書店で早歩きしているやつがいたら大抵トイレを目指している

書店や図書館など、本が密集している場所で便意を感じることが多々あるが、この現象には「青木まりこ現象」と名前がついている。私がうまれてまもなくの1985年、『本の雑誌』の読者欄に、青木まりこという人が「2、3年前から書店に行くたびに便意を催すようになった」という趣旨の投稿をしたことで他の読者の共感を生んだ。「自分も同じだ!」といった投稿が多数寄せられそうだ。この「書店でトイレに行きたくなる現象」の原因としては、次のような説が考えられている。
・本のインクに含まれる化学物質が脳に作用する
・トイレのない本屋さんや、トイレの少ない本屋さんで、「トイレに行きたくなったらどうしよう…」というプレッシャーと「読書でリラックスして排便する体験」が合わさって、条件反射的に便意をもよおす
・紙やインクの臭いが便意を誘う
・狭い空間に動かず立っていることが便意を誘発する
・たくさんの本に圧倒されることで緊張感が高まり、腸の働きに影響を及ぼす

これを本気で研究している研究者もいるらしい。いろんな原因があるのだろう。これが原因です!と言い切れないことばかりだ。あれもこれも一応因果関係というか、相関関係があるねと言えたり言えなかったりするのだろう。研究とはそんなものだ。新しい発見があれば教えてください。

本題(タイトル)の話をしよう。書店では皆あてもなく彷徨うもので、何か目的の本があってそこに向かって一直線に歩いていくような人は一人もいない。いたとしても他の本も気になるのでチラチラ横目にみながら時には立ち止まったり寄り道したり、とにかくゆっくり歩く。途中で気になるカバーを見つけたら手に取らずにはいられない。一直線に前を見て、早歩きで歩く人はいない、一人の例外を除いて。それはトイレを目指している人だ。一直線に早歩きでトイレを目指す。彼の頭の中ではトイレ内の個室のイメージが鮮明に浮かんでいる。個室は2個。2個とも使用中ということはまずないが、もしかしたらと最悪なパターンの想定も怠らない。期待しすぎてはいけない。期待が大きすぎると落胆と一緒に放出してしまいかねない。放出してしまったら落胆どころの騒ぎではない。早歩きだが重心は動かさず、動く歩道のパントマイムかのごとく、歩いているのに頭の位置が変わらない。書店でパントマイムをしている人がいたらトイレを目指していると思っていい。絶対に話しかけてはいけない。

青木まりこ同様、この現象にも読者からの共感がやまない可能性がある。「書店で早歩きしている人を見かけたらそいつはトイレを目指している」現象には、私の名前をつけておいてください。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。便秘の患者に書店を勧めるのも社会的処方としてありかもね。

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