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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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2022年2月の記事一覧

「廃仏毀釈」という松本藩主の忖度(改訂版)

本書によれば、松本市は、鹿児島や高知、水戸などと並んで、激烈な廃仏毀釈運動が展開された地域。 その要因は、もともと徳川家一族だった松本藩最後の藩主、松平(のちに戸田)光則の、お家存続をかけた必死の維新政府への忖度がもたらしたもの。そのおかげかどうかはわかりませんが、戸田光則は、維新政府から初代松本藩の知藩事に任命されます。 松本の廃仏毀釈の激烈さは過去に紹介した、破却率100%の鹿児島にはさすがに及びません。 しかしながら、松平戸田家の菩提寺だった全久院はじめ、164あ

「反穀物の人類史」国家を持たない人びと

「反穀物の人類史」からの知見。最後にして、やっと本題登場です。 ■人類史の大半は、国家を持たない人々の世界著者のいう通り、我々はどうしても「国家の攻防」といった政治権力の栄枯盛衰を歴史として勉強するので、あたかも国家が昔からこの世界中を支配していて、辺境に一部国家に属さない人々がいたように感じてしまいますが、1600年代(江戸時代初期)までは世界的には国家を持たない人が大半だったといいます。以下、国家を持たない人びとの世界の構成比。 こんな感じです。 *国家を持たない人

「反穀物の人類史」穀物によって人間を家畜化した国家

⒈穀物の人類史今回は「人間の家畜化」のもう一つのパターン 原初国家における、人間(支配者)による人間(被支配者)の家畜化 について。 本書タイトル「反穀物の人類史」とは、我々が普段慣れ親しんでいる国家を主体にした歴史を「穀物の人類史」とし、その裏には「反穀物の人類史」があった、という意味。本書タイトルの「反穀物の人類史」に関しては、また別途展開するとして、今回は「穀物の人類史」の方を紹介。 国家誕生には穀物がキーになったといいます。穀物によって人間(支配者)が人間(

「反穀物の人類史」なぜ国家は生まれたのか?

■前回(文明誕生の新説)のおさらい狩猟採集による定住生活は、肥沃な三日月地帯で誕生以降4000年の間に、ほんのわずかな人口圧によって徐々に食糧は不足し、致し方なく重労働を伴う、食糧獲得のオプションの一つに過ぎなかった「飼い馴らし(農耕&牧畜)」を拡大させます。その間、さらに4000年間、飼い馴らしが浸透することによって定住社会(ドムス)の家畜化が進展します(家畜化も非常に興味深い視点なので詳細は別途展開予定)。 そして初期国家が誕生するのですが、なぜ初期国家は誕生したのでし

「反穀物の人類史」 文明誕生の新説

<概要>初期国家発生の要因とその目的に加え、AD1600年代までのメジャーな存在だった「不在のリヴァイアサン」(=遊牧国家含めた無国家民)と国家の並行進化について紹介するなど、定説をことごとく覆す、驚きの書籍(2019年12月出版)。 <コメント>2年前に出版されて話題になっていた本書、やっと通読。歴史を地球科学的・考古学的・生物学的・人類学的視点(=ディープヒストリー)から組み直すことで、新説を大量生産。いっぺんに全部紹介すると大変なことになるので、分割して展開したいと思