Stellaris ver2.6と技術官僚の思い出



前書き

突然ですが、みなさんはStellarisというゲームを遊んだことがありますか?
このゲームはParadox interactive社開発の帝国となって銀河を探検、拡張、開発するゲームです。4Xゲームといえば伝わる人もいるでしょうか。あるいは大戦略ゲームと思ってもらっても大体合ってます。
筆者は累計1000時間ほどこのゲームに費やしたライトプレイヤーです。
……Stellarisを知らない人は困惑していると思いますが、このゲームを好きな人は平気で数千時間プレイしているので、1000時間では「ライトプレイヤー」ということになるわけです。
今回の話はそんなStellarisの古いバージョンの話ということで、誰の役に立つこともない話ですが、なぜこんな話をしようと思ったかといいますと、この間StellarisのWikiをネットサーフィンしていると、こんなコメントを見かけたのです。

「技術官僚の支配は弱い。科学者(帝国の国民が就職する職業)から追加の資源が出るようにしても良いではないか。Modでもそうしているものもある」(大約)

まずStellarisをプレイしたことのない人に向けて説明すると、このゲームではそれぞれのプレイヤーは「国是」という補正を選ぶことができます。そしてその国是の一つである「技術官僚の支配」は、プレイヤーの研究力(研究することで帝国に新しい技術をもたらすことができます)を上昇させ、統合力(帝国にプラスの補正を与える伝統を取得するために用います。あるいは第二の研究力と思ってもらっても構いません)を低下させます。

そして技術官僚の支配は今ではそこまで強くないからもっと強くするべきではないかというわけです。これはまあ大体正しいと思います。ただ、約5年間Stellarisをプレイしている身として、物申したくなった、そして寂しくなったわけです。ちょっと待って、技術官僚は昔はヤバかったんだよと。そしてこの弱い技術官僚はプレイヤーの要望に応えた結果なんだよと。

そんなわけで技術官僚の支配が最強国是だった時代の話を回顧録も兼ねてしたいと思います。

それはブラジルから始まった

ブラジル……?何でブラジルが出てくるんだよと思ったそこのあなた、ブラジルといってもディストピアSF映画未来世紀ブラジルのことです。その映画は官僚機構に勤めるある若い官僚が反体制派に巻き込まれることから始まるのですが、2019年の夏、ある開発者がこれを見て、こう思ったわけです。

「官僚機構をStellarisに導入したい!」

詳細は当時の開発日記とその和訳版(このSimulationian.comというサイトはParadox社のゲームの情報をまとめてくれているとてもありがたいサイトで、私もよくお世話になっています)を読んでください。

さて、官僚機構をStellarisに導入するとはどういうことでしょうか。
この話をするには、まず4Xゲームのゲームバランスの話から始めなくてはなりません。「拡張」が重要ということからも分かる通り、帝国を大きくすることのメリットはとても大きいです。なんといっても入手できる資源が増えるのですから。投資は絶大なリターンを生みます。
しかしそれではひたすら拡張するだけになりゲームとして面白くないため、大きな帝国にはデバフをかけるのが4Xゲームの常識です。具体的には、研究力と統合力(第二の研究力)にデバフを入れるのです。Stellarisでも、ver2,5以前ではそうなっていました。
……お分かりいただけたでしょうか。官僚機構をStellarisに導入するとはそのデバフを打ち消すことができる職業を追加するということだったのです。
つまり、帝国の大きさが帝国の国力と比例するようになってしまったのです。
このことは2つのやり方で研究力の重要性を高めました。
まず第一に、実は、元々Stellarisにおいては研究力は重要であり、Tech Rushと呼ばれる研究力特化プレイングは強力でした。その中で帝国の大きさから来る研究力デバフを官僚が打ち消すことにより、そのようなプレイングの優越性はさらに強まりました。(つまり、官僚はデバフをあまりに簡単に打ち消していたのです)

しかし、これだけではありません。実は研究力は帝国を拡張する上でも最も重要だったのです。そのことをまず大きい帝国という言葉の意味から説明していきましょう。

でかい国ってどんな国?

さて、前節でお話ししたように帝国の大きさと帝国の国力がほとんど同義語になってしまったver2.6環境でしたが、しかし「大きい帝国」とはなんなのでしょうか。農本主義者なら帝国の保有する農地や鉱山の数と答えそうですし、読者の方々も研究力が重要なら研究施設の数が大切なんでしょと思っているのではないでしょうか。

ところがどっこい、違います。人口です。上の開発日記のスクリーンショットをご覧いただくと、上にbuildingsと書かれた4✖️4のスロットと、それが40、45、50……とロックされているのが分かるかと思います。これは建造物を建てる場所で、建造物は職業枠を生み出し、そこに国民が就職して資源を加工します。

はい、今のStellarisをプレイしている人はびっくりするのではないでしょうか。当時は建造物は人口に応じた数しか設置できませんでした。そして建造物スロットがなければ研究所は建てられません。研究所がなければ科学者も増えません。そのため、研究力を増やすためには人口が必要だったのです。それだけでなく、消費財や軍艦に用いる合金も建造物がなければ生産できません。

つまり、人口が国力に直結していたのです。

ぶっ壊れ人工生命体

さて、どうすれば人口は増えるでしょうか。第一に居住地を増やすことです。このゲームでは、居住地ごとに毎月3/100ずつPopが増え、1になると1pop増えます。そのためできるだけ多くの居住地を持つことです。しかし、これはどんな帝国でもできることです。

重要なのは、人工生命体化、つまり体をロボットに変えることです。人工生命体化することで、ロボット製造者の数が居住地ごとに最大3増えます。それぞれのロボット製造者は補正コミコミで2.875/100の製造を吐き出します。つまり、最大で8.625*居住地/100の差であり、言い方を変えると毎年、居住地ごとに、1popの差がつきます。実は、人工生命体化すると本来は上記の居住地ごとの毎月3/100の増加が無くなるので、そこまでの差はつかないというのが想定されていた仕様だったのですが、この仕様は簡単に無力化できます。

この、1居住地あたり1年で1popの差というのは本当にゲームバランスを破壊していました。ヤバかったです。
そういうわけで、当時は人工生命体化は無茶苦茶強かったわけです。しかしそれにも弱点がありました。高い技術力が必要となるのです。そこで目をつけられたのが技術官僚の支配だったというわけです。

技術官僚は研究力が高い代わりに統合力が高い(半分嘘)

これまでの話をまとめましょう。元々研究力が重要だったゲームで、官僚が実装され、研究力にかかっていたデバフが無くなった上、帝国の人口と国力がほぼ比例する中で人口増加のための人工生命体化に高い技術力が必要となり、よってその研究力を伸ばす技術官僚の支配が最強国是だったわけです。

しかし、かつての技術官僚はそれだけではありませんでした。このNoteは「科学者(帝国の国民がつく職業)から追加の資源が出るようにしても良いではないか。」というコメントを紹介するところから始まっていますが、実際昔の技術官僚は科学者から追加の統合力を得られるようになっていました。その量、統合力しか産出しない文化人の1/3。科学者3人が文化人1人と同じ量の統合力を産出していました。ヤバすぎです。私がver2.6をプレイしていた頃、国民を文化人にしたことはほとんどなかったです。なぜなら研究者から出る分で足りるから。(とはいえ、流石に統合力も高いはウソです。少し弱いです)

実を言うとこの効果はver2.5以前でも持っており、私はその頃のStellarisをプレイしたことがないのでわからないのですが、おそらく当時から最強国是だったと思います。研究力が重要なゲームだったので、Tech Rushが強く、その最良のお供である技術官僚の支配も強かったのです。

また、技術官僚の問題だったのが、この国是を取るための前提条件が厳しかったことです。(当時は狂信物質が必要だった)厳しい前提条件を必要とする国是が最強だったことは幅広いロールプレイができることが魅力のStellarisのゲーム性と反していました。そういうわけで、多くのプレイヤーがこの国是の弱体化を求めたわけです。

猛きものもついには滅びぬ

というわけで技術官僚は段階的に弱体化を受けます。まずver3.0(2021年4月15日配信)で建造物が人口に依存せず建てられるようになった上、帝国の人口が増加するほど人口増加率が低下するという強烈なデバフをもらうようになり、人口増加率を上昇させることの意味が低下します。ミカのEXスキルみたいなものですね(唐突なブルアカ要素)

この調整を受けるまでの間、ver2.6(2020年3月17日配信)〜2.8.x(2021年4月15日まで最新)が技術官僚の黄金時代でしょう。とはいえver3.0で追加された人口に比例した人口増加率へのデバフは設定から無効にすることもできたため、私は無効にして俺ツエーしていました。

さらに、技術官僚自体もver3.1(2021年9月14日)で弱体化され、科学者の維持費が上昇(消費財+1)するという大幅な弱体化を受けました。それでもこの頃はまだ最強国是を名乗れるだけの力はありました。

しかし、ver3.3(2022年2月23日配信)でついにトドメが刺されました。
第一に、官僚によって帝国の大きさからのデバフを無効化できるのはやはりゲームバランス上よろしくなかったということでまず、官僚は統合力を産出する職業になり、きっちり帝国は大きいほど研究力と統合力にデバフがかかるようになりました。
第二に、技術官僚は科学者からの追加の統合力を奪われ、前提条件も緩和されるなど、かなりの別物になりました。今の嘆き声が聞こえるぐらい微妙な国是になったのも、バランス調整の結果というわけです。

そしてこれでも強力だったTech Rushは、ver3.11で科学者が産出する研究力が減少した上、技術研究に必要な研究力が大幅に増加し、相当な弱体化を受けました。今のStellarisではTech Rushは昔と比べ本当に弱くなっています。

……こうして振り返ってみて、あの時代のヤバさを再確認できました。あの最強国是が1年あまり使えたことや、官僚というヤバいシステムが2年弱続いたこともようやく思い出せました。まあインフレしまくってたあの頃は楽しかったのですが。結局ソロゲーでインフレをAIに押し付ける側でしたからね。

おまけ1:パソコンが溶融惑星(と販促)

ところで、ver3.0で人口増加率にデバフが入った理由を、大帝国プレイが強すぎたからといいましたが、これは嘘です。実は、負荷軽減が最大の理由なのです。
これは今のStellarisの一番悪いところなのですが、このゲーム、人口が増えるとゲームが重くなります。本当に重くなります。プログラムの関係でマルチコアはほとんど効果がなく、私は今Ryzen5700を使っていますが本当に重いです。技術官僚の黄金時代は人口が大正義だったので、人口を増やすため、コロニー(軌道上居住地)を建てまくったりしていたわけで、恐ろしくゲームが重くなりました。人口を減らすために宇宙インフルを実装するというジョークさえありました。

今でもちょっと重いのですが、でもそれ以外はとても楽しいゲームです。本体価格は今なら九割引の539円、DLCのサブスクが1ヶ月1390円/6ヶ月3990円でお安くプレイできます。遊んでみてはいかがでしょうか。

おまけ2:実は2強

……今までの説明を聞いて、こう思った方もいるのではないでしょうか。

「そんなに人口が重要なら征服するのが一番手っ取り早くない?」

これは大変鋭い指摘なのですが、開発チームは戦争にはかなり重い制限をかけています。具体的には、一つの星系を奪うためには、おおよそ100の影響力を必要とするのです。100の影響力があれば、一つの無主の星系を自国領にすることができます。そして当然戦争には軍艦が必要です。
つまり、戦争は他の帝国の足を引っ張ることはできても、自分の国力増加という観点から見ると大変非効率なのです。
しかし何事にも例外はあります。影響力無しで星系を奪うことのできる国是があるのです。しかしこれは自国民以外の知的生命体の存在を認めず絶滅させるトンデモ国是なので、征服の旨みがありません。つまり、やっぱり技術官僚が最強でした。

嘘です。さらなる例外がありまして、「暴走する同化機械」という国是だけは他の知的生命体を自国民とすることができます。こちらも大概ぶっ壊れており、技術官僚と双璧を成していました。なお、こちらは(なぜか)現在に至るまで弱体化を受けていません。技術官僚と違って相当なプレイスキルが要求されるからでしょうか?


いいなと思ったら応援しよう!