 (=資産4000兆円ー負債3600兆円)
                (差し引き資産の余剰400兆円は対外純資産)

日本銀行調査統計局

このほか、国内には公共施設やインフラなどの付加価値(非金融資産)もあって、これは3400兆円ぐらいありますから、毎年生み出される付加価値は、私たちの労働のほかに4000兆円規模の金融資産と3400兆円規模の非金融資産、計7400兆円の資産によっても生み出されているはずです。

ただ日本は、30年間十分に経済成長できなかったわけですから、資産を効率的に活用していないし(資産効率)、労働力も効率的に活用されていなかったのかもしれません(労働生産性)。

今後日本が付加価値をさらに増大していくためには、特にエリート層の雇用流動性を高めて私たちの労働生産性をあげるのはもちろん、7400兆円の資産をもっと有効に使う必要も、労働以上にあるかもしれません。

したがって特に公的債務1400兆円は、もっと付加価値を生み出せるものに注ぎ込むべきでは、と思うのですがどうなんでしょうか?

*事例
通信インフラ、交通インフラ、デジタルインフラ、グリーンインフラ、人的資本投資などなど

これだけ資産がある国も珍しいはずなので、ピケティの理論に基けば、資産豊富な日本にとって付加価値創造=経済成長は、もっと期待できるはずなんですが、よっぽど効率が悪い国家、ということでしょうが、経済学者バナジーによれば、日本の失われた30年はソローモデルで説明できる、ということですから、人口減少技術開発力の低迷が原因ということかもしれません。


*写真:水戸光圀公の隠居場所:茨城県常陸太田市「西山荘」
                      (2023年5月撮影)

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