公立に賭ける思い
さて、残るは公立しかない。
地元の私立に合格はしていたものの、行きたいとは思わなかった。
非常にきれいな校舎の2校だったが、第一志望のような邪な理由すらない2校に行くことになってしまっては困る、と最後の公立には熱が入った。
自宅のマンションの道路を挟んで向かいに、進学校レベルの古びた公立高校があった。
合格したら、家から校門まで3分以内の距離にある。
最初は、この高校を公立の志望としていたが、担任より私の成績では一か八かの確立になるから、一つランクを落とすように説得され、私は
「分かりました」
と一つ返事で快諾した。
向かいにある公立高校は、中学のクラスメートの姉が通っていて、文化祭にお邪魔したことがある。
自由な校風でというか、自由過ぎる校風に憧れた。
スポーツが強いわけではなかったが、地理的条件、アカデミックのレベル、自由な校風、制服がブレザーという箇所を除き、楽しい高校生活が育めそうだった。
私は兄の影響もあり、軽音楽部に興味があった。
中学時代には洋楽にはまっていたが、そのコピーバンドでバンド活動することに憧れていた。
夏休みの間、向かいの高校から、自分がいつも聞いているメタルバンドの曲が流れてくる。
しかも、かなり上手い。
この高校に行けば、毎日のようにメタルが演奏できると思うとますますモチベーションが上がった。
この高校に通っている知人の姉の計らいで、軽音楽部で活動中のバンドの一つがライブを行うとのことで、チケットを手配してくれた。
知人と一緒に本八幡までライブを見に行った。
このライブが初めて見に行くライブだった。
怖い人がいるのではないかとドキドキしながら会場まで足を運んだが、そんなことはなく、見に来ている観客はいたって平和的な集団だった。
ライブが始まると、雰囲気はがらりと変わり、メタルのライブによくあるようなダークな乗りに変わる。
ドイツのメタルバンドのカバーをしていた。
観客は男子も女子も一斉にヘッドバンギングを始める。
兄の文化祭でいくつかのバンドを見たことがあり、高校生のレベルというものを何となく分かっていたつもりだが、かなり上手い方だった。
通常、ギターは上手いがボーカルはそれ程でもない、なんていう構成はザラにあるが、このバンドはすべてにおいて上手い。
これもモチベーションになった。
しかし、私の偏差値ギリギリ上の高校だったので、断念せざるを得なくなる。