お屠蘇気分のままでいて
正月の特別メニューと称して、
「黒豆」
「ぬかづけ」(三浦大根の沢庵)
「にごり酒」(今年も「来福」です)
「新春ポテトサラダ」(きゅうりとハムが入っただけです(笑 )
などなど、
普段と違うメニューを扱っているので、冷蔵庫やアイスボックスなど、裏の取り回しがやや窮屈になるのが、この時期の恒例になっている。
いつもの「マンネリ」から脱して、
たまには違った雰囲気を楽しんでもらえるのは嬉しい限りだが、
そんな時期も徐々に終わりを迎え、いつも通りの余裕が生まれ始めると、
改めて「普通が一番だよなあ。」とも思う。
ところで、
長年(今年で22年目に入ります!!)やっていると、次第に年間を通してのサイクルのようなものが出来てきて、より効率的に、より精査されたものをお出しできるようになるので、お客さんいとってもそれは良いことなのだと思う。
だが一方で、それに固執してしまって、新しいメニューなどが生まれにくいという側面も否めない。
サイクル的にもスペース的にも、もう新しいものが入り込む余地がない、あるいはそう思い込んでいるところもある。
そんな現況を打破するには、何かの「きっかけ」が重要になる。
特にそれには、「外部」からの働きかけが欠かせない。
去年の暮れに、ふと、お隣の薬局をやっている大家さんが、「マスター、これよかったら使って。」と、小さな封筒のようなものを持ってきてくれた。
表面には「屠蘇散」の文字。
「好みでみりんを足すといいよ。」と大家さん。裏にもそう書いてある。
どうも正月に作る「お屠蘇」の香料、いわゆる「日本版スパイスバッグ」のような物らしい。(中身は桂皮、桔梗根、ハマボウフウなど)
小生、 恥ずかしながら、BAR をやっておきながら「お屠蘇」というものを作ったことがなかった。
それに「お屠蘇」というと、正月に帰省した際に、御節と一緒に出されて仕方なく飲む、あまり美味しいとは思えないお酒だった気がする。(お客さんに伺っても、概ねそんな意見だった)
「ふうん。「お屠蘇」ねえ。」
初めは、正直あまり気にかけていなかった。
年が明けたら、試しに作ってみようか、くらいのものだった。
そんなとある年末の日。
いつも続けているTwitterでの投稿で、「お屠蘇を作ろうと思うんだけど、何かいい「みりん」ないかなあ。」的なことを呟いたら、
なんと、
お客さんで、ご商売をされている方(詳しい内容は伏せます)が、業務で使っているという「本みりん」を、しかも一升瓶を抱えて持ってきてくださった。
これで、完全にスイッチが入った。
大家さんから「屠蘇散」を新たに買い入れ、お客さんが持ってきてくれた本みりんと日本酒の配合、さらには新たに他の本みりんも取り寄せての検証などなど。
(もともと「みりん」とは決して料理用ではなく、飲料のお酒として作られていたもので、スピリッツを添加することで発酵を途中で止めた、ポートワインのような「酒精強化ワイン」の部類かと思う。それをたまたま料理に使っていたというだけだ。(その後、料理用に特化した「みりん風調味料」が登場するが・・))
やってみると、本当に外国産のいわゆる「ハーブ酒」に負けない、大変美味しいものだということが分かった。
日本酒だけで作ったものだと、少しキツさのようなものが鼻にくるが、本みりんを加えることで、柔らかい甘みが加わり、いかにも BAR で出されるリキュールのようなテイストになる。
これはいい。
正月の特別メニューとして、今年からお出ししている。
題して「自家製フレーバー日本酒 ーお屠蘇ー 」(笑。
ひょんなことから、今風にいうと「コラボ(笑」により生まれた新しいメニュー。
正月だけと言わず、「屠蘇散」と「本みりん」の復権をかけて、
しばらく引っ張ってみようかな・・・。
皆様もいかがでしょう。
まだまだ騒動は続きますが、
他者との交流、そろりと始めてみられては。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
ちなみに薬局さんから「仕入れ」をしたの、初めてかも(笑。
お待ちしております。
Snow It Falls On / The Remote Viewer
City Centre Offices
2002
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)