掛け算の順序
Twitterなどで掛け算の順序について話題になったことがありました.
私は理系の人間なのですが,掛け算の順序など考えたことがありませんでした.しかし,工学部で学んでいくうちに単位についての考えが深まったため小学校における掛け算の順序問題が起こる理由について少し書きたいと思います.
内容は簡単に書くようにしていますが,読むのが面倒な場合は結論をご覧ください.簡潔にまとめてあります.
問題
例えば,以下の様な問題を考えます.
1個50円の消しゴムを5個買いました.合計でいくらでしょう.
答え
50×5=250 or 5×50=250 A. 250円
という計算結果になります.
結局掛け算の順序など関係ないため答えはどちらも答えとなります.
しかし,現実にここで減点もしくはバツとされている子どもがいます.
いったいなぜ間違いなのかわかりませんが,バツになった子どもが少しでも勉強が嫌いにならないようにそれなりの理由を紹介したいと思います.
これだけの情報量で掛け算の順序問題を議論することはできないため,ここに単位という考えを含めたいと思います.
単位
工学の分野では,計算に単位が深く関係します.
単位というのは,長さの単位であるm(メートル),時間の単位であるs(秒数)などがあります.
単位を含めた数字は値が同じでも意味合いが異なります.
例えば,
1 , 1m , 1m/s , 1.0m
は意味合いが異なります.
1は単なる数字です.ここに物理的に意味付けができるものはありませんので1は1でしかないです.
1m(1メートル) は長さを示す値です.
1m/s(1メートルパーエス)は速さを示す値です.
1.0mは今回の題とは関係ないですが有効数字が違います.(1mより精度がいいです.)
ここで単位が違うものを足し算することはできるか考えます.(先に答えをいうとできません)
1m + 1m/s
長さと速さを足すとどんな単位になるのでしょうか.
そんな単位は存在しませんのでこの計算はできません.
これが単位を含めた計算で,数字のみの計算とは違うことが分かります.
単位を考えて問題を解いてみる
今回の問題ではSI単位という国際単位にはない[個数]と[円]という単位を用いますが論理的に考えたいと思いますので単位について言及せずに以下の式を見ていただければ幸いです.わかりやすさのため単位には[ ]を付けたいと思います.
1個50円というのは,単位を付けると 50[円/個]です.
これは,60[km/h]が1時間あたり60kmの距離(を進む)と考えると分かりやすいと思います.
次に5個はそのままですが単位を付けると 5[個] です.
ここまでは大丈夫でしょうか.
では,計算しようと思いますが単位の計算をどうすればいいのか迷うかもしれませんので例を以下に示します.
50[m/s] × 5[s] = 50 × 5 [m/s × s] = 250 [m]
となります.数字は数字同士で単位は単位同士で掛け算します.
では,答えは
50[円/個] × 5[個] = 50 × 5 [円/個 × 個] = 250[円] A. 250円
掛け算の順序問題の原因
原因は2つあると思います.
①単位を含めた数字で考えるべきなのに単位を明記せずにただの数字の計算をしている.
②単位という考えを理解することが困難である.
①については,文章題という現実の問題に対して,数字の掛け算のやり方しか教えていないためである.
つまり,算数の教科書の問題は
(1) 3 × 4 (2) 6 × 2
といった計算を解くことを目的としていて,九九を使うことができるかを確かめているに対して
文章題は単位を含んでいる数字を計算させている.
②に関しては,そもそも単位という考え方を学ぶには少し早く,論理的に「1個50円の消しゴムを5個買ったら250円だった」という考え方ができれば掛け算はできてしまいます.
しかし,文章題である以上単位を考える必要があります.
苦肉の策としての"かけられる数","かける数"
先生は単位という考え方を教えていないのに単位について考えないといけない問題を解かせています.この矛盾を解決するために"かける数","かけられる数"を導入しています.
簡単に言いなおします.今回の消しゴムの料金の問題で
50 [円/個] × 5[個] =250[円] と 5[円/個] × 50[個] = 250[円]
では全く意味が違います.計算結果は一致していますが,文章が理解できていないということになります.
しかし,小学生は単位を書くことは教えられていません.
よって,先生は小学生が文章を理解できているか式からは判断できません.
この問題を解決する苦肉の策としてただの数字の順番に意味合いをつけることで文章を理解できているか確かめようということにしたのだと思います.
おそらくですが,"かけられる数"は"~あたりの数"のような値で,今回でいうと50[円/個]が当てられていると考えられます.
結論
①単位があってもなくても掛け算の順序は関係ないです.
②文章題は単位を考えなければ解けません.
③小学生で単位について理解するのは難しい.(次元解析)
④文章題の式を書く欄に,単位を含めた値で掛け算が行われていないため子どもが文章を理解しているかがわからない.
⑤苦肉の策で掛け算の順序に意味合いを持たすことで子どもの理解度をチェックしている.
⑥掛け算の順序に関して明確な定義を与えないため混乱が生じる.
⑦小学生が書いた数字のみの掛け算は間違っていない.
⑧先生が子どもが理解できているかわからないため減点せざるを得ない.
⑨単位について考える癖をつけておかないと複雑な文章問題でお手上げになってしまうため文章題を解かせることは重要である.
⑩小学生の理解度に合わせて特殊なルールを考えないと成長過程であるため混乱する危険があるため特殊なルールを定めることは悪くない.(単位について理解できる子は使えばいいと思いますが,子どもの成長に差があるため一律に評価するために致し方ない)
⑪先生が"かけられる数"ルールを適切に定義しないと,周りの理解している大人たちからは掛け算の順序でバツにされていると勘違いされる.
⑫無理やり解決しようとすれば,単位において次元解析の考え方を簡単にでも教えて,式欄に単位と対応するように数字をかかせるようにする.(本末転倒ですが)
最後に
算数や数学が苦手な方で多いのは,文章題が分からないという方が多いです.単位を含む数字の四則演算(+-×÷)について理解できれば文章題で困ることはないのでわからない方は理解できるようになると考えるのが楽しくなると思います.なにより,"できる.解ける."という感情は意欲につながりますのでぜひ単位について考えてみてください.
なお,先生も掛け算の順序そのものでバツを付ける先生がいましたらその先生自体が問題なのかもしれません.
少しでも納得,理解していただけたら嬉しいです.
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