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「差別」の変貌へ

[紹介書籍] 『レイシズムとは何か』
著者 梁英聖
 
 本書では「レイシズム」とは何かを定義しながらレイシズムの歴史を扱っています。また、海外の国々だけではなく日本のレイシズムについても触れています。
 
 まず「レイシズム」とは一体何を指すのでしょうか。日常的に使う言葉ではありません。本の中で「レイシズム」とは、劣っているものと優れているものに優劣をつけることであり、ある人種を絶滅させようとし、純粋に保とうとすることだと定義されています(p.48)。ナチスのユダヤ人虐殺が分かりやすい例でしょう。また、優劣をつける基準が時代と共に変わってきているとも書かれています。昔は、肌の色や言語・人種などで判断されていました。しかし、「差別」はいけないという形が世界中で定着しているために優劣をする基準が外見ではなくなりました。どうなったかと言うと、文化や国籍・言語などで判断されるようになったのだと書かれています(p.52)。
 本書には第二次世界大戦勃発となったドイツのナチズムなどが例として書かれており、当時の「レイシズム」の考えを持った人、すなわちレイシストについても書かれています。当時のレイシストに国民が賛同してしまった理由として差別を助長してしまう「差別アクセル」が存在したからであると説明されています(p.97)。差別アクセルとは差別を助長し、推し進めることを指します。その例として、ナチスのヒトラーがメディアを利用したことなどが挙げられます。しかし、差別アクセルの反対である「反差別ブレーキ」も存在すると書かれています(p.127)。反差別ブレーキとは、差別を否定し、差別行為を法によって規制すること指します。著者は海外の国々は歴史的に大きな出来事があったため反差別ブレーキや反レイシズムの考え方が存在しているが日本は大きな差別問題がなかったため反差別ブレーキや反レイシズムの考え方が存在していないと指摘しています。このため外国の国々は差別を禁止する法律があるのに対して日本には差別を禁止する法律がないと著者は言います。
 
 海外では差別問題があるけれど、日本はないと考える人も少なくないのではないでしょうか。決してそんなことはなく、差別は身近な出来事であり他人事にしてはいけないと本をこの本読んで思いました。「差別」に興味のある方は歴史的観点からを知ることができ、また知識を得ることが出来ます。ぜひ、興味を持ちましたら手に取ってみてください。
 

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