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日本とは何か?

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日本列島における人間の営みについて思想を軸にした書評中心のライティング。
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#小熊英二

日本社会のしくみ 小熊英二著 日本編 書評

<概要:日本編>  *先進国編は別途展開予定 日本社会のしくみは、雇用環境に大きく影響されるとして「大企業型(カイシャ)」「地元型(ムラ)」「残余型(カイシャ・ムラ以外)」の3類型に整理し「大企業型は維持され、地元型が減少して残余型が増加した」のが今の日本社会のしくみだと解説した著作。 <コメント> 社会学の目的は、一つの社会が共有している暗黙のルール(著者曰く「慣習の束=しくみ」)の解明にあるということは、私が興味を持つ社会の虚構(共同体で共有する価値観)とほぼ同じ概念

「日本社会のしくみ」先進国&方向性編

<概要> 本書では、特に雇用に関して先進国比較も行っていて、著者は国別に分けるのではなく3つの社会的機能の濃淡によって先進国別の状況を分析。 3つの社会的機能の 第1は「企業のメンバーシップ型」で、主に日本の大企業のパターン。特に日本では維新政府がトップダウン型で取り入れた軍隊や官僚の制度が民間に波及したものであるとしました。ドイツでも一部企業で該当するようですが、ほとんど日本固有ではないでしょうか。 第2は「職種のメンバーシップ型」で、企業や地域をまたいだ職種単位の

単一民族神話の起源 小熊英二著 書評

<概要> 日本民族論に関して、戦後は植民地を失うことによって初めて単一民族神話が広まり、明治時代以降から戦前までは海外への進出への大義名分として混合民族神話が主流であったということを様々な一次資料を駆使して証明した現代の古典。 <コメント> 著者小熊さんの「日本社会のしくみ」を読んで以来、小熊さんのその徹底した資料収集と解読にもとづく分析力に驚嘆しておりますが、本書はその威力をいかんなく発揮している作品で、現代の古典と本書の「オビ」にある通り、現代の古典たる圧倒的読後感です

大東亜共栄圏と混合民族論「単一民族神話の起源」より

引き続き本書より。 あまり関心はなかったのですが、本書の戦前の民族論考察で「大東亜共栄圏」だとか「世界は一家、人類は皆兄弟」という戦前の思想がやっと理解できました。 結局、アイヌや琉球人はもちろん朝鮮人や台湾人などの植民地現地人を同化(日本名への変更、日本人との結婚奨励=混血、日本語教育、居住地の相互引越しなど)してアジア人の混血の象徴たる天皇のもとの臣民として他民族を抹消し、ヤマト民族として統合することだったのです。 その根拠としてヤマト民族は、そもそも北方民族や朝鮮

「シン・ニホン」安宅和人著 書評

<概要>ICT分野やエリート教育の手法など、日本もアメリカの良いところを学べば、失われた30年もきっと克服し、再び成長できると提言した著作。 <コメント>昨年(2021年)の読者が選ぶビジネス書のナンバーワンという著作で、昨年本屋に山積みされていたので、私も興味津々で遅ればせならが読んでみました。 コンサルタント出身の方らしく、分厚い書籍ではあるものの(私は電子書籍ですが)、内容が綺麗に整理されていてとてもわかりやすく、一気に読むことができました。 現実的かつ前向きな内