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週刊小売業界ニュース|2024/3/18週
2024/3/18週(3/16~3/22)にピックアップした小売業界ニュースをお届けします。今週のおさらいにぜひどうぞ!
米シンクタンク、ニューヨーク市の経済活性化には新しい大学誘致が有効と提案 - New York Times
米シンクタンクは、コロナ禍明けで経済を活性化させるために、ニューヨーク市は新しい大学誘致へ乗り出すべきと提案。高学歴の人々を惹きつけ、ニューヨークで最初の仕事を探して見つけてもらうことに加え、大学生の消費活動が生み出す高い経済効果が狙い。
日本ハムファイターズの新拠点「エスコンフィールド」に
北海道医療大学のキャンパスが新設されることが昨年合意されました。
エスコンフィールドは、
教育機関を誘致することは、新球場のプロジェクトが始まった2015年から目指していた。(中略)Fビレッジに幅広い世代が訪れることによってより活性化する。いままではスポーツエンターテインメントによる非日常性だったが、日常的に訪れる施設ができて、より街になっていくことを期待したい。
と話しています。
日常的に若者がいることによる経済波及効果に期待しているようです。
大学の新設により、一般的に以下のような経済効果が見込めます。
学校教育・研究活動による消費効果
学生・教職員が生活することによる消費効果
施設の建設・修繕など投資活動による消費効果
附属病院への来院者や大学受験生の訪問による消費効果
新卒採用を期待する企業の増加による消費効果
これだけでも、地域に幅広く波及することがイメージできます。
実際のところ、大学の規模に対して経済効果はどの程度あるのでしょうか。
神戸市の久元喜造市長は25日の神戸市議会本会議で、王子公園(神戸市灘区)に学生数3500人規模の大学を誘致した場合の総合的な経済波及効果は年間およそ102億円になるとの試算を明らかにした。
このうち教育研究に伴う消費活動で約31億円、教職員や学生が神戸市内で生活することによる消費活動で約30億円の経済効果が見込まれ、こうした直接効果は約65億円になるという。
学生数3500人規模で・神戸市試算』(神戸経済ニュース)
102億円を3,500人で割ると、
ザックリ生徒1人につき300万円/年の
経済効果という試算になります。
※王子公園は神戸市の中心地に近いという点を考慮する必要はあります。
地方で実施する場合、波及効果が低減する可能性が少なくないでしょう。
また大学誘致を検討する際に、以下のリスクが懸念されます。
一つは、地方から都市部への若年層の流出です。
コロナ禍によるテレワークやオンライン授業で
若年層の移動傾向が抑制されていましたが、
2022年には東京への流入が再びプラスに転じました。
大阪等も含め都市部への流入が盛んな一方、
福島県や新潟県、長崎県からの流出が顕著です。
都市部にて大学誘致の活動が活発となる場合、
若者流出に拍車をかける点は十分に留意すべきです。
加えて、日本における大学余りの現状も見過ごせません。
現在、日本には大学が約800校存在します。
少子化の影響を直撃する大学では、
2040年には約240校が余ると試算されています。
大学進学率の向上や、留学生受け入れの拡大といった
就学人数の増加がないなかでの大学誘致は、
学生が移動するだけのゼロサムゲームですので、
同様に都市―地方間の格差拡大への懸念があります。
<担当者からの一言>
教育投資を通じた経済活性化は歓迎したいところですが、大学誘致の施策がやりやすいのはやはり都市部に限定されてくるのではないかと感じます。都市ー地方間での、求人数・求職者数の格差を押し広める影響について、同時に気を配る必要があると言えます。
中国、空飛ぶドローンタクシーをオンライン販売… 「億ウォン」価格
ドローンメーカー、億航がドローンタクシー「EH216-S」のオンライン販売を開始。空飛ぶドローンタクシーは新しい交通手段として注目されている。中国の代表的なオンラインショッピングモールのタオバオで、239万元(約4億4,270万ウォン=約5000万円)で販売中だ。乗客2人を乗せて最高時速130キロで30~40キロの範囲を25分間飛行できる。
2015年頃から開発が加速しているドローンタクシー(空飛ぶクルマ)。
2024年現在、開発はドイツや中国の企業がリードしていますが、
実証実験は中国に加えて、アラブ首長国連邦も盛んに行っています。
中国でドローンタクシー産業を牽引するEHang社は、
2021年に岡山県で「EHANG 216」のテスト飛行を行ったこともあります。
日本では、2025年の万博で実用化のお披露目ができるよう、
足元で取り組みが加速しています。
万博では、大阪市内から万博会場である夢洲の間を
ドローンタクシーが運航する計画があります。
使用されるドローンタクシーは:
日本製のSD-05
アメリカ製のeVTOL Joby S-4
ドイツ製のVoloCity
イギリス製のVX4
と報じられています。
ドローンタクシーの乗車料金は大阪のタクシーと同じで、
初乗りで680円で、以降は10秒ごとに250円と
発表されましたのも話題を集めましたね。
万博にてeVTOLの運行事業を受託する、
そらとぶタクシー株式会社の代表寳上卓音氏によれば
飛行エリアは大阪市内を中心に、万博会場の夢洲と関西空港を結ぶ3カ所からはじめ、隣接する府県へと広げていく。関西圏を中心に中国、四国で実績を積み重ねた上で、2030年までに50台のeVTOLを導入する予定だ
(ドローンジャーナル)
と、日常利用される交通網として
実用化のエリアを広めてゆくとのことです。
<担当者からの一言>
中国のニュースの韓文記事です。お隣の国なので、韓国でも注目を集めています。過去には、ソウルにてドローンタクシー用機体試験飛行の披露会もあったようです。この新しい交通手段が実際に購入されるのか、使用されていくのか…今後の韓国や日本の交通にも影響がありそうなので販売結果が気になります。
中国の通販サービス「Temu」は広告に4400億円近くを費やしておりMetaではトップの広告主・Googleではトップ5の広告主の1つになっている - GIGAZINE
中国発EC大手TemuとSHEINは、米国市場拡大のため、MetaやGoogleに巨額の広告費を支払っています。 Temuは2023年、約4400億円の広告費を投じ、Metaのトップ広告主となり、Metaの中国事業収益を約30%増加させました。SHEINも広告に積極投資し、Google全体で約8万件、MetaのSNSプラットフォームで約5万件以上の広告を掲出しています。これらの中国企業の広告費増加は、MetaやGoogleにとって大きな収益源となっていますが、広告費削減リスクも存在します。
広告戦略ツールを提供するMediaRadarの調査では、
Temuが2023年度に投じた広告宣伝に対する支出は、
2022年度の約10倍であることがわかっています。
アメリカEC企業であるEtsyは2023年度3四半期の決算発表にて、
I think those two players are almost single-handedly having an impact on the cost of advertising, particularly in some paid channels in Google and in Meta.
(以下、担当者による訳)
特にGoogleとメタの広告市場において、TemuとSHEINが単独で、広告コストを上振れさせている。
と述べているなど、
中国発EC企業が米プラットフォームに多大な影響をもたらしています。
Temu・SHEINは、低価格でも収益がでるような
大規模なサプライチェーンをいち早く構築し、
競合他社に迫っていたわけですが、
Etsy社の発言に見られるように、
広告宣伝の拡大を通じて広告費の相場をつり上げてしまうことで
他社のコスト増につながるという副次的な攻撃も加わった形です。
またMediaRadar社が報じるところでは、
Temuが2023年に広告を投下したメディアとして、
従来のデジタルディスプレイ広告が13%であったのに対し、
SNS広告が76%を占めていたことがわかっています。
<担当者からの一言>
アジアの企業がアメリカ企業のプラットフォームの主要広告主となっていること、その規模にも驚きました。全世界におけるインターネットプラットフォーマーはこの20年で大きく変動し、検索ポータルからSNSが主戦場となりました。また、中国の景気動向も鈍化が見られているため、今後の動向に注目していきたいです