被る店
長年やっていると、
お客さんの行っている店が、「被る」ことがある。
つまり、
「あの店に行っているお客さんは、この店にも行っている。」
てな具合に。
趣味趣向的なものが、
似たり寄ったりするのかもしれない。
うちの場合だと、
和食屋さんの「菊水」さんや、
おばんざい料理の「やまじょう」さん、
珈琲舎「蔵」さん、
などがそれに当たるかもしれない。
大変光栄であると同時に、
僭越ながらも、
なんとなく「分かる」気がするのも事実である。
◆
うちの店から白山通り方面へ向かう路地裏に、
「ライスカレー まんてん」という店がある。
1981年創業の、
常に行列の絶えない、
神保町の名物的なカレー屋さんである。
ところで、
神田神保町といえば、知る人ぞ知る「カレーの聖地」である。
古くは、とある飲食店の店主が、神保町へ本を買い求めに来た客が、その本を読みながらスプーン片手に容易く食べられる「カレー」に目をつけたのが始まりと言われている。
その後、あちこちの店で出す様になり、
今では、「神田カレーグランプリ」などというイベントまで開催される、
一大「カレー集積地」になった。
なんでも、新しくカレー屋を始める人達の登竜門的存在にまでなっているそうだ。
そんな風潮とは一線を画すのが、
この「まんてん」のカレーだ。
内容を一言で表すなら(失礼を承知で言うが)、
あの昔懐かしの「学食カレー」である。
小麦粉たっぷり、肉はひき肉、野菜の旨味とは無縁の(本当に失礼!!)、
まさに「あの」カレーである。
とにかく量たっぷり。
これにカツやウインナー、コロッケやシュウマイなど様々なトッピングをのせる。
さらに量たっぷり。
(できれば学生の頃にデビューを果たしておきたいところ。でないと、大人になって初めて行かれた方は、びっくりして完食できないのではなかろうか。)
様々な趣向と手間暇をかけた「美味いカレー」は数あれど、
明らかに「まんてん」のカレーは、それらとは別物である。
もはや、あの様なカレーを出す店は、もう存在しないのではないだろうか。
一杯「500円」〜。
この物価高のいま、お値段据え置きのためか、
さらに行列は長くなっている気さえするのである。
◆
うちに長年通って下さっているお客さんに、
この「まんてん」のファンの方がおられる。
いわゆる「うち」と「まんてん」さんに両方行かれている、
「被るお客さん」だ。
その方に、開店当初の今から20年以上前、「是非行ってみてください」と促され、
一度「まんてん」に行ってみたことがある。
(小生、神保町に店を構えるまでこの店を知らなかった不届き者である。)
結果。
「?」
「なんでこの店と被るんだ??」
「?????」
そんなデビュー戦から、
かれこれ22年。
コロナ騒動は過ぎたとはいえ、どんどん静かになって行く神保町の夜を尻目に、
さらに行列が長くなって行く「まんてん」のカレー。
なんでも、学生の頃のお客さんがまた続々と戻って来ているそうだ。
創業から42年余り。
うちの店との「共通項」は、ますます見えにくくなるばかり。
前述のお客さんに問うても、ただニコニコと笑うだけ。
自分で探せということか。
今度、思い切って、22年ぶりに訪れてみようか・・・。
こんな時は、外を見るのも勉強のうちだ・・・。
でもあの量・・・。
50を超えた僕に、完食できるのだろうか・・・。
勇気が出ないでいる。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
追伸:後日行ってきました!! 結果!!
ごちゃごちゃ言ってないで、気合い入れ直せ!!ということです(笑。
お待ちしております。
Dodecatheon (2022 Remaster) / Kiln
Keplar
2023
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)