架空の読書感想文
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夏休みの宿題は、夏休み終わってからもやっていたタイプの谷です。
ドリルも自由研究も一気にやるもんじゃない。
夏休みの宿題にちなみ、今回は読書感想文を書こうかと思います。
とは言え、いちいち読書するのもめんどくさいし、本当に読んだ感想を書くのもなんだか気恥ずかしい。
そこで、でっちあげることにしました。
架空の本の読書感想文。
存在しない、読んだこともない本の読書感想文です。
でっちあげアンドでっちあげ。
デッチャゲ&デッチャゲです。
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『昇る12号』
高枝 鉞
朝、目覚めるたびに能力内容が異なる「日替わり超能力」者、スズキ トヨタくん(17歳)が主人公の12編のオムニバス短編集。
視界が複眼化する能力「いくつかの眼」編での、
文体は一人称なのに複数並行に描かれる具合が闇鍋のようなカオスさがあって良い。
ライトノベルの作風を作者なりに消化し、面白がっている様が小気味良い。
また、変身するたびに小さくなり、最終的に好きでもない女子のうなじを登り続ける「小登山」編では、17歳のリビドーと共に作者の狂気じみた偏愛っぷりが良く見えて面白い。
夢に見ちゃってその異性のこと意識する、みたいなやつの深掘りしすぎた版。
かと思えば「日曜日の念動力」では趣の深い、じんわりとした内容で、このオムニバス全体に深さを与えている。
作者自身にそのつもりはないかもしれないが、
イロモノだけではない、作家としての実力が嫌味なく発揮されている。
全体通してのテーマはおそらく「無力感」だ。
超能力という世の人々よりも優れた力を持ちながら、それでもできないことがある。
スズキ トヨタが自らの能力に振り回されている横で、たまに登場するカワサキ イスズちゃんの努力家っぷりが映え、能力なんて持たなくても出来ることはあるというアンチテーゼになっている。
エンタメ作品ではあるが、実際に17歳くらいの年頃が読むと、超能力への憧れと物事をひとつひとつ積み重ねていくリアリティの両方が味わえるのかもしれない。
おそらく、舞城王太郎の影響を受けているものと思われるが、その色がまだ少し濃いように感じる。
でも僕は舞城王太郎好きなので全く問題なし!
・・・
書けるもんだな…
谷啓吾