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守ろう!豊かな有明海と漁業

有明海は福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県の4県にかこまれた豊かな海域だ。干満の差が日本一大きいため、潮のながれが速くなる。この速い潮の流れによって湾の隅々まで酸素や栄養分が行き渡り豊かな生態系が作られている。

有明海には、国内での記録が有明海だけに限られる有明海特産種、有明海以外ではごく限られた海域にしか生息しない種を有明海準特産種も住む。有明海特産種が23種、準特産種は40種以上が確認されている。

ムツゴロウ、エツ、ワラスボ、ハゼグチなどは有明海にのみ生息する、とても希少な魚である。

ムツゴロウ (提供:写真AC)

美味しい海産物も豊富だ。

春は煮付けにぴったりのクチゾコ(舌びらめ)や、アサリ、ハマグリ、紋甲イカ、夏は身が締まった天然うなぎ、マナガツオ、高級魚のクエ、濃厚な渡り蟹、スズキ、ヤリイカ、秋は高級品の真エビ、脂の乗ったサバ、冬はボラや牡蠣など、たくさんの水産物が水揚げされている。


地域の宝!復活する有明海

有明海の諫早湾は、有明海全体の子宮と呼ばれる場所であった。諌早湾で育った魚介類は有明海に広がり、有明海は漁業者からも「宝の海」と呼ばれるほどの漁獲高を誇っていた。
しかし、1997年、諫早湾干拓が行われ、それが原因で有明海全体の生態系のバランスが崩れた。野生生物は姿を消し、有明海全体の漁獲量も減少した。

諫早湾の干拓構想が最初にもちあがったのは1952年だ。戦後の食料難のときだった。湾全体を干拓し、米をつくる食料増産が目的である。
しかし、やがて米が余って減反政策がおこなわれるようになると目的が失われた。そこで、その後計画されたのが、規模を縮小し、防災と畑作を主な目的に変えた諫早湾干拓事業であった。

この干拓事業で、農業者も、漁業者も巻き込まれ、犠牲になったと言われている。食糧不足が解消されているにもかかわらず、事業は続けられ、有明海の生態系は崩れ、海は濁り、漁業者と農業者の対立も生まれた。

状況が変われば、必要な物は変化する。
国が事業を進める時には、当初の方針に固執せずに、状況に応じて柔軟に方向転換することが大切ではないだろうか。

有明海は干拓事業の被害や、ヘドロの体積にも悩まされたが、周辺地域の方々、海苔養殖業者の方々、漁業に携わる方々は立ち上がり、恵の源である海を大切に守ろうと、これまで様々な取り組みをしてきた。
その努力が実り、確実に有明海は命を吹き替えしている。

有明海で清掃活動をする地域の方々

https://www.mlit.go.jp/common/000020426.pdf


有明海にまたもや重大汚染の危機!
2024年に熊本県の菊陽町で、台湾系半導体企業TSMCが稼働を始める予定だ。

半導体工場の汚染は桁違いだ。

半導体の製造は膨大な数の化学物質を使用し、排水も非常に有毒であることは否定できない事実である。半導体製造では、工程ごとに異なる化合物を必要とするため、その数は数百種類に及ぶこともある。

半導体を洗浄・エッチングするために使用される溶液や化学物質は、人体に非常に有毒である可能性があるが、恐ろしいことに、製造工程で使用される有害化合物は半導体業界から開示されておらず、技術の保護を言い訳に秘密にしている。

また、半導体産業はアルミニウムなどの軽金属、ガリウム、インジウムなどの重金属の使用量も非常に高い。他にも、ヒ素、ベリリウム、カドミウム、水銀、鉛、スズ、亜鉛、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、セレン、テルル、マンガン、タンタル、モリブデン、タングステンなど、多くの有害な重金属が使用されている。

台湾のTSMCのあるサイエンスパーク周辺地域の重金属の値も通常よりもかなり高い値で検出されている。

TSMC熊本工場では、工場から排出される汚染水は、菊陽町の下水道を通って熊本県の北部浄水センターに一旦溜められ、県の中心を流れる坪井川に流され、有明海へと流れていくという。県によると、汚染水の調査には下水道法が適用されるというが、下水道法の調査品目数はわずか28品目である。含まれている重金属は、カドミウム、鉛、ヒ素、水銀、六価クロムの5種類のみである。

つまり、TSMCから排出される有害化合物や軽金属・重金属の大半が検査されずに、河川から海へ流れていくということなのだ。この有害物質が有明海を汚染すれば、海苔の養殖や漁業、海洋生態系に影響を与えるばかりか、健康被害すら起こり得る可能性が高いことは明白である。

実際に、1998年にアメリカのシリコンバレーから膨大な量の重金属が下水道を経由して、サンフランシスコ湾に流れ込み、湾から捕獲される魚は食べることができなくなった。そして現在でも、シリコンバレーは全米最多の有害廃棄物汚染地域をもち、汚染地浄化を続けている。

半導体不足は解消の見込み
国の事業は状況の変化で柔軟に舵を切るべき

世界的な半導体不足によって始まったTSMCの熊本県への誘致。

だが、今状況は変化し、半導体不足は解消傾向である。2024年では供給余剰となる話もある。

諫早湾の干拓事業も、食糧不足の解消であった当初の目的が失われた後もズルズルと続けられたことで、不要に生態系を崩し、漁業と農業の対立を生み、海を濁した。

今回のTSMCの誘致も、半導体不足という当初の問題が解消しているのに、ただただ不要に、有害物質を垂れ流し、環境を汚染し、有明海の生態系を破壊するのではないかと思えてならない。

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