特別より普通

「へえ。〇〇さん、こんな所で普段飲んでるんですか。」

「ふふ。どう？この店。」

「うーん。なんていうか、こう言っちゃなんですけど、普通ですかね。飲み物も食べ物も。地味っていう訳じゃなんですけど。こないだ行った店なんか、月ごとにカクテルのテーマがあって、こう、すごい綺麗なデコレーションで、彼女すごい喜んじゃって。」

「素敵ね。そういうの。でもね、段々ね、そういうの要らなくなってくるのよ。」

「何でですか？」

「〇〇くん、料理もするんだっけ。」

「こう見えて、結構しますよ。こないだも彼女にオムライス作ってあげたら、感動してくれました。」

「うわあ、美味しそう。そんな風に付き合い始めた頃って、いかに彼女に美味しいものを作ってあげようかって思うじゃない。」

「そりゃもちろん。」

「でもね、例えば一緒に生活したりすると、美味しいものを作ってくれるより、キッチンを汚さないでくれる方が嬉しかったりするのよ。それに似てるかな。感動はいらないから、嫌なことはしない。特別より普通がいいのよ。」

「そんなもんですかねえ。あ、この干し玉葱のピザ、見た目の割に、まあまあいける。」

Pray / H.1
H.1
2018

（本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。）