本日の読書 #054 「コーヒーの口腔内ダイナミクス」
参考書籍:『コーヒーの科学』旦部幸博
第四章 コーヒーの「おいしさ」 より
コーヒーの口腔内ダイナミクス。
難しい言葉だけ先に解説する。
「ダイナミクス」というのは「分子動態」という意味だ。
平たくいえば「どのように動くか」ということでいい。
つまり「コーヒーの口腔内ダイナミクス」とは、
「コーヒーが口の中でどのように動くか」を指す。
これが本書の中でも随一に面白かったので紹介したい。
「どのように動くかって言ったって、飲み込むだけでしょ」
と思われそうだが、ここで取り扱うのは、もう少しミクロな話になる。
つまり、
「コーヒーが舌の上を通るとき、そこで何が起こっているのか」
「舌にくっついて残ったコーヒーは、その後どうなるのか」
「コーヒーはどれぐらいの間、口の中に残っているのか」
みたいなことだ。
こういった細かい分子の動きが、コーヒーの「苦み」「口当たり」「キレ」などを私たちに実感させているそうだ。
人間が舌で味の違いを感じていることは、よく知られている。
つまり私たちがコーヒーを苦く感じるのは、舌の役割によるものだ。
では「スッキリした苦味」と「あとに残る苦味」の違いは、何によるのか。
コーヒーを飲んだあと、苦味を持った分子の一部が舌の上にとどまる。
ここに唾液がザザーッと流れてくる。
浅めの波が砂浜を撫でていく感じだ。
すると、
苦味分子のうちでも小さかったり、水に溶けやすかったりするものが早めに流れていって、ノドに吸い込まれていく。
逆に大きい苦味分子や、水に溶けにくい分子は残る。
前者が多ければ「スッキリした苦味」、
後者が多ければ「あとに残る苦味」だ。
つまりコーヒーの苦味の "質" を決めているのは、
「苦味分子がどんな種類のもので構成されているか」
「それぞれの苦味分子はどんな大きさや、水への溶けやすさなのか」
であると。
あ、ちなみにコーヒーの苦味成分はカフェインだと思われがちだが、
実はカフェインは苦味成分のうちの1〜3割程度らしい。
「苦味」と同じように「口当たり」や「キレ」などの原因も、この「口腔内ダイナミクス」で説明できるという。
コーヒーを構成する分子の挙動に思いを馳せながら一服するのも、面白い。
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