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【基礎から学ぶ人事制度│評価制度編②】絶対評価と相対評価

このコラムは、グローセンパートナーの人気セミナー「動画で学ぶ人事制度」の内容をまとめたものです。人事制度から人材育成・教育に関する全体像を理解し、人事制度設計で押さえるべきポイントを説明します。

動画で学ぶ人事制度とは
動画とテキストに沿って演習や事後課題を進めることで、人事ポリシーの設計、等級・評価・報酬制度の概要設計、教育体系などの概要設計ができるようになっています。より詳しく学びたい方は、ぜひテキストをダウンロードして動画をご覧ください。

今回は、絶対評価と相対評価について解説します。


絶対評価と相対評価の違い

評価制度の設計と運営のために、「絶対評価・調整評価・相対評価」の違いについて理解を深めましょう。

  • 絶対評価
    客観的な基準に基づいて「優れているのか・劣っているのか」を評価する方式です。客観的な基準を明確にし、基準値以上であれば「〇」、下回っていたら「✕」をつける評価です。定量評価の場合、例えば売上が1億円を超えるなどの明確な基準が設けられるため、評価が明確になります。一方、定性評価では、例えば「積極性がある」といった基準は評価者の解釈にばらつきが生じるため、評価結果がばらつく可能性があります。

  • 調整評価
    評価項目を絶対評価で運用する際、評価項目の総計と対象者の実際の仕事ぶりが異なる場合に調整する評価のことです。評価ルールに基づいて評価点をつけたときの総合評価について、「B評価と出たけれど、この人の日頃の活躍度合いを考慮するとAだよな」とか「いや、Cだな」というように、評価者のさじ加減で修正するのが調整評価です。

  • 相対評価
    被評価者が属する母集団のなかで成績順に序列をつけ、その中の相対的な位置において「優れているか・劣っているか」の評価を決定する方式のことです。評価結果を一覧表にして、上から数えて5%がS評価、15%がA評価…のような形で、基本的にExcelで評価を確定する流れだとイメージすればわかりやすいでしょう。評価会議などでは「総合評価はA君とB君は逆なのでは」と順位を入れ替えたりしますが、我々はこれは調整評価だと分類しています。

我々が主張しているのは、調整評価の機能を否定しない方が良いということです。調整弁をなくすと、一般的に行動評価を操作することになり、そもそもの行動基準に基づいた絶対評価の運用が曖昧になってしまいます。これでは、行動評価の運用において、本人に期待値を伝えて、よりよい行動発揮を支援するという人材育成機能が損なわれるため、調整機能は持たせた方がよいと我々は考えています。

絶対評価と相対評価の理解を深めるために、当社の研修では次のような演習を行っています。

【演習】世の中に存在する評価は、絶対評価・相対評価のどちらかを考えてみましょう。

絶対評価と相対評価の違い

学校の入学試験は、定員が決まっていて上位〇人が合格するという形なので、相対評価です。車の免許の学科試験は、合格点が90点と設定されており、絶対評価です。小学校の通知表は、2001年の新学習指導要領から相対評価の運用から、絶対評価の運用に改められました。

サッカーの日本代表のメンバー選考については、監督がどのように戦略を立てるか(例えば対戦相手の国など)によって決まり、監督が変ったり、戦略が変わると選ばれる選手も変わる可能性が高いです。その選抜方法はブラックボックス的な要素が強く、ひとり一人の実力の話だけではなく、戦略論・チーム戦力から考慮したものになります。それについて、選手個別に選抜の合否について、フィードバックすることは非常に難しいでしょう。

同様に、評価制度においても、相対評価の個別フィードバックは難しいと考えており、ゆえに評価の不満もたまりやすいという点が運用上の大きな課題です。まずは、経営者含めて、評価者・被評価者共に、絶対評価・調整評価・相対評価の違いを理解していないことが多いので、上記のように評価の種類をしっかり伝えることからスタートです。

研修では、絶対評価と相対評価の理解を深めるために、上記のような演習を実施しています。例えば、「業績評価の自己評価・一次評価・業績評価点は、絶対・調整・相対評価のどれにあたりますか」と問いかけ、参加者に考えてもらいます。「絶対評価は達成基準に基づいて評価する」といった基本的な考え方も説明しながら、具体的なケースでの評価方法の違いを体感してもらいます。

この演習を行うと、意外にも評価者によって回答がばらつき、理解不足が露呈します。マニュアルの解説だけでは、表面的な理解にとどまっている可能性があります。評価制度の運用をしっかり定着させるためには、このような演習を入れることを推奨します。

最後に、自社の人事制度の理解を深めるために、評価シートのどこが絶対評価でどこが調整評価なのか、調整弁がどこにあるのかをしっかり説明しています。

評価プロセス(事例)

一般的な会社では、上司と部下との一次評価は、絶対評価で運用されています。MBOも絶対評価、行動・能力・姿勢の評価なども絶対評価です。絶対評価で大切なのは、客観的基準(期待値)を上司と部下が共有してから期をスタートすることです。期末のフィードバックよりも期初の目標設定の方が重要だと言えます。

最も不幸なのは、部下が「ここまでやれば丸がもらえる」と思って努力したのに、上司と認識が違っていた場合で、双方が寂しい思いをすることになります。したがって、評価やフィードバック面談よりも、目標設定時の面談でしっかり握りあうことが大切です。一方で、人件費予算を守るために最終評価を相対化するケースもあります。

絶対評価と相対評価の目的は?

評価制度の設計において最も最適値に悩むことは、「どこまで絶対評価で運用し、どこから相対化するのか、もしくは相対化しないのか」という点です。「絶対評価」と「相対評価」にはそれぞれ異なる目的があり、その目的に合った使い方をすることが重要です。

絶対評価の目的例

  • 目標設定した達成基準が達成できたか判断する。

  • 行動基準などに照らし合わせて、求められる行動の表出度合いを判断する。

  • 人材育成を目的として、評価基準に対する出来栄えを明確にする。

相対評価の目的例

  • 人件費の予算内に、人件費総額をコントロールする(昇給率に合わせる・賞与総額に合わせるなど)。

  • ポスト(課長・部長など)に人材を選抜するときに、相対的に優秀な人材を判断する。

組織論的には相対評価は必要となるでしょう。現場サイドでは絶対評価、人事・経営サイドは相対評価になりますが、どこで転換するのかが1つのポイントです。よく「現場でBをつけたのに、途中でAになり、それをフィードバックできない」という話が出ますが、どこで相対化をされたか、また絶対評価と相対評価は評価基準が異なることをきちんと全社員に伝えていくことが、不平不満の解消につながります。

絶対評価と相対評価の違いを理解し使い分ける

  • 現場では、役割認識・人材育成・評価のために、絶対評価は欠かせない。

  • 一方で、人件費コントロール・人材選抜のためには、相対評価も欠かせない。

  • 現場での絶対評価の後、最終評価までのプロセスで相対化する必要がある。

先述の通り、どこで相対化したのかをきちんと全社員に説明していくことが必要です。中には相対化しないという仕組みもありますが、昇格で相対化することによって人件費コントロールも可能になるので、給与・賞与評価では相対化しないといったやり方も可能です。

絶対評価・調整評価・相対評価を評価制度にどう取り入れる?

ここまでお話してきたことを、再度まとめてお話します。我々が評価制度設計する時には、一般的には絶対評価・相対評価・調整評価を下図のように設計しています。

絶対評価から相対評価への流れ

上司と部下間で目標設定し行動評価のフィードバックをする個別評価は、絶対評価で運用されます。それに対して一次評価で多少の調整弁をつけて、評価会議において相対化をしていくという流れが一般的です。

絶対評価のフィードバックはできますが、評価会議において相対評価で並べ替えをした評価のフィードバックは難しいと考えています。もしフィードバックする場合、「3等級150人中であなたは123番目でしたよ」といった内容になり、評価を受ける方も「だから何?」と疑問が増えるだけなので、非公開でもよいでしょう。

一次評価が評価調整をできるように、評価シートに調整評価機能を盛り込むことをお勧めしています。調整弁がないと、行動評価などで調整して、評価そのものの意味がなくなります。「これを評価シートで表すと、必ずここで調整評価・相対評価が行われるよ」と解説するといいでしょう。

評価シートに調整評価機能を盛り込む

現場での絶対評価の運用

評価制度を活用してPDCAをまわす

評価制度のサイクルと仕事のPDCAサイクルは連動しています。
仕事でありたい姿を達成するためには、そこに向かって計画を立て、実行し、評価し、新しい打ち手を考えるというサイクルが必要になります。評価制度はこのサイクルと一緒です。

仕事のPDCAサイクル

同様に、人材育成も評価制度を利用してPDCAサイクルを回したほうがよいと考えています。Planで成長に関する目標を設定し、Doで取り組んでもらい、Checkでそれを評価し、Actionで来期の成長課題と結びつけます。

人材育成のPDCAサイクル
 

成長課題は人材育成・評価の側面で設定することが望ましいのですが、行動評価などで目標設定されているケースはまれです。多くの場合、期末になってから行動基準に基づいて「できている・できていない」と評価してフィードバックをします。

それよりも、まずは期初に「ここまで行動を変えられたら丸になるよ」という動機づけをして、期中に実際に指導しながら評価と人材育成を連動させていく方が効果的です。目標設定面談でも成長課題を共有することをおすすめします。

現場で運用する評価制度運用の流れ

下記は、仕事・人材育成のPDCAサイクルを評価制度として運用する流れとマネジャーに押さえてほしいポイントです。自社の評価制度を見直す際の参考としてみてください。

【期初】

  • 期待値の明示(上司→部下)
    達成基準は上司から部下に伝えます。
    ①業績評価などで、部下に求める期待役割を明示します。
    ②行動評価などで、部下に求める成長課題を明示します。

  • 実行計画の策定(部下)
    実行計画は部下が策定しましょう。
    評価シートを使って、上司が提示した期待役割・成長課題に基づいて、達成基準に向けてどのようにやっていくのか実行計画を考えます。

  • 目標設定面談の実施(上司+部下)
    部下が考える実行計画が甘い可能性がありますので、目標設定面談にて、期待役割・成長課題の認識合わせと、それらの実行計画の確からしさの検証をします。目標設定面談は、達成基準の共有と実行計画のブラッシュアップが目的です。

【期中】

  • 日々のフォロー
    部下は実行計画を実行し、期待役割・成長課題を達成します。
    上司は、部下の実行計画と期待役割・成長課題の進捗を把握し、必要に応じてフォローします。日々フォローして、なんとか達成基準をクリアさせることが上司の役目です。

【期末】

  •  評価
    達成基準に対して、できたら「〇」、できなかったら「×」をフィードバックします。
    ①業績評価などで、部下の期待役割の達成度合いを評価します。
    ②行動評価などで、部下の成長課題の達成度合いを評価します。

参考資料

以下は弊社HPよりダウンロードできます。

▼人事評価シート活用マニュアル(テンプレートあり)

より詳しく学びたい方へ

より詳しく学びたい方は、動画をご覧ください。テキストと演習用ワークシートは弊社HPからダウンロードできますので、ご利用ください

動画

テキスト・演習用ワークシート

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