どこへ脱出するというのか
正月早々、下世話な話で申し訳ない。
毎年、年始のお休みには、当店「トイレの床」を塗り替える。
正確にいうと、同じ色(これがなんと銀色!!)で上塗りするのだが、
そんな手間のかかることを毎年する店なんて、あまりないと思う。
普通はタイルなりクッションフロアなりを貼って、はい終わり。
毎年メンテの必要な「塗装」などというのを、よりによってトイレに施すなんて、
よほどの馬鹿でもない限りやらないし、また、やっちゃいかん行為だと思う。
しかしながら、どういう経緯か、うちの店はそうなってしまった。
(多分、バーカウンターと同様、塗装の職人さんに「金がないなら自分で塗りゃええ」といわれて、軽い気持ちで承諾した様に覚えている。)
乾くのに多少時間を有するので、どうしても連休が欲しくなる。
勢い、まとまった休みの取れる、正月休みにやる事になってしまった。
寒い中、暖房も入れずに(入れるとちょっと危険)、床に這いつくばって、
全くご苦労なこったとは思うのだが、
今ではどうにも毎年やらねば気が済まない状況に陥ってしまっている。
今年もやりましたので、銀ピカの床をどうぞご覧あそばせ(笑。
◆
年末年始のまとまった休みに、映画などをゆっくり鑑賞する方も多いかと思う。
まだ観ていないものに手を伸ばすのもよいが、
お気に入りのものを、繰り返し観てしまうという方もいるのではないだろうか。
「アルカトラズからの脱出」という、クリント・イーストウッド主演の古い映画(1979)がある。
地上波で何度も放映されている人気の映画なので、観た事のある方も多いと思う。
ご覧になられていない方もいると思うので、ざっくり内容を説明すると、
「ここからネタバレ含む↓」
アメリカのサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島に設けられた監獄(今は閉鎖して観光名所)に送られてきた主人公モリス(クリント・イーストウッド)の、実話に基づいたお話。
難攻不落と言われたアルカトラズ刑務所を、独房の足元にあった小さな「通気口」から突破していく様が、非常に丹念に描写されている、僕の大好きな映画だ。
この「通気口」は建物を貫通する大きな換気道へと続いており、人が出られるほどの大きさに広げることさえ出来れば、外へ脱出できる可能性がある事に気づいた主人公は、爪切りなどを使って日々少しづつその穴を広げていく。もちろんその間には看守の点検なども入る訳で、なんとかそれを隠さなければならない。
「空いた時間に絵を描きたい」と嘘をついて、キャンバスと絵の具を取り寄せてもらい、それらを上手く使って、この穴を隠すのだが、この作業がまた丁寧なのだ。
独房の便器の横に這いつくばって、地道に少しづつ少しづつ施していく。
◆
「トイレの床」塗り作業をしていると、不思議とこの映画が観たくなる。
主人公が見事脱出に成功したかどうかは、ここでは伏せておくが、
少なくとも、
僕が毎年ここで床を塗っていても、
どこかに無事脱出できる可能性はあまりない。
???
というより、そもそもどこへ脱出したいんだっけ。
自分で作った監獄なんだけど。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
観るならテレビ版吹き替えもお勧め。老いた絵描き囚人「ドク」の声が秀逸です。
お待ちしております。
Youwillgetthroughthis, I promise / Carlos Niño & Friends
International Anthem
2022
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)