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単純な算数で、あなたのプロダクトの生死を分ける一因を解説します

こんにちは。グロースハック支援をしているミモトです。今回はプロセスの算数についてお話しします。

私が支援をしたり、相談を受けるときに、このチームは何も支援しなくてもいずれ伸びるな(生存する)、このチームはちょっとのテコ入れではいずれ解散・撤退・縮小のになるな(死に向かう)、と感じることがあります。

では、何がその違いを生じるのか。その一要因を仮のデータをもとに、説明します。

次の図(fig.1)をご覧ください。この図は施策(プラン、機能、実験)のリリース頻度の違いによる、週数経過による累積リリース数の関係を示したものです。あくまで模式図ですが、リリース頻度を8週に1回、4週に1回、2週に1回、1週に1回で累積的に積み上げていくと、42週後には、5回(8週に1回)、10回(4週に1回)、21回(2週に1回)、42回(1週に1回)、となっています。この数字の意味は、乱暴に言って、毎週リリースしている場合と4週に1回つまりおよそ月1回リリースの場合では、42週後にはリリース回数に約4倍の差が生じていると言えます。

fig.1 リリース頻度と総リリース数の関係

42週は1ヶ月を30日で計算すると、およそ10ヶ月(42*7/30=9.8)です。約10ヶ月後に、リリース回数の差は、4週に1回リリースを基準に1として考えると、次の倍率だけ、ビジネスやプロダクトを成長させるチャンスに開きが生じます。

  • 毎週リリース(42回) → 42週後には4倍

  • 2週に1回リリース(21回) → 42週後には2倍

  • 8週に1回リリース(5回) → 42週後には0.5倍

ここで、仮にどのリリース頻度のチームも、1チームあたり毎月500万円の費用が掛かっており、10ヶ月(≒42週)で5000万円のコストを支出していると仮定します。この仮定のもと、1回リリースあたりいくら費やしているかを計算してみます。

1週に1回リリースの場合 → 約120万円
2週に1回リリースの場合 → 約240万円
4週に1回リリースの場合 → 約500万円
8週に1回リリースの場合 → 約1000万円

リリース頻度を遅くすればするほど、コストのインパクトは跳ね上がっていきます。

施策やプランと呼ばれるものは、多くの場合、仮説なので、それが計画通りに成立するかどうかはリリースして、データを見るまで分かりません

ここでビジネスやプロダクトを成長させるための重要な概念が2つ登場しました。

  • リリースまでのコスト

  • データで検証するまでのコスト

の2つです。この2つの側面が、結果・成果とコスト(または付加価値とコスト)を評価するときに関係します。

上記のfig.1で示したものは、あくまで前者の「リリースまでのコスト」の話しです。

なお、企業活動では、乱暴な言い方をすれば、コストはあらゆる面で「時間」尺度で考えることが出来ます。これは、例えば、人数を増やすことも時間をお金で買う手段とみなせますし、株式(エクイティ)で資金調達することも、企業活動のための原資となるお金というリソースを調達する手段とも見ることができます。これは経済学では当たり前の概念で、身近な例では、お昼ご飯に目玉焼きを食べたければ、大きくは自分でやるか、誰かにアウトソーシングして付加価値商品を購入するか、です。

自分でやる場合の例:
「材料の資源の調達」・「生産」・「加工」にあてはまる「鶏を育てる」「鶏に卵を産んでもらう」「食べられる卵を選別して、卵を消毒して、蓋付きフライパンと火を用意して、油と水を準備して、加熱調理する」、そして食べるという面倒な過程を経て、目玉焼きにありつけます。

誰かが生産した付加価値商品を購入する場合の例:
信頼できるレストランで目玉焼き定食を注文して、安心・安全・正しい目玉焼きを食べる

上記の付加価値商品の例は、少し極端な例を比較しましたが、生産性は単位コストあたりの付加価値で表すことができるので、企業活動のコストと、そこで生み出す付加価値の関係は、簡単に理解できるのではないでしょうか。

さて、リリース頻度(リリースまでのコスト)の話しに戻ります。

リリース頻度が早い場合には、コストを最小化しつつ、施策をどんどん試すことができます。例えば、PDCAでいうと、PDに費やす時間とも言えます。

そして、データで検証するまでのコスト部分が、PDCAでいうCA部分に当てはまります。

データで検証するまでのコストは検証までの時間なので、当然、リリースして検証もせずに終わりという進め方の場合には、データで検証するまでのコストは時間が経てば経つほど無限大に近づいていき、リリースに掛けたコストは数学的には取り戻せません(※事故と一緒なので、確率論的には「大当たり」する人も僅かですが存在します)。

PDCA論については、この記事では深く語りませんが、例として分かりやすいので使います。

冒頭で紹介した、私が生存するプロダクト(ビジネス)と死に向かうプロダクト(ビジネス)の差の答えは、リリースと検証をセットで計画して、進める事で、意味のある付加価値を創出する回数を多くして、科学的に理にかなった形で進めていく方法を採用しているかどうかです。

つまり、リリースと検証をセットで計画して進めるということが、経営者レベルで理解されており、企業活動をマネジメントできている場合、多くのセクシーなスタートアップ同様に、ビジネスやプロダクトをグロースさせることが出来るのです。

この話は、個人レベルでは非常に納得感の高いものですが、残念ながら、組織となると人は全く異なる原理で行動するようです。

このようなビジネスやプロダクトを成長させるプロセスは、「科学的」というにはあまりに単純で小学生も理解できる「算数」で語ることができるはずが、実際には、多くの企業では管理されていません。

そして、算数レベルで理解できていても、プロセスの練度を高める工夫をしていないために、競合にシェアを奪われてしまい「死への片道切符」を手にする企業やスタートアップも後を経ちません。

ある意味では、「枯れた技術」とみなすことできるこのプロセスは、21世紀も1/4が経過しようとしているのに、「当たり前」になっておらず、「車輪の再発明」が後を経ちません(車輪の再発明ができればまだマシですが)。

この記事を読んで、ドキッとしたあなた、ぜひ真剣にプロセスを考え直して行動して大きな付加価値を創出するように、変化を生んでください。

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