【掌編】『まぼろしの灯台』
地の果てに行きたいとあなたが言うから
ここにきたのです
同じこの島国に生まれて育って
それでも知らないでしょう
この島の北東端は
いつも霧が深くて先が見通せないのです
岬の先端まで広がる野原には馬が放牧されています
それも霧で見えないのです
目の前の道をただまっすぐ行くと
真っ白な灯台がぼうっと浮かび上がるように
現れます
そこにあることを知っていても
それはいきなり目の前に現れるのです
この灯台は戦争で一度破壊されました
修復される前の動かないはずの灯台から
それでも度々光が放たれ
難を逃れた船もあったと言われます
まぼろしの灯台
そう呼ばれたそうです
突然やって来たあなたは
どうして知っていたのでしょう
ここは地の果て
行き止まり
◇
・「尻屋埼灯台」『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』