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全文公開 『1000万円の奨学金を背負って社会に出た話をしようか』 その4

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本記事は私の実体験を元にした、ノンフィクションです。
このnoteでは、全文を無料で公開していきます。
最終的には一冊の書籍として出版することを目指しています。

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※ その1はコチラから。

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第一章 冷凍うどんと胡麻油

第一節 「薬剤師になりたい」


母さん、俺、薬剤師になりたいんだけど...

思えば、私のこの一言から全てが始まりました。


3歳の頃からずっと「おいしゃさんになって、おとうさんのビョーキをなおす!」と得意気に宣言し続けてきた私は、中学生になってその夢を叶えることの困難さに気付かされます。

さらに高校生にもなれば我が家の財務的な偏差値を概ね把握し、「どうやら医者になるには国立の医学部に行かないといけないらしい」と理解しました。

でっかく抱いた私の夢は、自分が受けた模擬試験の点数に呼応しながら少しずつしぼんでいき、いつしか私は医師になることを諦めていました


それでも可能なら医療に携わりたい。命を救う仕事に就きたい。やがて私は「薬剤師になりたい」と考えるようになります。

幸か不幸か、私の両親は昔からずっと、「子どもの決めたことなら、実現してあげたい」という方針で、強く反対されることはありませんでした。

学費はちょっと高そうだけど、どうやら「|しょうがっきん≪・・・・・・・≫」という制度を使えば、薬剤師になれるようだ──18歳男子の思考回路なんてのはそんなモンで、その判断が6年後の自分に何をもたらすのかを深く考えることもなく、私は私立大学薬学部薬学科の門戸を叩いたのでした。


正直に言えば、奨学金にまつわるあれこれについて、入学してからのことをあまり覚えていません。大学の学生支援課へ足繁く通い、言われるがままに書類に署名する作業の記憶がうっすらとあるのみです。

いくら説明を聞こうがサインをしようが、私の目に見えるところでは現金はおろか、何一つとして物質的な変化が起こることはなく、私にとっては|そんなコト≪・・・・・≫よりも、病態生理学のレポート期限やアルバイトのシフトを代わってもらえるかどうか、サークルの飲み会が今日どこで行われるかの方がよっぽど重要なのでした。


奨学金のおかげで学費は工面できましたが生活費は乏しいままで、私は在学中、ありとあらゆるアルバイトを経験しました。

塾講師や家庭教師、コンビニや100円ショップの販売員。日雇いでは小学校で行われる卒業式のパイプ椅子を並べる作業や、野球場の警備、音楽フェスでイベントスタッフをしたこともあります。

中でも最も印象的だったのは、5年次から6年次にかけて従事した、「夜勤のコンビニバイト」でした。

次回

第一章 冷凍うどんと胡麻油
第二節 夜勤のコンビニバイト

へ続く



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それでは、また。


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みどり|読書のおすそ分け
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