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全文公開 『小児科薬剤師の本音』 その3

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本記事は私の実体験を元にした、ノンフィクションです。
このnoteでは、全文を無料で公開していきます。
最終的には一冊の書籍として出版することを目指しています。

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前回分はコチラ。

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「検査してほしいと頼んだのに、してもらえなかったんです」


たとえば保育園でRSウイルスが流行っているとします。園からはこのように言われました。

〇〇ちゃんお熱が出てきました。最近RSウイルスが流行っているので、病院で検査してもらってください

病院に行って、これをそのまま伝えます。

でも検査はしてもらえませんでした。医師は忙しそうに「これなら検査は必要ないですね」の一言だけ。

さあ困りました。検査してもらうように園から言われているのに。


これ、よくありますね。

実際に薬局で、そうした悩みを打ち明けられるお母さんも多くいらっしゃいます。

検査を希望したのにしてくれなかった。親身になってくれない
そうして医師に対して不信感を持ってしまう方もいます。

でもこれは、ただのすれ違いであるケースがほとんどです。
というより、お母さんが完全に「被害者」のパターンですね。


私はこのようにお伝えしています。

まず、検査は「何歳からは保険適用外」と決まっているものがあります。

例に挙げたRSウイルスなら、0歳は保険が利くため負担金は掛からず無料ですが、1歳以上は自費診療となります。

これはつまり全額自己負担ということで、検査には3,000円ぐらいかかります。診察料も合わせて自費になるので、トータルで8,000円ぐらいはかかるでしょうか。


「それでもいいから、検査してもらいたい」と考えるお母さんもいます。

でもそれも、薬剤師としてはオススメできません。
なぜか。

それは医師が言うように、「検査の必要がない」からなのです。


RSウイルス感染症は2歳までにほぼ100%の子どもがかかる病気で、特に0~1歳の子がよく罹患りかんします。

6ヶ月未満の赤ちゃんは重症化する可能性があるものの、1歳以上の子で重症化することは基本的にはありません。

その上、有効な治療薬というものが存在しません。安静にして、元気になったら登園する。それだけです。つまり治療に関して言えば、「風邪と一緒」なわけです。


重症化しない。治療薬もない。対応も風邪のときと一緒。

これはもう「検査の必要がない」と言って差し支えないでしょう。熱のある子どもにつらい検査を強いてまで、RSウイルスであることを確定させる必要はないわけです。


ちなみに「治療薬がない」というのは他のウイルス性疾患にも言えることで、RSウイルスだけでなくアデノウイルスも、ヒトメタニューモウイルスも、手足口病も、ノロウイルスも、お母さんが聞いたことのある流行り病はたいてい、治療薬が存在しません(例外的にインフルエンザウイルスやヘルペスウイルスには、治療薬が存在します)。


だからRSウイルスに限らず「検査はしません。発熱が引いて元気になったら登園してください」で事足りるケースが多いのです。

しかしそうした病気が大流行しているときは医師も忙しいので、丁寧に説明している時間がなく、ぶっきらぼうな対応をされがち、というのが事の真相です(それでも医師に説明責任があるとは思っていますが)。


「病気の名前が分かると安心できる」という気持ちはとてもよく分かります。しかし逆に言えばそれぐらいしか検査のメリットが無い、とも言えます。

これに関しては正直、園の対応に問題があるケースなので、板挟みのお母さんが気の毒で仕方がないのですが、園には「検査が必要ないと言われました」と伝えていただくと良いと思いますよ。




次回

「薬局に子どもを連れてくる、お母さんとお父さんの割合」

へ続く



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