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子どもたちの言語の発達と「デジタル・テクノロジー」

【紹介書籍】バトラー後藤裕子 (2021) 『デジタルで変わる子どもたちーー学習・言語能力の現在と未来』 筑摩書房.

近年、テレビやスマートフォンなどが普及しており、多くの人々がこれらの機器を利用している。そして、これらの機器を使って、SNSなどを利用している人も多いように思う。
では、このような状況の中で、これらの機器を使うことは、若者の<言語能力>や言語の発達などにどのように関係しているのか。本書は、これらの問いについて考えることができるものである。
本書の第5章では、ゲームと若者の言語の学習との関係について述べられている。
著者のバトラー後藤裕子によれば、2019年に「10歳から29歳の日本の若者」を対象にして実施されたアンケート調査の結果では、現代の若者の中には、多くの時間をゲームに費やしている人もおり、小学生の時や小学校に入学する前から、オンラインゲームをしていた若者も多いという。また、日本ではあまりオンラインゲームは学校教育に取り入れられていないが、海外では学校教育などにおいて、取り入れていくようになっているというのである。
では、ゲームは若者の言語の学習に効果があるのか、ないのか。この章では、様々な研究やその結果の例などを見ていき、全ての学習に効果がある訳ではなく、全ての人に効果がある訳ではないが、目的のある<繰り返し>などの言語を学ぶ上で必要な要素が含まれていれば効果があるのではないかと述べられている。
この本では他にも、幼い頃からスマートフォンやタブレットなどのデジタル・テクノロジーが身の回りにあった<デジタル世代>が置かれている環境に関する話から、乳幼児における言語の習得とテレビや動画を見ることなどとの関係や、デジタルや紙と読解力との関係、SNSを利用することと<読み書き>をする力の関係、AIと言語を使うことや言語の習得の関係、現代において必要な言語コミュニケーション能力などについて論じられている。さらには、言語教育のこれからについても、様々な研究などを紹介しながら述べられている。
私も実際にこの本を読んで、スマートフォンやタブレットなどを使うことがどのように若者の言語の発達などに関係しているのか、そして、これからどのような教育が必要かについて学び、考えることができた。そして、今後、各々の好みに合わせ、<読み書き>に加え、ゲームも少しずつ取り入れながら言語を学んでいくべきだと考えるようになった。
このように本書は、現代において、スマートフォンなどのデジタル・テクノロジーを使うことが若者の言語の習得や発達などにどのように関係するのかということ、言語の教育のこれからなどについて学び、考えることのできる一冊になっている。皆さんも機会があれば、ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。(K.S)



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