居酒屋メニューの難読漢字
先日立ち寄った居酒屋の飲み物メニューで、「麦酒」(ビール)とあった。
客層がそういう表記を望んでいるような店でもなかった。例えば産地が全国にわたる日本酒の銘柄で読めない名称があるのは仕方がない。
フランス料理(だけではないかもしれないが)によくある「~の~風~、~を添えて」はどうも馴染まないが、食文化とはそういうものかもしれない。
翻って大衆酒場の肴はわかりやすい。どこでもあるようなメニューがあると安心するが、やはりその店のイチオシを知りたいと思う。
会社帰りに月二回くらい立ち寄る店の肴はそれほど目新しいものがあるわけではない。だがある時メニューに小さく「自家製」とついているものがあるのに気付いた。そこでさっそく、お世辞にも愛想がいいとは言えない店員に聞いてみると、春巻きもシュウマイも休み(日曜)に作って月曜に備えるのだという。そう聞けば発注せざるを得ない。イマドキの冷凍食品はうまいが、そんな事前仕込みのハナシを聞けば冷凍に勝ち目はない。月曜いっぱい、残っていても火曜には「自家製」は完売する。
居酒屋では、季節の魚があればそれも必須だ。
魚の名前も鮪、鰯、鯛、鮭、鯵、鮎、鯖、秋刀魚、鯨、鮑くらいは馴染みがある(発注しないものもある)が、鰆(さわら)、鰤(ぶり)鰊(にしん)あたりはどうだろう。もっとも、店もオーダーしてもらえないと困るので平仮名や片仮名表記が多い。
先週末、門前仲町にある煮込みの店で一杯やっていると、若い男女が入ってきた。職場の先輩後輩のようだ。
男:「いやー、(店に)入れたね」(注:人気店かつ席数が極めて少ない)と彼女に話す。
店:「飲み物はどうされます?」
男:「えーっと、ダイビンで」
店:「おおびんですね」
男」「ええダイビンで」
それはもちろん、ビールの大瓶のことだった。ずっと「おおびん」一辺倒できた自分にとってはかなり新鮮だった。でも生ビールを「大(だい)生」とも言うしな。
かくいう自分も、佐賀の日本酒「天吹」(あまぶき)を、「てんぶきお願いします~」と大声で発注したのだった。