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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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2023年5月の記事一覧

『地方暮らしの幸福と若者』轡田竜蔵著 書評

<概要>三大都市圏(人口比45%)以外に住む20−30代の若者の実態を、地方中枢拠点都市圏(人口20万人以上の地方都市圏→広島県府中町をサンプル:人口比34%)と条件不利地域圏(田舎→広島県三次市をサンプル:人口比21%)に区分し、彼らの幸福感やライフスタイルなどを定量的・かつ定性的に詳細調査・分析した著作。 <コメント>三浦展編著『再考 ファスト風土化する日本』の中で、個人的に最も共鳴した著者、同志社大学の社会学者轡田竜蔵著の『地方暮らしの幸福と若者』(2017年出版)

『再考 ファスト風土化する日本』三浦展著 読了

<概要>戦後のアメリカ的な近代化(モダン化)の一環として地方で消費環境が均一化したことを「ファスト風土化」と称した一方、コミュニタリアニズムをベースにしたポストモダン的な多様性が都市を中心に芽生えていることを紹介しつつ、ファスト風土の次の消費環境の可能性を紹介した著作。 <コメント>過去に大阪都構想は、 都構想を推進する「啓蒙主義者」と、都構想を阻止しようとする「コミュニタリアン」の戦い と紹介しましたが、 啓蒙主義(=近代化)の地方における類型が、著者の問題視する「

「三重県の風土」庶民にとっての伊勢神宮

伊勢参宮に関して、そもそも伊勢神宮は天皇家の祖先神「天照大神」でありながら、天皇家が当地で直接参詣したのは明治天皇がはじめて。 明治時代に神道が国教化して以降、今に至るまで、皇族や総理大臣などの国のトップたちが、あたかも国家の守護神であるかのようにたびたび伊勢神宮を参拝していますが、五世紀に鎮座して以降、江戸時代までの伊勢神宮は、そのような性格の存在ではありませんでした。 むしろ天皇家や公家・武家などの支配階級よりも、被支配階級としての庶民・農民達の信仰を裏付けにした参拝

「三重県の風土」三井財閥を生んだ伊勢商人の特殊性

伊勢商人は、大阪商人・近江商人と並ぶ日本の三大商人で、最も有名なのは三井財閥(旧越後屋)ですが、伊勢(三重県北中部)は、そのまま当地で暮らしていても何不自由ない豊かな土地だったのに、なぜ商業が発達したのでしょう。 ⒈伊勢商人の特殊性一般に商売が得意なのは、世界を見渡せば土地を持てないユダヤ人や同じ流浪の民の中国の客家(ハッカ)、土地が痩せていて農業できない中国の福建人(=華僑の主な出身地)、土地がほとんどない干潟に住んでいたベネチア人のように当地に居続けてもメシが食っていけ