全文公開 『小児科薬剤師の本音』 その2
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本記事は私の実体験を元にした、ノンフィクションです。
このnoteでは、全文を無料で公開していきます。
最終的には一冊の書籍として出版することを目指しています。
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「熱を測ったら39℃だったので、とりあえず解熱剤を使いました」
薬局に来るお母さんの中で、この勘違いをしている方が圧倒的に多いように思います。
解熱剤の坐薬が処方されていて、子どもが熱を出したときに「とりあえず」使ってしまう。
他にも「解熱剤は体温が何℃以上になったら使えますか?」という質問をされることも多いです。
これ、実は誤解です。
解熱剤は「熱を下げる」という効果を持つために、「高熱になったら使うもの」だと、皆思っています。
しかし実際は、高熱になっても使わないケースがあるのです。
それは、子どもが元気なとき。
たまにありますね。明らかに子どもの身体が熱い。熱を測ったら38.6℃ある。でも全く辛そうでもないし、いつも通り遊んでいる。
こんなとき、解熱剤は必要ありません。いやむしろ「害」ですらあります。
身体が元気なら、「高熱」というのはつまり「正常な生体反応」なわけです。熱が上がることによって免疫が働き、子どもの体は「ウイルスと戦うモード」になります。
ここで熱を下げたらどうなるか。体は「おっ、熱下がったのなら、もう戦わなくていいか」と判断します。
結果、その病気は長引く、というわけです。私自身も、わが子が元気であれば、たとえ体温が39.5℃だったとしても解熱剤は使いません。
そもそも解熱剤は、発熱を「一時的に下げる」だけで、効果が切れたら元に戻ります。
さらに言えば、解熱剤は「何かの病気が新たに発症するのを予防する」というものでもありません(例外として、熱性けいれんを起こしたことのある子は、予防的に解熱剤を使うことがあります)。
では解熱剤は何の目的で使うのか。
それは子どもの「つらさ」をやわらげるためです。
熱が高いせいで子どもが「しんどい」「ぐったりしている」「寝付けない」「食事が摂れない」「機嫌が悪い」。
こんな時には、解熱剤の出番です。
解熱剤が熱を下げてくれている間に、子どもが寝たり、食事したりできる。そうしてお母さんも少しの間、休むことができる。
これが正しい「解熱剤の使い方」です。
ちなみに余談ですが、解熱剤の坐薬は医療用と完全に同じ成分のものが市販で買えます。
ですので緊急時で手持ちの坐薬が無いときは、無理して病院にかからなくても大丈夫です。
事前にドラッグストアに在庫があるか連絡してみるのをオススメします。
次回
「検査してほしいと頼んだのに、してもらえなかったんです」
へ続く
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それでは、また。