カセットテープ コンプリートブック
図書館へ行って、予約しておいた本を受け取った。開館直後のため閲覧室には人影まばら、新聞目当ての人たちはしっかり陣取っている。本をかばんにしまい込み帰ろうと思ったが、少し書棚の間を見て回った。「今日返却された本・借りられます」「今月の新刊」など利用を促す工夫がされているがたいがいは素通りする。
だが雑誌サイズの書籍に目が留まった。
「カセットテープ コンプリートブック」というタイトルで、ステレオ時代という雑誌の特別編集とある。発行は平成29年12月14日なので古くはない。カセットについての雑誌なのに新しい本だということが、視覚的にも訴えるものがあった。本の背にはタイトルに加え、
「あのころのカセットの全てがわかる一冊」
とある。かなりの入魂だ。そして、
「僕らの青春はカセットテープとともにあった!」とも。
音楽好きならお気に入りのレコードを買い、曲の長さを計算しながらテープを選んだりしたはずだ。ラジオ番組を録音したりもした。またドライブを想定し、風景や時刻も考えに考えてオムニバスを作ったりもした。
本によれば、1964年フィリップ社が発表した「コンパクトカセット」がその始まりらしい。音声メモ的な用途だったものを音楽再生用途に進化させたのが日本の電機メーカーとテープメーカーの努力だったと書いてある。
偉い!そういう努力。1993年以降はミニディスクにとって代わられていく。
とにかく年代ごとのカセット写真にいちいち頷く。TDK、マクセル、ソニー、デンオン、BASFなんてのもあった。雑誌の後半には歴代ウォークマンがびっしり並んでいる。
そういえば、1990年、北京で飾りっ気のない「SONY」のテープを買って、北京語言学院(現:北京語言大学)での授業を録音し復習などしていた。ずいぶんと安値だったが音声メモ用途としては十分役割を果たした。テープのことを、中国語では「磁带」と呼ぶが、磁気を帯びたテープだから「磁带」。まあ納得だ。
カセットを駆逐したミニディスクは短命に終わり、音質は半永久的と言われたCD(コンパクトディスク)ももはやその役割はほぼ終えている。多少の懐古趣味などで一時的に盛り上がることはあっても、「あの頃」には戻らない。