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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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2022年7月の記事一覧

遠洋航海がもたらしたハワイ人の巨体

以前から不思議に思っていたのですが、なぜ先住民としてのハワイ人は、身体が大きい人が多いのか? これはトンガ人やフィジー人などの他のポリネシア人も同じです。ハワイ人には小錦や曙、武蔵丸はじめ身体の大きさを武器にした力士がいましたし、ラグビーの世界でもフィジーやトンガ、サモアなど身体の大きなポリネシアンたちが活躍しています。 一般的に動物学の世界では「バーグマンの法則」というものがあって、これは我々ホモ・サピエンスにも当てはまります。バーグマンの法則とは、 現代の日本人でも

「ハワイイ紀行」池澤夏樹著 書評

<概要>「ハワイ」を「ハワイイ」と先住民本来の呼び方でタイトルとしている。ハワイイの歴史、気候、動植物、地形、活火山、先住民の文化様式(言語、フラ、レイなど)、サーフィン・ウインドサーフィンの伝説、などなど、観光としてのハワイ以外のあらゆるハワイイに関する内容を網羅的に紹介した紀行文。 <コメント>9年前の初ハワイイの時に読んだ書籍ですが、今回改めて再読してみました。それにしても圧倒的な(観光以外の)ハワイイに関する情報量で、いまだその内容は色褪せていないと思います。 前

ハワイの風土:なぜハワイは心地よいのか

ハワイのこの快適さは一体、何なんだろう。そしてハワイ中毒が生まれる。 今回2度目のハワイで感じたのは、日本で我々が体感しているモンスーン(季節風)とは異なる、通年で同じ方向に吹き続ける「北東貿易風」の存在、そして火山です。 赤道付近で暖められた空気は上昇気流に乗り、北緯30度付近で下降して高気圧を生み乾燥した砂漠地帯(亜熱帯高圧帯という)を生みます。その空気はそのまま南下し、たっぷり水蒸気を吸収しつつ地球の自転の力(コリオリの力という)によって北東から南西へと流れる「北東

「ハワイの歴史と文化」矢口裕人著 書評

<概要>ハワイの歴史と文化について、先住民・移民・戦争・観光をキーワードに日本人&日本移民&日系人の歴史を主語に紹介した新書。 <コメント>世界的なパンデミックも落ち着きつつある状況下、3年ぶりの海外旅行に、まずはお手軽なハワイを選択。 ハワイはお手軽といっても生物学・歴史学・地理学など、あらゆる学問において特質すべきことが多い注目のエリア。 今回は9年前の初ハワイの時に読んだ本書。改めて再読 ヒルトン・ハワイアンビレッジよりホノルルの街並 タイトルは「ハワイの歴史

和歌山県の風土:「小栗判官」

ちょうど今、東銀座の歌舞伎座で、通し狂言「當世流小栗判官」を上演しているので、さっそく観劇してきました。 「小栗判官」とその思われ人「照手姫」の物語は、今日の演目を語るとそれだけで多くの字数を費やすので、熊野詣でに関するところだけを端折って紹介すると、 とまだ物語は続くのですが、この祟りによって失った膝下と顔の崩れが、ハンセン病をイメージしているのです。いわば小栗判官はハンセン病患者の代表格。 「信不信をえらばず、浄不浄をきらはず」という、熊野信仰の時宗化(鎌倉時代末期

和歌山県の風土:鈴木さんのふるさと

日本全国で2番目に多い日本の名字「鈴木」さん(1位は佐藤)で、推定138万人で人口の1.44%(明治安田生命調査2018年推定他)だから日本人の100人に1人は鈴木さん。 ■発祥の地は「熊野」その鈴木さんのふるさとは熊野で、海民ともいえる鈴木さんは、紀州を起点に黒潮に乗って日本全国に散らばったためか、特に東日本に多く、日本で2番目に多い名前となって普及。 アースダイバー(中沢新一著)によれば、港区芝に関して以下のように紹介し、東京(江戸)は古代より熊野からやってきた鈴木さ

日本の名字とは?「名字の歴史学」奥富敬之著 私評

<概要>日本人の苗字(名字)は、どのような変遷を辿って今に至るのか?そもそも姓名・氏名・実名の違いとは、を紹介した書。 <コメント>そもそも苗字(名字)とは何なのか?選択的夫婦別姓なども政治課題になっていますが、本書を読むと名字に関する今まで疑問に思っていたことが、そこそこ明確になって大変興味深く読了。 (江戸時代以降は「苗字」。江戸時代以前は「名字」) ■江戸時代も庶民は苗字を持っていた選択的夫婦別姓を賛成する人たちが、よくその理由として言われる、 「日本では、苗字は