半導体工場の労働者に危険信号、ガン、白血病、不妊、流産、先天異常
熊本に台湾の半導体大手TSMCの工場が建設中だ。この半導体工場の誘致によって雇用が生まれるというが、半導体工場に従事することの危険性は全く周知されていないように思う。
韓国と台湾のデータからその危険性に対して警鐘を鳴らしたい。
がん患者の温床。白血病死亡率2.8倍
韓国の国家機関の研究によると、半導体工場でチップを扱う女性労働者が白血病に罹る危険が、労働者全体より1.59倍高く、亡くなる危険性は2.8倍も高いという。同じ血液がんの非ホジキンリンパ腫では、死亡の危険が最大で3.68倍も高かった。
韓国のマイクロエレクトロニクス産業内では、「サムスン電子」の工場で隣り合って作業し、まったく同じ化学物質を使用していた若い女性2人が、同種の白血病を発症した。
また、研究陣は、甲状腺がん、胃がん、乳がん、脳と中枢神経系がん、腎臓がんなどの危険比が増加した可能性も指摘している。
女性労働者が不妊、流産、出生異常
1980〜90年代、アメリカの半導体製造工場の労働者、特に女性労働者に通常の2倍の流産などの異常が起こった。その原因が工場の有害物質であるということで、アメリカは化学物質の使用を中止していくと約束した。
しかし実際は、半導体製造工場がコストの低い韓国や台湾に移り、有害物質を使用し続けていた。
クーリエ・ジャポンの記事によると、韓国の何千人もの女性とまだ生まれていない子供たちが、少なくとも2015年まで、まったく同じ(禁止されたはずの)有害物質にさらされ続けていた。いまだに同じ状況で働いている女性もおそらくいる。
別の調査によると、生殖機能への悪影響も解消していないという。
半導体業界は、「企業秘密」として全ての有害物質を公表していないため、公表せずに膨大な量と種類の有害物質を使用し続けていた可能性が高い。
韓国の医師であり、疫学者のキム・ミョンヒによると、半導体メーカーの工場で働く若い韓国人女性たちに何ヵ月も生理がないことは珍しくないという。まる一年も生理がないという女性もいた。この女性たちは、出産適齢期の女性たちだ。
2012年までの5年間に、サムスン、「SKハイニックス」、「LG」で働く平均で年間3万8000人分のデータを調査したところ、女性たちは流産率が著しく高く、30代の女性については米国の工場でみられたのと同じくらいの流産率だったという。
注目すべきことは、この調査が韓国の中小企業や途上国のデータではなく、韓国最大手の半導体企業のものだということだ。
つまり、一般に社会的に信用の高いと言われるような企業においても、健康被害がでているということである。
台湾でも、女性労働者が半導体製造の過程で発生する有害物質によって、不妊症、流産、奇形胎児につながる生殖発生毒性(reproductive and developmental toxicity)の可能性が指摘されている。
以前は労働部労働及び職業安全衛生研究所に所属し、現在は真理大学工業管理と経営情報学科副教授でもある謝功毅の博士論文によると、半導体工場の女性労働者がグリコールエーテル類(エチレングリコール、プロピレングリコールを含む)の環境に長期間暴露されていると月経異常が生じ、妊娠までより長い時間が必要になる等の影響を報告しており、その結果は統計学上においても明らかであるとみなされている。しかし、残念ながら台湾政府は追跡調査を継続していない。
他国への半導体工場の誘致は、公害リスクの押し付け
半導体製造の移転によって他国が健康被害のリスクを負うことになってしまう可能性は、20年以上前にIBMから調査を依頼されたジョンズ・ホプキンス大学の研究者たちが指摘していた。
有害な物質の中には、EGEなど、それを使用することでコストが抑えられ、効果が高く、大量に入手できる物がある。より安全な物質で代替しようとするとはるかに高くついてしまうため、海外にリスクが転嫁される可能性があると、研究者たちは警告を発していた。
韓国のキム医師は、今判明している有害物質は、唯一の危険ではないかもしれない。最大の危険ですらないかもしれない、という。
この発言は、これから更なる被害が判明する可能性を意味する。
台湾の新新聞によると、使用されている全ての化学物質について、十分なデータが無いままに使用されているものも多い。
半導体の技術が進歩するにつれ、材料も常に変化している。
近い将来に、労働者や生まれてくる子ども、周辺地域の人々の健康と生命を脅かす新たな危険が起きても、なんら不思議ではないのだ。