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日本とは何か?

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日本列島における人間の営みについて思想を軸にした書評中心のライティング。
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#天皇

『昭和23年 冬の暗号』猪瀬直樹著 読了

<概要>5月3日憲法記念日=東京裁判開廷日、4月29日昭和天皇誕生日=東京裁判起訴日、12月23日平成天皇誕生日=東條英機処刑日など、日本人に敗戦の記憶を呼び起こす日を刻印した、というアメリカ日本戦後処理のプロセスを克明に記録した著作。 <コメント>一応小説仕立てにしてありますが、ほぼノンフィクションといってもいいと思います。著者の『昭和16年夏の敗戦』が太平洋戦争に至るプロセスを描いたとすれば、 本書『昭和23年 冬の暗号』は、太平洋戦争を終結→処理に至るプロセスを描

単一民族神話の起源 小熊英二著 書評

<概要> 日本民族論に関して、戦後は植民地を失うことによって初めて単一民族神話が広まり、明治時代以降から戦前までは海外への進出への大義名分として混合民族神話が主流であったということを様々な一次資料を駆使して証明した現代の古典。 <コメント> 著者小熊さんの「日本社会のしくみ」を読んで以来、小熊さんのその徹底した資料収集と解読にもとづく分析力に驚嘆しておりますが、本書はその威力をいかんなく発揮している作品で、現代の古典と本書の「オビ」にある通り、現代の古典たる圧倒的読後感です

大東亜共栄圏と混合民族論「単一民族神話の起源」より

引き続き本書より。 あまり関心はなかったのですが、本書の戦前の民族論考察で「大東亜共栄圏」だとか「世界は一家、人類は皆兄弟」という戦前の思想がやっと理解できました。 結局、アイヌや琉球人はもちろん朝鮮人や台湾人などの植民地現地人を同化(日本名への変更、日本人との結婚奨励=混血、日本語教育、居住地の相互引越しなど)してアジア人の混血の象徴たる天皇のもとの臣民として他民族を抹消し、ヤマト民族として統合することだったのです。 その根拠としてヤマト民族は、そもそも北方民族や朝鮮

熱心な仏教徒だった天皇家の神仏分離

天皇家=ヤマト政権は、もともと仏教を列島に取り入れた張本人であり、以来明治政府が神道国教化するまで、6世紀以来1,300年間、ずっと熱心な仏教徒でした。 これも日本史を紐解けば、当たり前と言えば当たり前のことですね。ところが明治時代以降、神仏分離によって天皇家自身が神格化され、現人神に変身してのち敗戦→「神から人へ」という流れ。 ■菩提寺は、泉涌寺それでは仏教徒時代の天皇はどうだったかというと、非常に熱心な仏教徒だったのです。菩提寺は、今でも御寺(みてら)と呼ばれている「