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レコーディング
最終的に4人に戻ったバンドは、本格的に音楽活動を再開することとなった。
まず、過去にレコーディングした曲は一切使えなかったため、ロビーが作曲した5曲のマキシシングルを急いで作り、メディアキットを用意することにした。
レコーディングには、質の高いエンジニアを採用することに決めた。
これまで予算不足のため、安価なエンジニアやジェシーの知り合いを使ってきたが、名の知れたアーティストを手掛けたことのないエンジニアばかりだった。
今回は、メリーランド州に拠点を持つ、レーベル所属のメタルバンドを多数手掛けているアンドリューというエンジニアを起用することにした。
アンドリューは、以前にワシントンDC.出身のバンドNothingfaceのレコーディングを担当していたことで知られていた。
Nothingfaceは1993年に結成され、ニューメタルシーンで活躍したバンドだ。
彼らは1997年にデビューアルバム「Pacifier」をリリースし、1998年には「An Audio Guide to Everyday Atrocity」を発表して注目を集めた。
2000年の「Violence」と2003年の「Skeletons」も成功を収めたが、内部の問題から2004年に一度解散し、2005年に再結成された。
しかし、再結成後も問題が続き、2009年に再び解散することとなった。
ボーカリストのマット・ホルトは2017年に亡くなり、バンドは再結成されることなく終わった。
今回のレコーディングでアンドリューはその寡黙さと適格なアドバイス、そして音楽業界に関する知識を活かし、高品質な録音を提供した。
彼はデジタルレコーディングの技術にも精通しており、録音の効率化と質の向上を図った。
しかし、ロビーはアンドリューの細かさに不満を持ち、時間を無駄にしていると感じていたが、最終的にはアンドリューの専門知識に頼ることにした。
レコーディング中にアンドリューから聞いた業界の話は興味深いものだった。
例えば、デジタルレコーディングにおけるコピペの手法についてや、マルーン5の「シュガー」が多くのコピペを駆使して制作されていることなどを教えてくれた。
さらに、Nothingfaceがレーベルとの契約問題で解散することになった経緯も偶然聞くことができた。
レーベルとの契約不履行を理由に契約を解除することが業界のタブーであることや、その唯一の抜け穴がバンドの解散であることを知った。
こうしてレコーディングされた5曲のうち3曲を選び、メディアキットに採用した。
このメディアキットは、バンドのプロモーションツールとして使用され、音楽業界の関係者にバンドの情報を効率的に伝えるために作成された。
質の高いエンジニアと共に制作されたこの新しい楽曲は、バンドの新たなスタートを切るための重要なステップとなった。