マガジンのカバー画像

日本とは何か?

73
日本列島における人間の営みについて思想を軸にした書評中心のライティング。
運営しているクリエイター

#方言学

瀬戸内の人が運んだ甲府の方言

もともと日本は明治時代以降、昭和にかけ近代国家構築の一環として、東京山の手の言葉を基準に「話し言葉」が整備され、学校教育→ラジオ→テレビの普及に合わせて、順を追うように話し言葉の標準化が浸透。 それまでは地域ごとに個別の方言が利用されており、話し言葉の標準化=標準語が普及するまでは、方言が違えば意思疎通できなかったわけです。 私自身(千葉県出身・在住)、20年以上前に熊本や秋田に行った時、道をお伺いして地元の方の話し言葉が全く理解できなかったことがノーマルだったので、まし

尊敬語の使い方でわかる日本の社会制度

尊敬語は敬意を表するだけでなく「よそよそしさの表現」として使われるとの理由から、社会制度によって尊敬語の使用方法が違うという仮説です。つまり尊敬語は「ウチ」と「ソト」を区別するための言語ツールなので、その使用方法をみれば社会制度がわかるというのです。 今回は、大人(20歳未満の子供ではない)が自分の父親に対して、尊敬語を使うかどうかで判別。日本全国地図でプロットすると主に父親に尊敬語を使うのは西日本。使わないのが東日本に多い。西日本の社会制度は「年齢階梯性社会」だから父親に

「ことばの地理学」大西拓一郎著 書評

<概要> 方言で使われる言葉を日本地図にプロットしたら、どんな傾向が方言にはあるのか?あるとしたら、その要因は何か?を探った方言学に関する書籍 <コメント> 既に甲府の方言や 方言にまつわる社会制度の関して 紹介しましたが、改めてここで書評。全般的に了解したのは、日本地図への方言のプロットは進んでいるものの、その法則性と要因に関する体系的な仮説は未だ生まれていないということ。 上記で紹介した内容含め、 ■静岡県で使用される「ズラ」は、この地方に伝わる古い東国の方言が