不審!TSMC汚染とエネルギー問題を日本に丸投げか?
台湾の世界的な半導体メーカー「TSMC」が、日本で初めての工場建設を熊本県菊陽町で進めている。そして、第二工場を計画しているという話も聞こえてくる。
TSMCの日本での建設の動きの裏で、台湾本国では不審な動きが出ている。
2024年に量産予定だったTSMCの高雄工場の計画に変更があった。TSMCのサプライチェーンは、当初1月に開始される予定だった電気機械プロジェクトの入札が1年間延期され、購入が予定されていた28nm半導体製造マシンのリストもキャンセルとなったようだ。
高雄工場の建設といえば、周辺の住民に多大な健康被害を出しながら強行して、大掛かりに建設を進めていた場所である。高雄での近隣住民の抗議活動は台湾のCTI Newsでも報道された。
さらに、中部科学園区、新竹科学園区、南部科学園区でも、工場拡張にストップがかかっている状態であるという。
これは何を意味するのだろうか?
台湾の環境汚染とエネルギー問題は限界を迎えている
台湾メディアの新新聞the Journalistの2022年5月19日の新刊増刊号の連載では、半導体産業が引き起こしてきた重大な環境汚染問題について報道されている。
連載6の「蜜糖或毒藥:台灣還需要更多、更大的台積電嗎?(ハニー・オア・ポイズン:台湾はもっと大きなTSMCを必要としていますか?)」では、「全ての産業を台湾に残して、環境に過度の負担をかけることはできない」と言及され、「すでに工場が密集している高雄では、TSMCが進出するならば、他の工場を停止しなければ地元住民に多大な負担をかける」としている。
さらに、TSMCの年間400億キロワットという天文学的な電力消費量の問題も指摘されている。
というのも、台湾では半導体工場への電力供給が政府によって優先されているために、一般家庭ではたびたび停電が起きているのだ。
新新聞によると、現在台湾で行われているTSMCの拡張プロジェクトで、電力消費量は4カ所合わせて336万kWの増加になるという。これは台湾の原子力発電所1.7基分の電力負担が増えるということだ。
加えて、TSMCはグリーンルーフプロジェクトに対応しているため、太陽光エネルギーを利用する可能性もあるが、ソーラーパネルは消耗品であり、廃棄の問題も指摘されている。メガソーラーの問題点は筆者も以前の記事で指摘している。
つまり、台湾国内での工場の新設や拡張はもはや限界点を迎えているということだ。
汚染とエネルギー問題が熊本にやってくる
台湾で汚染の面でも、エネルギーの面でも限界を迎えた半導体産業。これが“経済効果”という謳い文句で熊本にやってくるのだから、恐ろしい話である。
TSMCの熊本工場では、多くの課題が残っている。
膨大に消費される電力に加えて、地下水の大量使用・汚染の問題、河川や海の汚染の問題、大気汚染の問題。これらを全てクリアし、熊本県民の生活を守ることができるのか疑問である。
地下水の利用では、70%の水をリサイクルしていくとしているが、それでも一日1.2万トンの地下水を汲み上げ、年間約438万トンの地下水が使われることになるという。
また、半導体産業は、従来の産業とは異なる多くの化学物質が製造プロセスで使用されており、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの重金属の使用量は非常に高いが、金属汚染は土壌でも分解されず、地質の一部として地下水に浸透していくという。熊本の大切な地下水が汚染される可能性が高いのだ。
さらに、半導体製造の工程は大変複雑であり、工程ごとに異なる化合物を必要とするため、その数は数百種類に及ぶこともあるという。半導体を洗浄・エッチングするために使用される溶液や化学物質は、人体に非常に有毒である可能性があるため、特に注意が必要である。
しかし、TSMC熊本工場では、工場から排出される汚染水は、菊陽町の下水道を通って熊本県の北部浄水センターに一旦溜められ、県の中心を流れる坪井川に流され、有明海へと流れていくという。海が汚染されれば、当然、漁業や海苔の養殖などの大切な産業にも影響が出る。健康被害も懸念される。
県によると、汚染水の調査には下水道法が適用されるというが、下水道法の調査品目数はわずか28品目である。
そして重金属のアルミニウム、ガリウム、インジウムも含まれていないのだ。
2021年には、台中市議会でTSMCの工場付近の正体不明の異臭を放つ有害物質の存在が指摘されている。TSMC工場のある台中工業団地と中科公園に挟まれている東海大学のキャンパスでは、悪臭が日に日に酷くなっており、大気汚染の可能性もある。
台湾の新新聞の記事の中で、「経済的な利益は短期間であるが、過剰な開発による土地や人々の健康へのダメージは長期に及ぶ」と指摘されている。
熊本の美しい自然も、健康な体も、一度失ったら元に戻らないことを私たちは忘れてはいけない。
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