地べたに荷物を置く人
BAR に限らず、飲食店などを訪れた際の、「荷物」の問題は常につきまとうものかと思う。
なるべく体ひとつで行きたいものだが、諸事情でそうもいかないことも多い。
実際、来店されるお客さんを見ていると、常に軽装の方から、家財道具一式持ち歩いているんじゃないかというような方まで様々である。
当店、プランニングの段階から、この「荷物問題」には、随分と時間と頭を割いたつもりだ。
上着などをかける衣紋掛けの話は、以前したと思うが、
各ボックス席の後ろには、座席をもう一つ設けられたところを、あえてそうせずに、共用の荷物台を設置している。
また、各椅子の膝元には、手提げを掛けられるフックも後に増設した。
専用のクロークはないものの、比較的荷物置き場には留意している方だと思う。
これもひとえに、お客さんに、
「床に荷物を置かせたくない」
一心である。
来店された際には、
「こちらに荷物台がありますからね。あと膝元にフックもございますので。」
と、一言添えるようにしている。
ところで、
世の中には、ある一定の割合で、
「荷物は地べたに置くもの」だと考えている方がいらっしゃるようである。
いつものように、「こちらへお荷物どうぞ」と申し伝えると、
「いや。このままでいいんだよ。」
と返される方がいるのだ。
最初は、荷物の中身が重く、フックだと手提げに負担がかかって、消耗するのが嫌なのかなと思っていたのだが、荷物台に載せるのも拒むのは不思議に思っていた。
どうも「荷物をどこに置くか」については、個々人で意識に違いがあるようで、それが分かってきたのは、お店を始めてからしばらくたってからのことだった。
僕は、出掛けた際に、「地べたに荷物を置く」のに抵抗を感じる人間である。
いや、なに、すごいブランド物のバッグを持っているとか、そういう話ではない。
「地べたに置く」ということは、お店だろうが、公道だろうが、はたまた公衆トイレの床だろうが、全て同じ扱いになってしまう。
その荷物を、家に持ち帰ったり、招かれた客先でソファーの上に置く気にはとてもなれない。
それに、自分の店に関しても、「地べたに荷物を置かせる」店にはしたくないと常々考えているし(一部スーツケースなどは除く)、実際、そのような店に僕が入ったとしたら、早々に退店を考える。
ところが、
前述のように、人には「荷物は地べたに置くもの」と決めている方もいるのだ。
以前は、僕の考えから、どうしても「地べたに荷物を置かせる」店にしたくなくて、出来るだけ荷物台やフックに掛けるよう促してきた。
(他のお客さんがお酒をこぼしたりしたとき、荷物を汚してしまって、トラブルになるのを防ぐ意味もある。液体は当然下へ下へ、低い方へ流れるものだから。)
しかしながら、
「荷物は地べたに置くもの」と統一されている方がいるとしたら、もしかすると、それはそれで一理あるのかもしれない。
僕の一方的な押し付けだったのだろうか。
再考が必要なのかもしれない。
でも、やっぱり、
うちの店に入った時に、ずらっと床に荷物が置いてあるところを想像すると、
ちょっとゾッとする。
が、その心配は、あまり気にしなくても良さそうだ。
不思議と、
地べたに荷物を置く人の、再来店の比率は、極めて低いように感じる。
もしかすると、
荷物を地べたに置かせてくれないことを、快く思わなかったのかもしれない。
申し訳なく思う。
押し付けかもしれないが、
出来ることならば、
荷物はあるべきところに収まっていた方が美しい気がする。
良かったら、使って下さい。
結構頭悩ませたんです・・・。あの荷物台(笑。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
お盆期間中も、暦通り営業しております。
お待ちしております。
The Beauty of Everyday Things / Hara Noda
Epidemicsound
2022
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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