王道を外すな
最近20年ぶりに「自家製チョコレート」のレシピを変更した。
今度のものは、いわゆる BAR の王道の「生チョコレート」タイプです。
(いつの頃からか、BAR の定番に収まった感がある「生チョコ」であるが、ご存知の通り、熱処理をしていないという意味の「生ビール」や「生ハム」などと違い、「生クリームとチョコを合わせた」という語意だ。)
元々のうちの「自家製チョコレート」は、喫茶タイムをやっていた頃の名残で、「珈琲に合わせる」という趣旨で作ったもので、エスプレッソにビスコッティを砕いて練り込んだ、どちらかというと「チョコ菓子」的な要素が強かった。
それをそのまま「自家製チョコレート」として、お酒にも合わせてもらっていたのだが、意外性が受けているようには思うものの、どうにも「本当にお酒に合うの??」と問われると、微妙な部分があったところは否めない。
今回、諸事情で、材料が一部手に入らなくなったものがあって、変更に至った。
実は、こうなる前からずっと「生チョコやらなきゃ」とは思っていたのだが、最近どこへ行っても必ずといっていいほど置いてあるので、「ちょっとは違うものを」という理由のもとに、試作をサボっていた。
ところで、
どういう訳か、僕にはそういった「王道」を外したがる傾向があるように思う。
BAR の王道って??
と言われると、皆さん何を想像するだろう。
・バックカウンターにずらっとお酒が並んでいて
・バーコートに身を包んだマスターが佇んでいて
・手の込んだ心尽くしのカクテルを作ってくれる
そんなイメージだろうか。
いやいや、どれもうちの店には当てはまらない。
開店当初から「カフェ」的な要素も含んだ「バー」のようなスタイルでやってきたので、あえてそうしてこなかったところはあるのだが、それにしてもBAR 形態一本に絞ってからも、手直しするわけでもなくここまで歩んできてしまっている。
もちろん、これには「 BARの王道 ったって、ここ数十年の、それも日本だけのものでしょ。」といった、反発めいたところもあるにはある。
それに、自分が「何かのジャンルにどっポリ染まる」という事への「照れ」があるのも事実だ。
しかしながら、もし、新しくBAR なんぞを始められる方がおられたら、
これは、非常に良くない。
自分は、それで悦にいっているのは結構な話だが、
来るお客さんはたまったものではない。
やはり、そこには「バーらしさ」を求めてきているのだから、
最低限、それを満たしてあげるのが、店としての務めだろう。
王道は踏まえたうえで、外したければ外せばいいのだ。
「何屋だかわからない」
というのが、お客さんは一番困る。
てなわけで、24年目に入ろうというのだが、遅まきながら、今一度「王道」を考え直したいと思っている、今日この頃。
・・・。
でも、バーコートだけは無理。煮込みですぐ汚す(笑。
だから、そこがそもそも王道でないんだってば。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
「ミント・ジュレップ」、専用カップでやろうと取り寄せました。お楽しみに。
お待ちしております。
My Favorite Things / Al Jarreau
Goldenlane Records
2008
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)