【詩の翻訳】憂鬱/ゲオルク・トラークル
憂鬱
この世の不幸は午後のあいだずっと幽霊のようにさまよっている。
小屋は小さな庭を抜け逃げてゆく、茶色く荒れ果てて。
流れ星が燃えた塵のまわりへちらつき、
眠れるふたりはふらふらと家路をたどる、灰色にぼんやりと。
枯れた草原を一人の子どもが駆けてゆき
黒くつややかな目をして遊んでいる。
金が茂みから滴る、鈍くくすんで。
一人の老人が悲しげに風の中で回っている。
夕方にはまた僕の頭の上で
土星が無言で悲惨な運命を導く。
一本の木が、一匹の犬が自身の背後に隠れ
神の天空は黒く揺れ、葉を落とす。
小さな魚が素早く小川を滑り降りてゆく。
死んだ友達の手がそっと触れて
額と服を喜んでなめらかにする。
一つの光がいくつもの部屋で影を呼び起こしてゆく。
Georg Trakl: Trübsinn. In: Gedichte des Expressionismus. Hrsg. von Dietrich Bode. Stuttgart: Philipp Reclam jun. 1991, S.137