色々あったこの夏の引っ越しの話を聞いてくれ
この夏、とうとう引っ越したんすよ。
上階の住人が騒がしく冷蔵庫が水の都ヴェネツィアのごとく豊かに壊れていて
電気が点かない最高にクールな家から引っ越しました。
引っ越し以前から完全にイヤホンのプニプニがどっかに行ってたんですが
一個は冷蔵庫とレンジの間から、もう一個はテレビの裏から出てきました。
別に暇さえあれば虚空を見つめて部屋でプニプニを投げ飛ばして遊んでたとかじゃないんすけど、不思議なもんですね。
だいぶ前から壊れて水が漏れ散らかる冷蔵庫は捨てました。
なんか冷やしっぱなしにしてた千円札ごと誤って捨てた。
あと多分ブーメラン状にしたTバックも凍りっぱなしだったと思うんすけど大丈夫だったんでしょうか。
水漏れしてた冷蔵庫をどかしたら、床が腐海の森になっているのではないかとビビってましたが綺麗なもんでした。
案外それはそれで寂しいもんです。生活の痕跡全然残ってないな、つうのが。まあ爪痕残して得るもんなんて原状回復費の請求書以外無いんすけど。
で引っ越しつったら当然引っ越し業者のあんちゃんが来るわけなんすけど
いや元気すぎる。
こちとら既に元気が一ミリもないわけですわ。
引っ越しの準備つうの、普通は少しずつやってくもんだと思うんすけど
引っ越し自体が普通に嫌すぎて当日の朝5時に起きてから16時まで荷造りしてました。
この時点で若いあんちゃんとのテンションの差がえげつないわけです。
君と夏の終わり、巨大な肉刺(マメ)、大きな荷物もう運べない。ってこっちは最高の思い出と共に何もかも10年後に任せ思考放棄しようとしてんすよ。
しかしながらまあ、業者さんがいかに気持ち良く作業をするかに懸かってるわけです引っ越しってやつは。
元気の良いあんちゃん2名、片方は先輩、もう片方は入って3日のルーキーつうことで。
どうやらうちの引っ越し日が2人で初めて組んだ日だったらしく
もう先輩の方が張り切っちゃって張り切っちゃってね。
この冷蔵庫、お前は一人で運べるか〜ワハハなんつって。
そういうくだりをね、本当に10回くらいやる。
天丼大好きな地域性だもんでね。
ワハハ〜つって毎度ね、こっちも、
もう別に落としても何してもいいっすよワハハ〜つって。途中ではらいせに荷物蹴ってもらってOKです〜なんつって、いやいや〜ワハハつって。
もう運搬を頼んでいるのか破壊を頼んでるのかわからなかったが
なんでもいいからもうはよ終わらしてくれつって。
はよ引っ越しにとどめを刺してくれって。
やんややんやと引っ越してたら
今まで一回も見た事なかった隣人がガチャァッ!!!っつって出てきて
オイオイここに来てはじめましての人間と最初で最後のバトルが始まるんか!?謝るから勘弁してくれ!と思ったら
「スミマセン〜シタノカギドウヤッテアケル?」
オートロックの解除!?今!?引っ越しの日に!?
つうわけでご案内しまして。
まあ言われてみれば確かにドアホン的なやつって
英語書いてなくて漢字で「解錠」とかになってるから非漢字圏の方はわかんねえんだって初めて気づきました。
ていうか今海外の人が住んでたんだな、隣。
最終日にして知らないことがまだまだあるらしい。
ようやく新居に荷物を運び込んだ後、
じゃあ僕らこれで引き上げますんでェ!つってね
引っ越し屋のあんちゃんが言うわけですわ。
いや〜どうもどうもご苦労様でしたつって。
最後にトラックの中に忘れ物が無いかだけ一緒に見てほしいつってね。
わかりました〜つって先輩の方についてくわけっすわ。
道中でね「引っ越し屋っつうのは、まあヘヘッ、意地なんで!」つって引っ越し屋の魂について語ってくれるわけです。
まあ別に聞いとらんがそりゃあ素直にすごいよ、
若いのに仕事にそれだけ愛着と誇りもってるあんちゃんはすげえ。
社会に出てきて結構経つが仕事に誇りを持った瞬間一瞬も無ぇもの、こちとら。
やらなくていいなら辞める事第一位、仕事ですんでね。
だからこっちも大層感心するわけですわな。
「ハッハ〜ン」つって
中森明菜じゃねえんだよ。
もう精も根もテンションも尽き果ててんすわこっちも。
返事も声もスカスカだよ。
終わった感満載の清々しいあんちゃん目の前にして、こちとら今から荷解きだからね。
ほんでトラックの前まで着いていったらあるわけですわ、
水が漏れちらからる冷蔵庫が。うちの元ヴェネツィアが。
「よし!じゃあ最後にこれ、一人で運べるかやってもらおうか!」
つって。
いやもう、もういいよ!!!
もう冷蔵庫のくだりは十分だよもう内心キンッキンに冷えてるよ!!!!!
とか言えるわけもなくね。冷蔵庫はあんなに水を漏らしていたのに大人は余計なこと漏らしちゃいけねえんだから世知辛いよ。
こっちも「おおっ!最後は一体どうなるんすかねえ!」なんつってね。
腕組んでニコニコ〜つって「ホッホ〜ン」つって見守るわけですわ。
冷たくもなんでも無い真夏の道路の真ん中で。
心の中森明菜もね、もう全然興味なさそうでしたよ。
気持ちは笑ってるつもりでしたけどまあ笑えてないです多分、もう目とか落ち窪んでました。Z座標が動いてましたね頭部にめりこむように。
そしたらいよいよ労働3日目の青年がね、ヨッ!!つって。
もう見てるだけで膝と腰が痛くなる体制で冷蔵庫持ち上げて
先輩と二人で「おお〜!!」つってね。
大団円ですわ。去り行くトラックを見送ってね。終わった終わったつって。
荷解きはその日の夜中までかかりましたわな。
いや〜早速お子さんの手形が「やあ」と言わんばかりに出迎えてくれてありがたい限りです。