誰もいない東京もあった
お盆休みを取ろうかどうか悩んでいる。
当店、お盆期間中も、基本的には「暦通り」で、毎年とくにお盆休みといったものは取っていない。
数年前までは、お盆休みを、皆さん結構バラバラに取る習慣になりつつあって、「静かではあるが、誰かは働いている。」といった感じに、必ず誰かは街にいる状態だったので、とくに休みは取らずに営業をしていた。
それに、この時期に来てくれるお客さんには、「お盆なのに仕事をしている」というお互いの共同意識のようなものが働いて、「お、やってるな。」と言いながら、いつもより積極的に来てくれるので、売上的にも決して悪くはなかった。
お客さんの方にも、仕事と言いつつ、どこか「休みモード」な感じがあって、そのダルな雰囲気と空気感が、僕は好きで、結局毎年変わらず開けていた。
ところが、何年か前に「山の日」という祝日が設けられ、また元通り、その時期に「皆一斉にお盆休みを取る」習慣に戻ってしまったような気がする。
企業としても、バラバラに休みを取られる「非効率性」に気付いてしまったらしい。
あの、「静かながらも、誰かいる。」感じがなくなってしまったのは、寂しい限りだ。
ところで、
今でこそ、東京は、休日に、全国(この騒動の前は全世界)から人が集まる一大観光地になってしまったが、
一昔前、うちの店がオープンした頃(2002年)は、盆暮れ正月にはちゃんと「誰もいなくなる」街であったように思う。
神保町もそうだが、東京駅周辺の丸の内など、休日の夜は怖いくらい誰もいなかった。
昔、大学生の頃に、何かの用事で、大手町にたまたま休日出勤していた親父と落ち合って、夜食事を取ろうとなったのだが、どこもやっていなくて途方にくれたことがある。
街中真っ暗。
まだ学生だった僕でさえ、「え〜、こんなー等地で・・・。これは勿体無い。」と思った記憶がある。
でも、今思うと、そんな誰もいない東京が、案外僕は好きだった。
巨大なインフラとオフィスビルを抱える大都市で、誰もいない時間がある。
街も、休みを取っている。
なんとなく、贅沢で、怖くて、ちょっと SF っぽくて。
でも、時代は、そんな生産性の悪いことは許されないフェーズに入った。
丸の内も、企業が動き始め、あっという間に丸ビルをはじめとする再開発が立て続けに行われ、一大歓楽街になった。
もう、あの誰もいない東京は見られなくなるのだろうか、と思っていた。
ところが、
そんな、光景が、去年は再び訪れることになった。
恐ろしい反面、どこか懐かしくもあった。
今年もこのままだと、もう一度、訪れることになるのだろうか。
でも、あのシュールな光景が、もう一度見られるのも、悪くはない気もしている。
せっかくのお盆休みである。
お盆休みの本意は、「暑いから表へ出てはいけない。体を休めなさい。」
と言う人もいる。
この期間を利用して、現状をなんとか好転させることはできないものだろうか。
なんて、思いながら、
どうしようか悩んでいる。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
お休みについては、弊店ホームページでお知らせいたします。
お待ちしております。
I Waited for You / CHET BAKER
Steeple Chase
1979
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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