歯医者さんのマーケティング施策~コンビニを超えるレッドオーシャンに飛び込むための戦略~
こんにちは!
ソリューションセールス課 和泉と申します。
突然ですが皆さん、今通っている歯医者さんを選んだキッカケを覚えていますでしょうか?
「先生の腕がいいから」
「小さいころからお世話になっているから」
「置いてあるマンガのセンスがいいから」
…色々あると思いますが、皆さん家の近くor職場の近くで通いやすいところをひとつ選んで通っているのではないかと思います。
でも、家の近くを思い出してみてください。
…思い返すと歯医者さん、たくさんありませんか?
厚労省の医療施設動態調査(2023年3月末)によると、歯科診療所の施設数は67,431施設。日本フランチャイズチェーン協会のコンビニストア統計によると同月のコンビニ店舗数が55,739店舗なので、コンビニの1.2倍、歯科診療所が存在することになります。
かなりのレッドオーシャンぶりがうかがえる歯医者さん。
どのようにしてエリアマーケティングを行い、そしてどのようにして競合の影響を加味して、開業を決めているのか気になりますね。
本日は身近でありながら実は詳しく知らない、歯医者さんのエリアマーケティングについて、地図情報システムを開発・提供する当社ならではの視点を交えてお話させてください!
すさまじいレッドオーシャン。どうやって開業場所を決めているの?
歯医者さんにおけるエリアマーケティングの肝と言ってもよいのが「開業場所の検討」。
競合医院も多いので、慎重にエリアを検討していく必要があります。
ここでは、2パターンに分けてご紹介したいと思います。
① 物件が先にあるパターン
1つめは既に開業できる候補物件が上がってきているパターンです。そこに実際に開業した場合、患者様の来院がどのくらい見込めるのかをシュミレーションする必要があります。
歯医者さんの場合は調査できる会社に依頼をし、『診療圏分析』を行うことが多いようです。
診療圏分析の結果、想定するエリア(=診療圏)内で
・どのくらい競合医院があるのか
・どのくらい見込み患者数がいるのか
・競合医院の数を加味すると、1日にどのくらいの患者数が見込めるのか
という情報を把握することができ、それをもとに開業検討を行っていきます。
歯科医師の数も踏まえつつ、1日の推定患者数が基準ラインを満たしているか確認したのち開業を決定していきます。
② 物件を探していくパターン
決まった物件はないものの、何となく「このあたりで開業したい」というエリアが決まっているのが2つ目のパターン。
広さや間仕切りの有無であったり、そもそも歯科診療所として使える物件なのかということを加味しながら希望エリアで物件を探していきます。
このパターンの場合は、自宅の隣など歯科医師自身のアクセスが前提になる場合も多く、前述のパターン①よりはエリアマーケティング要素が薄いです。
歯科医師自身がよく知るエリアへの開業という要素が関係しているかもしれません。
そもそも、診療圏ってどのくらいなの?
改めてですが、診療圏とは「どの範囲から患者が来てくれるのか」という範囲のこと。
スーパーマーケットや飲食店、そのほかの業態では「商圏」と呼ぶことが多いです。
この「診療圏」の中に住む人(もしくは診療圏内で働く人)に「受療率(※)」を掛け合わせて推計患者数を算出、競合医院の影響を加味して自院への推計患者数を出すのが診療圏分析/診療圏レポートです。
※受療率:毎年行われる患者調査を元にした、人口10万人当たりの推計患者数のこと。
歯医者さんは競合が多い分、ほかの業態に比べると診療圏は狭い範囲で取ることが多いようです。特に競合が多い都心部だと、
・一つ目の診療圏(=一次商圏)を、近場を手堅く獲得する半径0.5km
・2つ目の診療圏(=二次商圏)を、少し広げた1km
といったサイズで取ります。
都心部の診療圏の特徴としては、家から通う人だけでなく、会社帰り(場合によっては会社のお昼休み)に通う人を想定する必要もあることです。
その場合は、「診療圏内に住む人」だけでなく「診療圏内で働く人」(=昼間人口)を母数に推計患者数を算出しています。
郊外の場合はもう少し広く、
・一次商圏を、足元を固める半径1km
・二次商圏を、少し広げた半径2km
で見ています。
田舎育ちだった在りし日の私は自転車をモリモリ漕いで1km以上離れた歯医者さんに通っていましたが、上京してからは選択肢も増え、ライフスタイルに合わせて「土日もやってます!子供連れOK!遅くまで診察しています!」(ありがたい…いつ休んでいるんでしょう…)な歯医者さんを選んでいる今日この頃。
そう考えると、納得の診療圏設定ですね。
歯医者さんは販促する?
開業の話をしましたので、お次は販促に関するお話。
販促の話に入っていく前にここで、最近家のポストに入っていたチラシや、ネット広告を思い返してみてください。
そういえば歯医者さんや病院の広告って見たことないですよね。
(美容クリニックなんかはありますが。)
今度は路線バスに乗ったときのことを思い返してみてください。
車内アナウンスが流れますよね。
これ、皆さん一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
実は医療に関する広告については、患者が必要な情報にたどり着けるよう厳密にガイドラインが定められており、チラシを撒くなどの販促を実施することができません。
そのため、バス内放送や駅看板、電柱といった手段に限られてくるのが医療に関する販促の特徴です。
ちなみに、内容についてもかなり厳密で、治療効果の記載や誇大広告(病人が元気になるイラストなども含まれます)はNGで、「○○科」「診療時間」程度の内容にとどめた広告がほとんどです。
どうりで見たことがないわけですね。
そのため、歯医者さんでの販促施策はアクセスを勘案した最寄り駅・路線、バス沿線といったエリアに限られてきます。
ちなみに…
MarketAnalyzer®で出力できる診療圏レポートでは科目を切り替えて推計患者数を出すことができます。
「今まで歯科のみだったけれど、小児歯科を増やしたらどのくらい患者数が増えるんだろう」…なんてシュミレーションも可能です。
まとめ
今回の内容のまとめです。
もはやコンビニ以上のレッドオーシャンぶりを見せる歯医者さん。
その裏では診療圏調査に基づいた慎重な開業判断があるんですね。
記事執筆に使用したツールのご紹介
■商圏分析ツール MarketAnalyzer®
※執筆者プロフィール※
技研商事インターナショナル
マーケティングソリューション営業部 ソリューションセールス課
和泉典子
飲食業界・出版業界を経て2023年に技研商事インターナショナルに入社。
引越や出産等で歯医者さん難民と化していましたが、ようやく相性の合う歯医者さんが見つかり、最近親知らず4本目の抜歯が終わりました。